2021年2月28日日曜日

現状より悪くすることについて

今から35年くらい前でしょうか。NHK(おそらく)で、ある無名ライダーのドキュメンタリーを放送しておりました。

当時のレースは、少数のワークスマシーンとプライベータが混走して戦う構図となっておりました。もちろん、ワークスマシーンはお金がかかっておりますので、プライベータが勝利する可能性はほぼありません。

しかしながら、上記のドキュメンタリーでは、無名のプライベータが勝利しました。そのライダーとは本間選手です。

本間選手はその後、全日本チャンピオンになりましたが、世界を狙える才能があったものの、怪我のためレースの世界から引退としたと思います。

その本間選手ですが、最近Youtuberとしてデビューしたようですので、動画を見てみました。

 https://www.youtube.com/watch?v=XWjqtLQZ74Q

(↑おっさんがただしゃべっているだけですので、興味のない方は視聴不要です。)

テーマとしては、サスペンションセッティングの話で、3コーナーのセッティングがバッチリ出てしまったときどう考えるか、というテーマです。

サーキットには10個くらいコーナーがありますので、3コーナーのセッティングがバッチリでても、他のコーナーが遅ければ、サーキット1周としてはタイムが出ませんので、よろしくないこととなります。

それで、どうすればよいかといえば、上記動画を見てください・・・。

以下は、私の感想となりますが、 3コーナーのセッティングがバッチリでますと、そのセッティングを変えたくない心理状態となります(ラチェット効果みたいなものでしょうか)。

そうすると、3コーナーのセッティングのまま、他のコーナーも早く走れるようなセッティングを求めがちですが、これは無理な話となり、セッティングの沼に陥ることになります。

本間選手の言うところでは、マシンのセッティングとは

マシンをよくする→マシンをさらによくする→マシンをもっとよくする

という流れではなく

マシンをよくする→マシンを一旦悪くする→マシンをよくする

という流れとなります。

つまり、 3コーナーのセッティングがでましたら、そのセッティングを一旦悪化させ、その分他のコーナーを早くできるセッティングにし、コース全体として早くすることが必要とのことです。

しかし、マシンをいったん悪くする判断をできる人はおりませんので、これが難しいところとなります。

これは、レーサーの開発に限らず、一般の商品にもあてはまるかと思います。例えば、コンパクトデジタルカメラは、性能をよくし続けた結果、市場自体がなくなってしまいました。

どこかの段階で、カメラ性能を悪化させ、他の用途にも使えるセッティングを考えられれば生き残れたかもしれません。 

ただし、特に大企業では「性能を悪くする」製品開発など提案しましたら、ぼろぼろに叩かれるでしょうから、どうなんでしょう。

オートバイレースにあてはめますと、カメラが「製品」、サーキットが「市場」となるでしょうか。製品を部分最適化するのではなく、市場適合性を最適化するため、機能を切り捨てたり、機能を付加したりすることを考えることになるでしょうか。

しかし、レーサーに限らず、スポーツ選手などの勝負師の方の言うことは、深い話が多いと思います。真剣勝負により感覚が研ぎ澄まされるからでしょうか。 

この、良くするために、あえて悪くするという考えは、いろいろな分野に応用できると思います。

2021年2月24日水曜日

システムデザインについて

年をとりますと老化現象なのか、新しいものを否定的に捉えるようになります。

最近、否定的に考えていますのが、空飛ぶ自動車です、最近いろいろなところで話題になっておりますが、安全性や騒音、航続距離を考えますと、実用化は難しいと思います。

ただし、これは老化現象なのか、それとも単に知識が足りないのか、よくわからないため、空飛ぶ自動車の解説書を買ってみました。

題名は「空飛ぶクルマのしくみ」という2000円の本となります。題名からわかるように専門書というより入門書という感じの本となります。

この本では、空飛ぶ自動車を単なるメカニズムとしてとらえるのではなく、システムデザインからとらえています。

システムデザインとは、初めて聞いた言葉ですが、「システム」は複数の要素が相互作用するとき、その全体のこと、「デザイン」は、システムをつくるときの設計図、設計行為、だそうです。

つまり、システムデザインとは、複数の要素の相互作用全体の設計図・設計行為、となると思います(でよいのでしょうか?)。

空飛ぶクルマの場合の要素には、メカニズムや制御系のみならず、サービス、使い勝手みたいなものも要素となりますし、法律(道交法?、航空法?)なども要素に含まれます。

要は、メカのみならず、その他関連する要素もあわせてデザインするのがシステムデザインというのかと思います。

システムデザインのアプローチによれば、空飛ぶクルマが完成しますと合わせて、市場性や法適合性もデザイン完了しておりますので、プロジェクトの失敗が少なくなると思います。

この話を聞いて思い出しますのが、MRJのプロジェクトです。MRJはメカ的には完成しておりましたが、米国の航空法に適合する構造となっておりませんでしたの、設計変更が生じ、これにより完成が遅れ、コロナの影響により、プロジェクト中断という残念な流れとなりました。

MRJもシステムデザイン的な考えをしていれば、失敗しなかったかもしれません。まあ、後知恵ですが・・・。

さて、空飛ぶクルマですが、あくまでも私見ですが、電気自動車と同様に、人が乗ることにとらわれすぎのような気がします。

空飛ぶクルマについても、無人化すれば、結構用途が拡大すると思いますが、人を乗せることを考えますと、用途は特殊用途しかないと思います。

無人化の空飛ぶクルマとは、すなわち、ただのドローンかもしれませんが・・・。まあ、予想が外れますと、かっこ悪いので、これ以上は、言わないでおきます・・・。

2021年2月19日金曜日

今年の作業テーマについて

今年の作業テーマですが、テキストマイニングを使用したMFTモデルの作成にしようかと考えております。

MFTモデルは、去年やりました多空間デザインモデルをマーケティング用に変形したものです。

市場空間と技術空間に大まかに空間を分けて、その中に、用途空間と機能空間と属性空間を設けます。

 

用途空間と機能空間と属性空間とを、MFTフレームのような感じでテキストマイニングにより関連性を抽出します。

ちなみに、 MFTフレームとは、要素技術(シーズ)と市場ニーズの間に、「ファンクション」(効用)という概念をおくことで、製品化や事業化のイメージを容易にすることを意図したフレームワークのことをいうそうです。Mはmarket、Fはfunction、TはTechnologyの頭文字をとっているそうです。

デザインやブランド分析の場合には、心理空間用語を得るために、顧客の声を収集する必要がありますが、用途については特許情報からとれますので、特許情報のみでMFTモデルをつくれるのではないかと考えております。

そういう意味では昨年よりテーマの難易度が下がってしまいますので、何か新しい要素を入れられないか検討しております。 

ストーリーとしては、特定技術を有する企業が、新市場に進出するために、用途探索をする、というような感じとしたいと思います。技術に関しては、おむつを離れたいと思いますが、具体的には決めておりません。

例年のごとく、5月にデータ分析をして、9月に文書にまとめて、12月に知財学会で発表できればと思います。

2021年2月10日水曜日

脱コンテクスト化と再コンテクスト化について

ネットで特許情報分析を調べますと、いろいろな分析手法があることがわかります。

 

しかし、最近歳のせいでしょうか、特許情報分析のアウトプットをみましても、結局のところ分析により何がわかったのか、よくわからないことが多いです。

 

もちろん、特許情報分析のアウトプットとして何らかの結論めいたことは記載されているのですが、なにかもやもやした印象となります。

 

このもやもや感の原因を考えてみました。

 

ウィキペディアによれば、分析とは、ある物事を分解して、それらを成立させている成分・要素・側面を明らかにすること、とされます。

 

そうしますと、分析によってわかるのは、要素であって、物事全体はわからない、というのがもやもや感の原因なのかと思います。

 

いくら目や口や内臓の分析をしても、人間は理解できないということになるかと思います(もちろん、目や口や内臓の研究は重要であることには違いありませんが)。

 

そうしましたところ、テレビで流し見しておりました放送大学で、脱コンテクスト化と再コンテクスト化という説明をしておりました(何の講義かはわかりませんが・・・)。

 

このキーワードにあてはめますと、例えば、目の研究とは、人間というコンテクストからいったん目を分離して、目の構造を研究をする、いわゆる脱コンテクスト化に相当するのではないかと思います。

 

つまり、特許情報分析とは脱コンテクスト化であるので、要素はわかるが全体像はわからないというのがもやもや感の原因と思います。

 

そうしますと、特許情報分析を理解するためには、脱コンテクスト化につづいて、コンテクストを再構成する再コンテクスト化に相当する処理が必要なのではないかと思います。

 

今では、脱コンテクスト化をIPデザインマトリクスで行い、再コンテクスト化をIPデザインモデルで行えればと考えております。

 

これができれば、特許情報をより有用に活用できるのではないかと思います。

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