2016年6月22日水曜日

知らないことの怖さについて

最近感じますのが、知らないことの怖さです。

例えば、お客さんに特許関係のアドバイスする場合に、裁判例を1つ知らなかっただけで、誤ったアドバイスをしてしまう可能性があります。

誤ったアドバイスによりお客さんに損害が生じる場合がありますので、知らなかったでは済まされません。

私が、最低限、知財高裁の判決を目に通すようにしているのは、勉強好きなのではなく、こういう恐怖心からと思います。

技術開発も同様で、主観のみで研究開発を進めてしまうと、すでに類似の技術があったりして、それまで研究開発に投じた資金や時間が無駄となることがあります。

また、既存の研究結果を流用したりすれば、開発をショートカットでき、研究開発コストを下げられたというような状況もあると思います。

大企業であれば、資金的に余裕があると思いますので、上記ロスはあまり問題とならないかもしれませんが 、資金的に余裕のない中小企業やベンチャーにとっては死活問題となります。

そうすると、何事を始めるにせよ、その仕事の分野に関して、ほぼすべての知識を有している、という状況にまで自分をもってゆかないと、いかんということになります。

知識に穴があると、判断を誤るリスクが高まると思います。

ということで、お勉強とリサーチが重要ということになります。自分でリサーチしたり、調査会社を利用して穴のないリサーチをしたりすることが、行動を起こす前に必要なのではないでしょうか。





2016年6月16日木曜日

都知事の雑感

東京都知事が辞職しました。

私もニュースをウォッチしてて、あまりよくないな、と感じたのが、資金の使い道の違法性について弁護士に判断させたことです。

弁護士がでてくる、ということは、裁判を前提とした対応となります。裁判は、対話の道が途絶えた場合の最後の手段といえます。

本当であれば、まず、有権者と対話を行うべきであったと思いますが、争うモードに入りましたので、対話ができないのであれば、有権者は知事の辞任を求めるしかありません。

弁護士が合法です、といっても、有権者はそうですかと納得して、都知事を支持するわけではありません。弁護士の判断には支持を強制する力がありませんので、やるだけ無駄とも言えます。

ビジネス上の争いであれば、裁判に勝訴して判決をもらえば、敗訴した相手に対し、強制執行を行うことが可能です。したがって、強制力がありますので、弁護士を入れて違法性を判断してもらうことは有効です。

ということで、いろいろ感想はありますが、政治家には対話力が必要と感じました。








2016年6月11日土曜日

2016/4/3~4/16の知財高裁判決



201643日から2016416日までになされた裁判は、侵害訴訟2件(特許2件、商標0件)、審決取消訴訟7件(特許3件、商標4件)です。

なお、この裁判例ウォッチングの目的は、裁判所の使用するロジックや有効な証拠を確認するためで、攻防における双方の代理人の主張等は特に注目しておりません・・・。


1.    侵害訴訟
(1)平成27()10126  損害賠償(東京地方裁判所 平成27()14339
平成28414日判決 控訴棄却(3部)
特許権 (地盤強化工法)
構成要件充足性

(2)平成27()10125  特許権侵害差止(東京地方裁判所 平成25()3360
平成28413日判決 控訴棄却(2部)
特許権 (非磁性材粒子分散型強磁性材スパッタリングターゲット)
損害額,構成要件充足性,均等侵害,特許の有効性(新規性,進歩性

*コメント
金属組織のようなミクロ的構造をクレーム化することの困難を感じさせます。ミクロ的構造を測定する方法を明確化してクレームに入れることが必要でしょうか・・・。この事件とは関係ないですが、外観の認識に関し、肉眼、可視光という前提で見がちなところは注意が必要と思いました。

2審決取消訴訟

(1)平成27()10232  審決(拒絶)取消
平成28414日判決 請求棄却(3部)
商標権
自他識別力(3条1項3号)

*コメントはありませんが、やはり32項の主張ができないと苦しそうです。

(2)平成27(行ケ)10141  審決(無効・不成立)取消
平成28413日判決 請求棄却(2部)
特許権 (発光装置,面光源装置,表示装置及び光束制御部材)
新規性,進歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断

*コメントはありません

(3)平成27(行ケ)10154  審決(拒絶)取消
平成28413日判決 請求棄却(2部)
商標権 Cifonelli
類似性(4条1項11号)

*コメント
外観・称呼は近似、観念は特定の観念は生じない造語のため比較できず、商標類似とされました。男性用衣服であり取引実情から混同は生じない旨主張しましたが、引用商標も女性用に限られず、男性用も含むことから商品類似とされました。

(4)平成27(行ケ)10153  審決(拒絶)取消
平成28413日判決 請求棄却(2部)
商標権
類似性(4条1項11号)

*コメント
上記商標に「はさみ」の図形等が組み合わさったものについても、図形部分は識別力が小さいため分離して観察され、上記結論と同様の結論となりました。

(5)平成27(行ケ)10114  審決(拒絶)取消
平成28413日判決 請求棄却(4部)
特許権 (タイヤ)
進歩性(相違点の判断,顕著な効果の有無)

*コメントはありません・・・。

(6)平成27(行ケ)10101  審決(拒絶)取消
平成28413日判決 請求棄却(4部)
特許権 (歯科用コンピュータ・トモグラフィ撮像)
進歩性(相違点の判断)

*コメント
原告は周知例に記載された具体的な機構を前提とした主張をしましたが、審決は周知例に記載された具体的な機構を周知技術として認定したり,引用発明に適用したりしたものではないから,原告の上記主張は,失当であるとされてしまいました。周知技術と異なり、周知例については、あまり細かく分析しても意味がないということになるでしょうか。とはいえ、周知例と周知技術の差とは何なんでしょうかね?

(7)平成27(行ケ)10219  審決(無効・成立)取消
平成28412日判決 審決取消(3部)
商標権
類似性(4条1項10号,4条1項11号,8条1項),混同を生ずるおそれ(4条1項15号),不正目的(4条1項19号)

*コメント
ニュースにもなった判決です。外観と観念が非類似であるため、商標非類似と判断されております。本件は最高裁へ上告されておりますので、そちらの判断がどうなるか注目です。












すごいアイデア・つまらないアイデアについて

たまに、すごいアイデアを思い付いた!という感じになることがあると思います。

とはいえ、このまま突っ走って、事業化しようというのは危険です。自分が思いついたアイデアというのは、他の人がすでに思いついていたことが多いからです。

自分より優秀な人は世間にごまんとおりますので、基本的にはすでになされている(最悪の場合、すでに権利化されている)と考えた方がよいでしょう。

もちろん、そこであきらめるのではなく、従来のアイデアと自分のアイデアを比較して、違うところがあるか、ない場合には、どうやって相違を出してゆくか、というところが実際のアイデア創造のスタートラインとなります。

逆に、自分のアイデアがつまらないな、と感じることもあります。その場合には、アイデアを放置したりしますが、その後、そのアイデアを他の人が権利化したりして、まずい状況になることがあります。

アイデアを放置せずに、もう少し煮詰めて権利化したり、事業化したりすればよかったのですが、後の祭りです。

そう考えますと、アイデアの良し悪しは、主観的な判断は意味がなく、先行技術との対比において、良いか悪いか判断できるというということになるかと思います。このような客観性が重要かといえます。

自分も仕事がら、客観的な判断をするように思考が固定されてますので、発明者からアイデアをヒアリングした場合にも、すごいアイデアとも思いませんし、つまらないアイデアとも思いません。

とはいえ、すごいアイデアを思い付いたという発明者からヒアリングする際に、発明者は熱っぽく自分のアイデアを語るのに対し、自分はどうしても冷めた姿勢で聞いてしまうので、この弁理士はやる気がないのでは、と思われてしまう場合も多々あります。

ということで、どのようなアイデアも基本的にはすごいという姿勢でとらえるようにしています。もちろん最終的には先行技術調査をして判断することになるのですが。

また、発明された方も、自分のアイデアはつまらない、などと思わずに、まずは、先行技術調査をして評価し、権利化等の適切な対応をとっていただければと思います。






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