2016年3月27日日曜日

2016/2/14~2/20の知財高裁判決



2016214日から2016220日までになされた裁判は、侵害訴訟2(商標1件、著作権1,)、審決取消訴訟7件(特許6件、商標1件)です。

先日(2016325日)に均等論について判示した大合議判決があったようですが、なかなか追いつけませんね・・・。

1.侵害訴訟

(1)平成27()10103  損害賠償等本訴,商標使用差止等反訴(東京地方裁判所 平成24()29533
平成28218日判決 原判決一部変更(3部)
商標権
損害額,権利の濫用

*コメント
1審被告が,1審原告が原告標章を使用する行為が1審被告の有する反訴商標権の侵害に当たる旨主張して,1審原告に対し,商標の使用の差止め等を求めた点については、1審原告が営業譲渡契約前から及び契約後も原告標章を使用していたこと、1審被告は原状回復義務を有すること、などから、1審原告が原告標章を使用することを禁じることは,当事者間の衡平を著しく欠く結果となるものと認められるから,1審被告による1審原告らに対する商標権の行使は,権利の濫用として許されないとされました。

前回の裁判例もそうでしたが、ビジネス上の関係が破たんした場合には商標上の争いが生じるリスクが多々ありそうです。権利があるからと言って権利行使しても契約内容によっては権利濫用となりますので、商標権侵害と契約内容の双方の面からの検討が必要なようです。

(2)平成27()10115  著作権侵害差止等(東京地方裁判所 平成26()3539
平成28217日判決 控訴棄却(4部)
著作権

*コメントはありません。

2.審決取消訴訟

(1)27(行ケ)10051  審決(無効・成立)取消
平成28218日判決 審決取消(3部)
特許権 (構造物の目地の構造)
進歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断)

*コメント
特許性の判断において、本件請求項の「防草傾斜面」の意味が、本件明細書の記載に基づいて解釈されました。リパーゼ判決という有名な判例があるのですが、これとは少し違うニュアンスとなっています。

甲1明細書には「防草機能」の記載はありませんでしたので、甲1発明の「連接傾斜面」は、本件発明の「防草傾斜面」とは(形状が近似するにしても)、相違すると認定されました。

特許庁の審査では、機能は異なるのに形状が近似するだけで、実質的に同一とされてしまうことが非常に多いのですが、機能で差別化できれば相違点といえます。妥当な判決と感じます。

(2)平成27(行ケ)10134  審決(無効・不成立)取消
平成28217日判決 審決取消(2部)
商標権
類似性(4条1項11号)

*コメント
医療用の「体脂肪測定器,体組成計」と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」とが類似した商品であるか否かについて争われましたが、医療用も家庭用も性能が近づいてきており、性能による区別が困難であり、需要者も一部重複することから類似とされました。

(3)平成27(行ケ)10090  審決(拒絶)取消
平成28217日判決 審決取消(2部)
特許権 (盲鋲素子及びその使用方法)
進歩性(相違点の認定,相違点の判断)

*コメント
引用発明に周知技術を適用しても、本件発明の構成に(技術的に)ならないとされ、特許庁の相違点の認定についての判断誤りがあるとされました。

(4)平成27(行ケ)10077  審決(無効・不成立)取消
平成28217日判決 請求棄却(2部)
特許権 (水洗便器)
進歩性(発明の要旨認定,引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断),特許請求の範囲の記載要件,明細書の記載要件(明確性),補正・訂正の許否(新規事項の追加)

*コメントはありません

(5)平成26()10272  審決(拒絶)取消
平成28217日判決 審決取消(2部)
特許権 (自己乳化性の活性物質配合物およびこの配合物の使用)
進歩性(相違点の認定,相違点の判断),手続違背(50条)

*コメント
審決において初めて相違点の存在を認定し,それに当該技術を適用して,不成立という結論を示すのは,実質的には,査定の理由とは全く異なる理由に基づいて判断したに等しく,当該技術の周知性や適用可能性の有無,これらに対応した手続補正等について,特許出願人に何らの主張の機会を与えないものといわざるを得ず,特許出願人に対する手続保障から許されないとされました(すなわち特50条違反)。

(6)平成27(行ケ)10120  審決(拒絶)取消
平成28217日判決 請求棄却(4部)
特許権 (モータ駆動双方向弁とそのシール構造)
進歩性(相違点の認定,相違点の判断),特許請求の範囲の記載要件

*コメント
非容易想到性の論理付けについて、相違点がある⇒相違点は設計事項ではない⇒相違点とする技術的必然性もない(動機づけがない)⇒相違点とする記載も示唆もない⇒相違点とした場合には技術的に支障が生じる(阻害要因)と、されております。

(7)平成27(行ケ)10065  審決(拒絶)取消
平成28217日判決 請求棄却(4部)
特許権 (船舶)
進歩性(相違点の判断)

*コメントはありません



2016年3月24日木曜日

ブランド思考と製品設計について

昨年VAIOがスマートフォンを販売しましたが、あまり評判が良くなかったようです。その理由としましては、VAIOが持つブランドイメージと異なる製品だったということがいわれています。

当時はVAIO自身はスマートフォンを製造しておりませんでしたので、外国メーカーのOEMとなりましたが、他社のスマートフォンと形状・スペックに相違があまりありませんでしたので、そこに齟齬が生じたようです。

そう考えますと、ブランド戦略において、ブランドの世界観と製品(Product)の連携が取れていなかったということになるかと思います。


私も10何年前、VAIOのノートパソコンを買ったことがあります。30万円弱しましたが、デザインもよく、軽量コンパクトで、所有欲を満たしてくれる製品でした。

VAIOにはそういうブランドイメージがあると思いますが、スマートフォンの販売に際しては、会社を立ち上げたばかりという事情もあり、ブランドイメージについてあまり考慮されていなかったのではないでしょうか。

そうしますと、ブランドの価値を守るためには、単に、製品にブランドを付けて売ればよいのではなく、技術的な検討も必要なことがわかります。

こういう考え方を、デザイン思考に対抗して、ブランド思考としたいと思います。

ブランドから製品設計をする手順としては、次のようになると思います。



1 まず、ブランドの世界観から要求される製品の品質を確定します。

2 次に、その製品の品質を実現する製品の機能を確定します。

3 次に、その製品の機能を実現する製品の構成を確定します。

4 最後に、その製品の構成をすべて備えた設計による製品(Product)とします

こうすることで、ブランドの世界観と齟齬が生じない製品設計が可能となると思います。

今年に入って新型のVAIOのスマートフォンが販売開始となったようです。新製品は自社の工場で製造するということでVAIOのブランドイメージに沿う製品になっているのではと思います。

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