2016年5月21日土曜日

2016/3/20~3/26の知財高裁判決



2016320日から2016326日までになされた裁判は、侵害訴訟3件(特許、商標、著作権、各1件)、審決取消訴訟11件(特許6件、商標5件)です。

1.侵害訴訟

(1)平成27()10014  特許権侵害行為差止(東京地方裁判所 平成25()4040
平成28325日判決 控訴棄却(特別部)
特許権 (ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法)
均等侵害,特許の有効性(進歩性)

*コメント
均等論を認めた超重要判決です(ニュースになったような気がします)。本件に関しては偉い先生がまとめた記事をいろいろ書いてくれるでしょうから、それを待ちたいと思います。

(2)平成27()10121  商標権侵害行為差止等(東京地方裁判所 平成26()30230
平成28324日判決 控訴棄却(1部)
商標権 (GESTS)
その他

*コメント
商標の使用が、共有者によるものか、この共有者が勝手に使用許諾した者によるものか、について争われました。商品タグに販売元が共有者であることが記載されていることから、共有者の使用とされ、商標権を侵害しないこととなりました。

(3)平成27()10102  損害賠償等(東京地方裁判所 平成25()18110
平成28323日判決 控訴棄却(2部)
著作権
著作物性,複製・翻案

*コメント
まず、Accessのファイルの著作物性が争われました。当該ファイルに関しコンピュータに対する指令の組合せに個性が顕れる余地はほとんどなく,プログラムの著作物としての創作性が否定されました。翻案については、創作性を有する部分が依拠していることが必要であり、単に共通するだけでは、翻案とならないとされ、控訴人は、プログラムの特異な一致を主張しましたが、創作性を有する部分の一致ではないため、翻案でもないとされました。


2.審決取消訴訟
(1)平成27(行ケ)10014  審決(無効・不成立)取消
平成28325日判決 請求棄却(1部)
特許権 (ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法)
進歩性(相違点の判断)

*コメントはありません。

(2)平成27(行ケ)10113  審決(無効・不成立)取消
平成28324日判決 審決取消(3部)
特許権 (単位製剤)
進歩性(相違点の判断)

*コメントはありません・・・。

(3)平成27(行ケ)10087  審決(無効・不成立)取消
平成28324日判決 審決取消(3部)
特許権 (立体映像信号生成回路及び立体映像表示装置)
進歩性(引用発明の認定,相違点の認定)

*コメント
審判で相違点と認定された構成要件は相違していないと認定されました。

(4)平成27(行ケ)10075  審決(無効・成立)取消
平成28324日判決 請求棄却(3部)
特許権 (立体網状構造体,立体網状構造体製造方法及び立体網状構造体製造装置)
進歩性(相違点の判断)

(5)平成27(行ケ)10203  審決(取消・成立)取消
平成28324日判決 請求棄却(3部)
商標権
不使用(50条),手続違背

*コメント
本件における2段組みでの商標の使用は社会通念上同一の商標の使用とは認められませんでした。登録商標に言葉を付加しての使用は不使用とされるリスクがあることがわかります。

(6)平成27(行ケ)10174  審決(無効・不成立)取消
平成28323日判決 請求棄却(2部)
商標権 (チャッカボー)
類似性(4条1項10号),混同を生ずるおそれ(4条1項15号),不正目的(4条1項19号)

*コメント
商標の一部分「チャッカ」に需要者が着目するかについて、原告がアンケート結果を提出しましたが、どうにも、アンケートの設問がよろしくなかったようで、難しいところです。

(7)平成27(行ケ)10173  審決(無効・不成立)取消
平成28323日判決 請求棄却(2部)
商標権
類似性(4条1項10号),混同を生ずるおそれ(4条1項15号),不正目的(4条1項19号)

*コメント 同上です。

(8)平成27(行ケ)10172  審決(無効・不成立)取消
平成28323日判決 請求棄却(2部)
商標権 (チャッカ棒)
類似性(4条1項10号),混同を生ずるおそれ(4条1項15号),不正目的(4条1項19号)

*コメント 同上です。

(9)平成27(行ケ)10165  審決(拒絶)取消
平成28323日判決 審決取消(2部)
特許権 5角柱体状の首筋周りストレッチ枕)
進歩性(相違点の判断)

*コメント
引用発明の断面8角形の枕は転がりやすくすることを目的とするのに対し、本件発明の断面5角形の枕は転がりにくくすることを目的とすることから、本件の断面5角形形状は、容易に想到できるものではないと認定されました。

(10)平成27(行ケ)10207  審決(無効・不成立)取消
平成28323日判決 請求棄却(2部)
商標権
類似性(4条1項10号),商標の使用意思(3条1項柱書)

*コメント
周知性に関する意見書は原告と一定の関係を有する専門家により作成されたものであるから直ちに信用はできないとされました。上記のアンケートもそうですが、商標の訴訟は証拠づくりがポイントとなりそうです。

(11)平成27()10127  審決(無効・成立)取消
平成28323日判決 審決取消(4部)
特許権 (レーザー加工装置)
進歩性

*コメント
3回目の審決取消訴訟です。やはり審決は取り消されました。引用発明に本件発明の構成を採用する動機づけもなく、周知例にもそのような構成は開示されていない、とされます。




2016年5月11日水曜日

2016/3/13~3/19の知財高裁判決



2016313日から2016319日までになされた裁判は、侵害訴訟0件、審決取消訴訟4件(特許2件、商標2件)です。

1.侵害訴訟

ありません

2.審決取消訴訟

(1)平成27(行ケ)10143  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 審決取消(2部)
特許権 (体液分析装置)
進歩性(相違点の判断)

*コメント
引用発明に引例2の温度制御システムを適用する動機付けがない、引用発明に引例2の温度制御システムを適しても本件発明の構成とはならない、引用発明には本件発明の課題は開示されていない、とされ、拒絶審決が取り消されました。最近よく使われる論理構成です。

(2)平成27(行ケ)10129  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 審決取消(2部)
特許権 (パーティクル濃度測定装置)
進歩性(相違点の認定,相違点の判断)

*コメント
適宜説明図を提示することにより、気流の流れる方向に相違があることの立証に成功し、拒絶審決が取り消されました。

(3)平成27(行ケ)10194  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 請求棄却(4部)
商標権 (COLEMAN)
類似性(4111号)

*コメント
本願「COLEMAN」と引用「コールマン」の類否について争われました。外観は非類似であるが、その差異は称呼・観念の同一性をしのぐほどではなく、称呼は同一、観念は両方とも原告著名アウトドアブランド「コールマン」を認識することから同一とされ、両商標は類似するとされました。そうすると、自社ブランドが著名であったために、他社商標に自社ブランドの観念が生じ、それにより、自社商標出願が拒絶される、という、なんだかよくわからない状況になっているのでしょうか?

(4)平成27(行ケ)10193  審決(拒絶)取消
平成28316日判決 請求棄却(4部)
商標権
類似性(4111号)

*コメント
同上です。






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