2020年4月16日木曜日

モデルとマトリクスについて

コロナウィルスの影響で、ブログどころではないのですが、何とか投稿してみます。

この日常生活へのストレスは、東日本大震災時の計画停電を思い出させます。

コロナウィルスのような現象は、いわゆるブラックスワンと呼ばれる現象でして、個人的には、東日本大震災が自分が経験する最後のブラックスワンと思っていましたが、10年も経たずにこのような状況となりました。

そうすると、今後もブラックスワン発生前提の人生設計が必要と思います。ちなみに、私はブラックスワンという本を1ページも読んでおりません・・・(とても難解という噂ですので・・)。

さて、以前お知らせしましたように、パテント誌の3月号に「テキストマイニングを使用したブランドQFDの作成」が掲載されました。

5月中旬には、弁理士会のホームページで無料公開される予定ですので、公開されましたらリンクを張ります。

それで、すでに読んでいただいた方にはお分かりと思いますが、実のところ、ブランドQFDは不要な内容となっております。

論文では、最終的なアウトプットとしてコンテクストを作成しておりますが、これは、類似度行列から直接作成できますので、この論文のように、ブランドQFDの作成をわざわざ介する必要はありません。

情報のまとめ方としては、下記のごとくマトリクス型(QFD等)とモデル型(コンテクスト等)があるのではないか、と途中で気が付きましたが、結局論文作成時の混乱がそのまま残った形となります。


特許情報分析ではマトリクス型が多く用いられますが、モデル型の方が各要素のつながりが目で見てわかりやすいため、こちらの方がよいとも思います。

このあたりの使い分けを意識的にしているのが「デザイン科学概論」という本です。この本では、分析にはマトリクスを用い、発想にはモデルを用いております。

先日公開しましたワーキングペーパー(https://www.j-mac.or.jp/wp/dtl.php?wp_id=89)の方でも、無意識に、技術分析はモデルを用いた検討となっており、知財分析はマトリクスを用いた分析となっております。

ということで、今後このあたりの役割分担を考えるのも面白いと考えております。

2020年4月3日金曜日

ワーキングペーパー公開について

ワーキングペーパーの方、無事に公開されました。

https://www.j-mac.or.jp/wp/dtl.php?wp_id=89

無査読論文ですのでレベルは低いですが、参考いただければと思います。

これを公開した理由としましては、最近テキストマイニングでQFDをつくるということをやっているのですが、QFDを完成したあたりで力尽き、それではどうやって分析するのかをあまり説明できていないためでした。

今後は、QFDの分析についてはこのワーキングペーパーを見てください、と言い訳がましくいえるので、よいかと思います。

前回の反省を踏まえ、今回は図をカラーとしてみました。しかし、図がかすれたり、字の間隔がおかしいところがあるなど、見苦しいところがあり、完成度はまだまだです。

この論文は2013年のものですが、ここで一旦QFDの研究はやめております。その理由は、特許情報から顧客ニーズを引き出すことに無理があると考えたためです。

特許情報から技術情報を引き出すことは可能ですが、ニーズに関する記載は特許性に貢献しないことから、明細書にニーズの記載は基本的にはありませんので、ニーズを引き出すことは無理となります

(これは、BtoCの場合です。BtoBの場合には技術的課題がそのままニーズとなりますので、QFDを特許情報のみで作ることは可能と思います)。

ニーズ情報を集めるためには、アンケート調査を行う必要がありますが、大規模なアンケート調査は時間とコストがかかりますので、私のように貧乏弁理士には不可能ということで困り、研究ストップとなりました。

それで、2016年に共同研究者の方が、SNSとかレビューとかなら、大量かつローコストで顧客ニーズを集められるのではないかと提案されて、それ以降、顧客ニーズはアマゾンから抽出して、BtoC商品でもQFDが作れるようになりました。

それで、2017年に共同研究者の方が、テキストマイニングを使用したら、もっと楽にQFDを作成できるのではないかと提案されて、それ以降、テキストマイニングを使用してQFDを作るようになりました。

それで今に至るということになります。

今年のテーマはテキストマイニングで多空間デザインモデルをつくるということになりますが、さて、どうなるでしょうか。

2020年3月29日日曜日

ワーキングペーパー投稿について

今日、マーケティング学会へワーキングペーパーを投稿してみました。

ワーキングペーパーは実体審査はされませんので、書式に問題がなければ、今週中に公開されるとは思います(とはいえ、書式で引っ掛かりがちではありますが・・・。)

公開されましたら、リンクを張ります。

内容としましては、特許情報からQFDを作るというもので、2013年の知財学会で発表したものの焼き直しです・・・。

2013年の知財学会は確か大阪で開催されたと思います。私も大阪まで行って発表してきました。

当時は、特許情報分析的な学会発表カテゴリーがありましたので、そこで発表しました(今はそういうカテゴリーはないような気もしますが・・・)。

結構力を入れて、資料を作成したと思うのですが、会場の反応は、ほぼありませんでした(質問者は1人でした)。

思うに、分析が細かすぎて、パワーポイントで視認できない文字となり、誰も発表を理解できなかったのではないかと思います。

これを反省点として、以後の発表では、分析を細かくせず、ざっくりとした分析とし、理解しやすいようにしております。

ただし、座長の方が非常に興味をもったらしく、質疑応答は座長とばかりしていたような気もします。理解者がひとりでもいれば、発表した甲斐があったというものです。

あれからもう7年もたちますので、内容的には多少陳腐化している部分もありますが、QFD分析の基本にのっとった、教科書的な分析をしておりますので、基本を押さえるには参考となる論文と思います。

これをもって、マーケティング学会に投稿できるネタはなくなりましたので、気分的にはすっきりしました。

2020年3月15日日曜日

特許判断マトリクス?について

3月も半ばとなりましたが、コロナウィルスの世界的蔓延が止まりません。心理的には、東日本大震災のときのような不安感があります。

コロナウィルス対策の決め手となるのは、ワクチン開発、抗ウィルス剤開発と思いますので、関係機関には頑張ってもらいたいと思います。

さて、コロナウィルス感染の診断には、現状PCR検査が主に使用されています。しかし、PCR検査の確度は100%ではなく、偽陽性もありますし、偽陰性もあります。

偽陽性とは、陰性であるのに間違って陽性と判定されることをいい、偽陰性とは陽性であるのに間違って陰性と判断されることをいいます。

偽陰性の場合には、陽性であるのに間違っておりますので、感染を正しく判断できず、よろしくない判断ともいえるかと思います。

偽陽性の場合には、陰性であるのに間違っておりますので、安全サイドに考えれば問題ないのかもしれませんが、日本のように医療資源に限界がある場合には、偽陽性の人が病院に殺到し医療崩壊の原因にもなりかねないので、こちらもよろしくはありません。

と、専門外のことについて語るとボロがでますので、ここでやめます。

似たような判断は、特許でもあります。特許出願時には、特許されるか、拒絶されるか予想して、出願して審査結果を得るのですが、その関係は以下の行列のような関係になるかと思います。



行列内の「特」は、特許されると予想し、審査結果も特許のもの
行列内の「偽特」は、特許されると予想し、審査結果は拒絶のもの
行列内の「偽拒」は、拒絶されると予想し、審査結果は特許のもの
行列内の「拒」は、拒絶されると予想し、審査結果も拒絶のもの

「偽拒」と「拒」は、出願時に拒絶が予想されているので、出願が行われることは基本的にはなく、このケースを想定するのは意味がないかもしれません。

例えば、特許査定率90%以上を宣伝文句とする特許事務所における特許査定率とは
 特許査定率(90%)=「特」件数 (例えば90件)/(「特」件数(例えば90件)+「偽特」件数(例えば10件))
となります。

予想に問題がないのは「特」と「拒」であり、これを100%できるのが完ぺきな弁理士となりますが、実際には進歩性の判断にあいまいな部分もあることから、必然的に「偽特」と「偽拒」が生じてしまいます。

特に目立つのは「偽特」となります。つまり、特許と思ったのに拒絶となったケースです。このようなケースでは、クライアントによっては弁理士に不信感を持ち、仕事がなくなったりします。

そうしますと、弁理士としては、商売あがったりにならないように「偽特」を減らすような行動をとることになります。具体的には、特許性判断基準を厳しくして、特許の見込みの低い発明は出願しないように誘導する、などです。

そうしますと、特許査定率も上がり、クライアントも弁理士も万々歳となるような気もしますが、本当でしょうか?

このように「偽特」を減らす行動をとると「偽拒」が増えることになります。つまり、本来特許されるのに、出願されない(すなわち権利化されない)発明が増大します。

「偽拒」については出願しませんので、「偽拒」は通常はみえず、「偽拒」の有無は出願時には問題とはなりません。

しかし、「偽拒」について、競合他社が自由実施し始めたり、競合他社が権利化してしまった場合には、「偽特」を減らす行動をしたことのリスクが、突如表出することになります。

したがって、「偽拒」を出願できる判断もしなければなりませんが、弁理士は上記の事情もあり、積極的には言えません。企業の知財部も同様かと思います。

結局、「偽拒」を出願する判断ができるのは、リスク判断ができる企業の経営層となるかと思います。

経営層が知財に積極的に関与している企業は、②「特」と「偽拒」を出願でき、知財部が孤立して知財活動をしている企業は、①「特」と「偽特」を出願することになるでしょうか。

現実的には、「偽特」と「偽拒」のバランスをとる(「偽特」を減らしすぎない、など)ことが必要と思います。そういう意味では、特許査定率を実務品質の基準とするのは危険と思います(もちろん、目安にはなりますが)。

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