2012年3月27日火曜日

特許権の売却について(その1)

少々前ですが、東京農工大が情報端末の画面操作性を高める特許5件を船井電機に売却するなどして2億6千万円超の収入を得たとのニュースがありました。⇒【特許ウォーズ(上)】生き残りかけた争奪戦 宝の山を守れるのか 

ということで、これを題材に特許権の売却について考えたいと思います。

実際に売却されたのは以下の5件の特許権です。

番号
特 許 名 称
番 号
発明者
所 有 者
概 要
Human Interactive
Type Display System
U.S. Patent
No. 6,128,014
(2000.10.3)
中川 正樹
小國 健
国立大学法人
東京農工大学
ペン先の移動量と移動速度に応じてウインドウをスクロールする方法
Human Interactive
Type Display System
U.S. Patent
No. 6,683,628
(2004.1.27)
中川 正樹
小國 健
国立大学法人
東京農工大学
上記で、間接指示でありながら直接指示の感覚を与える関係を図示
表示装置の表示内容
制御方法
特許3475235
15926
登録
中川 正樹
澤田 伸一
小國 健
堀田 耕一郎
国立大学法人
東京農工大学
ペン操作に適したGUIの操作方法
表示装置の表示内容
制御方法
特許3959462
19525
登録
中川 正樹
澤田 伸一
小國 健
堀田 耕一郎
国立大学法人
東京農工大学
ペン操作に適したGUIの操作方法
Method for
Controlling Displayed
Contents on a Display
Device
U.S. Patent
No. 6,862,712
(2005.3.1)
中川 正樹
澤田 伸一
小國 健
堀田 耕一郎
国立大学法人
東京農工大学
ペン操作に適したGUIの操作方法


表にあるように、5件中3件が米国特許で2件が日本国特許です。ご存知のように船井電機は日本では特に製品を販売しておらず、もっぱら欧米を中心に液晶テレビなどを販売している会社です。

したがって、この米国特許の存在は、船井電機の購入の決断に有効に作用したことが想像できます。

また、発明の名称から上記特許はスマホ等に使用されるタッチパネル関係の特許であることがわかります。

スマホ関連の特許は米国では1件当たり50万ドル程度の値段が相場であるそうですので(参考:アップルが電機業界に促す「特許戦略の転換」:日本経済新聞)、5件で2億6千万円という価格は概ね妥当と考えられます。

なお、米国では発明の名称に「スマートフォン」 と入っているだけで、かなりの値段がつくそうですので、ややバブル気味とも思います。

しかしながら、スマホ関連特許については米国に確実にマーケットが存在するわけで、特許権の価値判断を簡略にできるマーケット法を使用できる点で、やはり日本にも特許市場が欲しいと思わせます。

さて、次回は特許情報から見た特許権の売却についてまとめてみたいと思います。

2012年3月24日土曜日

ノウハウの管理について

近年、企業内の技術的なノウハウを秘密情報として管理することが求められています。

これは、ノウハウも企業の重要な知的資産であり、不正競争防止法上の保護を受けるためには適切に管理する必要があるからです。

したがって、取引先に技術情報を開示するときや、従業員が退職する際などには、ノウハウに関する秘密保持契約を結ぶ必要があります。

さて、この場合、客体としてのノウハウをどのように特定すればよろしいでしょうか。

例えば、「~に関するデータ」や「◯◯装置に関する情報」など概括的な特定の方法があると思います。ただし、ノウハウ部分以外も含む広い表現となりますので、秘密保持義務が過大となる可能性があります。

また、「Xノートに記録された情報」、「Yメモリーに格納された情報」など媒体で特定することも考えられます。この場合も上記と同様の問題があります。

特定法の一つとしては、特許明細書と同様のフォーマットでノウハウに関する明細書を記載することが考えられます。

明細書化することにより、ノウハウの範囲の解釈に、判例の蓄積がある特許明細書の解釈手法を流用できますので、ノウハウの範囲を明確に定めることが可能となります。

なおかつ、特許発明とノウハウとが同一フォーマットで作成されるため、会社内の特許・ノウハウを含めた技術ポートフォリオの管理やノウハウ創作者の特定が容易となるでしょう。

さて、ノウハウの明細書の記載はどうあるべきでしょうか。特許庁で審査を受けるわけではありませんので、ある程度簡略化してもよいと思います。ただし、特許法の要件(新規性、記載要件)はある程度満たすような記載とした方が、後々役に立つと思います。

例えば、ノウハウの範囲につきましては新規性を満たすことを特許調査により確認したほうがよいと思います。これは不正競争防止法上の秘密情報として保護されるためには、非公知性の要件を満たす必要があるからです。

また、非公知性を確認することにより、法上保護されない不要なノウハウを管理することを避けられ、管理工数を削減することが可能となります。

実際問題としてノウハウの明細書を作成することは、コスト的に厳しいため(弁理士に頼めば1件20~30万円必要)、すべてのノウハウに適用することは難しいと思いますが、重要な案件についてはトライされてみてはいかがでしょうか。

2012年3月17日土曜日

TOPページの写真について

今は沢山の方がブログを書かれていて、中には非常にセンスを感じさせるデザインが見受けられます。

個人的にはシンプルなデザインが好きなのですが、私はページ作成の技術がないため、ブログの機能に依存するページ作りとなり、結局ごちゃごちゃしたページとなってしまいます。

ということで、デザインが悪化することがわかりつつもトップページに写真を入れてみました。(2012.4.2追記:うまく表示できないようですので写真は削除いたしました。すいません。)

この写真は私がNikonのP300で撮影した戦艦三笠です。よくみると、マストにZ旗が掲げられていることがわかると思います。 このお正月休みに横須賀で撮影してまいりました。

戦艦三笠が活躍した戦争といえば日露戦争ですが、当時のロシアと日本との間には27倍もの国力の差があり、普通に戦争を行えば勝ち目はまったくないといえると思います。

しかしながら、結果としては何とか勝利(ほぼ引き分け)の状態にまで持ち込んだわけで、当時の日本人の優秀さには感服してしまいます。

日本が勝利した要因の1つとしては、満州地域の局地戦に持ち込んだことがあると思います。

日本とロシアとの間には何倍もの戦力差がありましたが、ロシアは広い国土に戦力を分散させておりましたので、満州という局地でいえば日本の方が戦力が上回る状態を作り出すことに成功しました。

そういう意味では日本は、敵を上回る戦力を投入する、という基本に忠実な戦略を実行したといえるでしょう。

さて、戦争を持ちだして企業経営を語ることも不謹慎とは思いますが、中小企業が大企業に対抗するには同じような戦術を取る必要があると思います。

つまり、特定の技術分野にリソースを投入し、大企業よりも戦力で上回る状態を局地的に作り出すことが必要でしょう。

選択と集中といわれますが、単に集中するだけではなく、人員、投資額、特許権の数、など、客観的な数字で上回る必要があると思います。

戦艦三笠の船体には、戦歴を記録したプレートが取り付けてあります。


少々見にくいですが、この船は引退までのすべての戦いに勝利していることがわかります。 戦いに勝つには優れた戦略があったことはいうまでもないでしょう。

2012年3月15日木曜日

サービスイノベーションについて

私は以前、メーカーで技術者をしておりました。メーカーでは技術開発が重要な活動となります。これは、他社と差別化した製品を開発することにより、売上を増大するためであることはいうまでもありません。

今は転職して、どちらかといえばサービス業をやっております。最近感じることは、サービス業でも新製品を開発することの必要性です。既存のサービスの提供では、他社と差別化できませんし、大きな会社相手では勝ち目がありません。

ただし、せっかく新サービスを開発しても模倣されやすいという欠点があります。製品の場合には、特許網を築くことにより参入障壁を築けます。一方、サービスは人為的取り決めでありますので、自然法則を利用しておらず、特許権を取ることが無理な場合があります。

それではサービスの模倣を防ぐににはどうすればよいでしょうか?

まずは、サービスの一部をクローズド・ブラックボックス化し、他者から見えなくすることが考えられます。牛丼チェーンでいえば、フランチャイズというビジネスモデルを選択しつつも、牛丼のレシピは外部に公開しないことにより、ビジネス全体の模倣を防ぐという考えです。

レシピについて秘密として管理すれば不正競争防止法による保護が可能ですし、マニュアル化すれば著作権法で守ることも可能と思います。

また、 ビジネスモデルの一部にコンピュータによる情報処理が行われる部分があれば、特許権による保護を受けることも可能かと思います。牛丼チェーンでいえば、コンピュータによる在庫管理システムなどが特許権化できる可能性があります。

さらに、サービスをブランド化できれば、単なる模倣業者に対しては優位な位置を占めることも可能でしょう。もちろんサービスマークについては商標権をとっておきます。

このように、サービスについても知財を組み合わせることにより、完全とはいえませんがある程度模倣を防ぐことが可能です。

私のビジネスでいえば、商標として「御社の知財部」というのは確保しましたが、その他のサービスの開発はまだまだです。クローズドの部分を如何にして作るか考えどころです。

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