今から35年くらい前でしょうか。NHK(おそらく)で、ある無名ライダーのドキュメンタリーを放送しておりました。
当時のレースは、少数のワークスマシーンとプライベータが混走して戦う構図となっておりました。もちろん、ワークスマシーンはお金がかかっておりますので、プライベータが勝利する可能性はほぼありません。
しかしながら、上記のドキュメンタリーでは、無名のプライベータが勝利しました。そのライダーとは本間選手です。
本間選手はその後、全日本チャンピオンになりましたが、世界を狙える才能があったものの、怪我のためレースの世界から引退としたと思います。
その本間選手ですが、最近Youtuberとしてデビューしたようですので、動画を見てみました。
https://www.youtube.com/watch?v=XWjqtLQZ74Q
(↑おっさんがただしゃべっているだけですので、興味のない方は視聴不要です。)
テーマとしては、サスペンションセッティングの話で、3コーナーのセッティングがバッチリ出てしまったときどう考えるか、というテーマです。
サーキットには10個くらいコーナーがありますので、3コーナーのセッティングがバッチリでても、他のコーナーが遅ければ、サーキット1周としてはタイムが出ませんので、よろしくないこととなります。
それで、どうすればよいかといえば、上記動画を見てください・・・。
以下は、私の感想となりますが、 3コーナーのセッティングがバッチリでますと、そのセッティングを変えたくない心理状態となります(ラチェット効果みたいなものでしょうか)。
そうすると、3コーナーのセッティングのまま、他のコーナーも早く走れるようなセッティングを求めがちですが、これは無理な話となり、セッティングの沼に陥ることになります。
本間選手の言うところでは、マシンのセッティングとは
マシンをよくする→マシンをさらによくする→マシンをもっとよくする
という流れではなく
マシンをよくする→マシンを一旦悪くする→マシンをよくする
という流れとなります。
つまり、 3コーナーのセッティングがでましたら、そのセッティングを一旦悪化させ、その分他のコーナーを早くできるセッティングにし、コース全体として早くすることが必要とのことです。
しかし、マシンをいったん悪くする判断をできる人はおりませんので、これが難しいところとなります。
これは、レーサーの開発に限らず、一般の商品にもあてはまるかと思います。例えば、コンパクトデジタルカメラは、性能をよくし続けた結果、市場自体がなくなってしまいました。
どこかの段階で、カメラ性能を悪化させ、他の用途にも使えるセッティングを考えられれば生き残れたかもしれません。
ただし、特に大企業では「性能を悪くする」製品開発など提案しましたら、ぼろぼろに叩かれるでしょうから、どうなんでしょう。
オートバイレースにあてはめますと、カメラが「製品」、サーキットが「市場」となるでしょうか。製品を部分最適化するのではなく、市場適合性を最適化するため、機能を切り捨てたり、機能を付加したりすることを考えることになるでしょうか。
しかし、レーサーに限らず、スポーツ選手などの勝負師の方の言うことは、深い話が多いと思います。真剣勝負により感覚が研ぎ澄まされるからでしょうか。
この、良くするために、あえて悪くするという考えは、いろいろな分野に応用できると思います。