2021年1月3日日曜日

陳腐化しないものについて

昨年末のニュースにありましたが、松原みきさんの「真夜中のドア」という曲が、spotifyのグローバルバイラルチャートで15日間くらい1位となっているようです(ちなみにspotifyがどういうものか知りません・・)。

 


今回、世界で聞かれることになったきっかけはTikTokで多くの人が使ったからのようです(ちなみにTikTokがどういうものか知りません・・).

この曲は1979年の確か11月ごろに発売された曲と思います。いわゆるベストテン番組では見かけることは少なかったと記憶しますが、ニューミュージックチャートでは3位くらいには入りましたので、ラジオではよくかかっておりました。 

1990年ごろ、レコード会社の友人が、女性ボーカルの研究をするから何曲か教えてくれと依頼がありましたので、何曲か紹介した曲の中にこの曲がありました。

友人はこの曲が一番気に入ったようで、AORのようだ、ストリングスが綺麗、といっておりました(その後、この曲に寄せた曲が作られたかは、ここではいいません。)

残念なことに2004年に松原みきさんはがんのため亡くなりましたが、当時の2ちゃんねるの芸スポにスレが立って、多くの人がその死を惜しんでおりました。

当時は2スレッドの制限がありましたが、荒らされることもなく短時間で2スレッドは消化され、「真夜中のドア」が多くの日本人の記憶にあることが再確認できました。

歌手の方がなくなると、その曲も時間とともに忘れられてしまうのがつらいところですが、そうはなりませんでした。

2007、8年ごろYoutubeにアップされた「真夜中のドア」は5~10年かけて1000万回再生を超え、そのコメント欄はほぼ外国からのコメントでした(ちなみにこの動画は著作権者の申し立てにより消されました)

なぜ、この曲を外国の人が知ったかといえば、vaporwaveやフューチャーファンクで使われたことが発端となったようです(ちなみにvaporwaveがどういうものか知りません・・).

この曲が外国の方にうけいられた要因を分析するのも野暮と思いますが、その理由には、松原みきさんはデビュー前に米軍キャンプを回ってジャズを歌っていた方ですので、外国人の心に訴える歌唱テクニックがあったと思っております。 

前置きが長くなりましたが、音楽のような著作物は時間の経過による陳腐化がない場合があることが今回の件で再確認できました。著作物の時間の経過による陳腐化が少ない理由としては、著作物は人間の情緒に訴えるものであるからと思います。

私が専門とする工学につきましては、時間とともに陳腐化する傾向があり、機械は陳腐化のスピードは遅い方ですが、情報通信などは数年で古い技術となったります。40年前の技術を今使えるかといえば、使うことはないと思います。

とはいえ、この技術の陳腐化というものは、今後やっかいな問題となると思います。SDGsが最近もてはやされておりますが、これによると製品の使い捨てなどもってのほかとなります。

したがって、製品については、今後長寿命化させる必要がでてまいると思います。家であれば最低100年、自動車は50年、その他の電気製品も数10年は修理しながら使い続けることが必要となるのではないでしょうか 。

ただし、製品の性能を技術にふってしまいますと、製品寿命が来る前に陳腐化し、捨てたくなってしまいます。

そうしますと、製品の長寿命化をはかるためには、陳腐化しにくい性能を加えてあげる必要があると思います。その一つに情緒的性能があるのではないでしょうか。

情緒的性能とは、人間の五感を通して人間の心理に影響を与える性能となると思います。具体的にはどうかといえば、私にもわかりませんので、今後研究してゆきたいと思います。

2020年12月20日日曜日

認知バイアスについて

先日ネットを見ておりましたら、「事後諸葛亮」という用語を見かけました。

言葉の意味としては、

「「諸葛亮」というのは三国志で有名な、中国実在した軍師であり、知恵のある人物・策士として後世に知られている。

世の中には事が起こった後になって知識をひけらかし、「こうすればよかっただろう」と策を示してくる人がいる。このような人物をして、諸葛亮名前を使って「事後諸葛亮」と呼ぶ。プロや当事者でも事前の予想ができない、または予想が難しい出来事への対応について、「これしかなかっただろう」と後になってから物申す人に対してよく使われる。」

ということのようです。

ニコニコ大百科(仮)からの引用です↓

https://dic.nicovideo.jp/a/%E4%BA%8B%E5%BE%8C%E8%AB%B8%E8%91%9B%E4%BA%AE

中国のスラングのようですが、なかなか使い勝手のよい言葉です。

私は、過去の事例分析がきらいなのですが、それは、やはり自分が事後諸葛亮化してしまうからです。

経営学も、学問なのか、事後諸葛亮なのかわからない部分もあります。例えば、ワークマンが成功した理由について様々なビジネス本が出ておりますが、これは事後諸葛亮なのではないか、と疑ってしまいますので、最近はビジネス書も読まなくなりました。

あと、かけだしのコンサルタントが、自分の宣伝のために、「私は、・・・を予想していた!」などと、SNSで自分を大げさ宣伝してしまったりしますが、これも事後諸葛亮っぽいので止めた方がよいと思います。 

さて、この事後諸葛亮というのは、どういう現象なのかというと、上記ニコニコ大百科(仮)よれば、後知恵バイアスというものだそうです。

弁理士には見逃せないキーワードが出てまいりました・・・。

では、後知恵バイアスとは何かといえば、

「物事が起きてしまった後に、それが予測可であったと判断する傾向。「そんなことだろうと思った」と、まるで予め知っていたかのように振舞う心理的傾向をす。事後の後にされる結果論は、後知恵バイアスの典的な例である。

上記の例で説明するならば、”離婚の原因が旦那浮気である”という部分に後知恵バイアスがかかっている。Aさん情報がなければ、Bさんは浮気離婚の原因だと予測することができないからだ。普通であれば"さんが浮気した可性"も十分あり得るはずなのである。しかし「旦那浮気していた」ということを知った途端に疑念が確信に変わり、「Aさんに教えて貰う前から旦那浮気していると知っていた」かのように振る舞ってしまう。そして”原因を予測できていた”と錯覚し、満足感や優越感に浸ってしまうのである。

もし仮に本当に離婚の原因が浮気だったとして、そればかりにを向けて旦那批判するのは、やはり後知恵バイアスがかかっていると言える。旦那浮気した理由が、旦那が一生懸命働いているのに給料が上がらず、さんが旦那に日頃から罵倒を浴びせていたからかもしれない。そのストレスから逃れるために旦那浮気に走ったのかもしれない。そういった可性を考慮せずに旦那の方ばかりを批判するのは、偏に「旦那浮気した」という後知恵(バイアス)がしているからなのである。」

 ということのようです。

ニコニコ大百科(仮)からの引用です↓

https://dic.nicovideo.jp/a/%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%82%B9

後知恵バイアスが問題となるのは、発明の進歩性判断の局面です。拒絶理由を読みますと、後知恵バイアスとしか思えない理由が通知されることが多々あります。

この後知恵バイアスに対する反論は大変です。これは、後知恵バイアスは審査官の認知的バイアスによるものですので、反論した場合には、審査官の認知に対する批判も、いやですが、記載しなければならないからです。 

これは、技術の話でもなく論理の話でもなく、審査官の心理的な話ですので、非常に苦手です(やり手の弁護士さんでしたら得意かもしれませんが・・・。)

上記のように、審査官が、後知恵バイアスにより、満足感や優越感に浸ってしまった場合には、それを否定することは、審査官に不服感や劣等感を与えることになりますので、審査官も人間であることから心理的な拒絶反応を示すのではないでしょうか。

現実的には、審査官の説得をあきらめ、不服審判に進んで、審査する人を審判官に変えてもらう、というのが消極的な対応となります。 

私個人としましては、特許審査はAIに置き換えてゆく方がよいのかな・・・と思います。AIは人間ではありませんので、心もなく、認知バイアスがありません。したがって、進歩性判断の公平性は高くなると思います。

ということで、認知バイアスには気を付けようという話でした。

2020年12月11日金曜日

自分の論文を見返す

先日投稿した論文ですが、査読を開始するとの連絡がありました。

査読を通れば来年前半には公開され、通りませんでしたら、仕方がありませんので、日本マーケティング学会のワーキングペーパー送りとなります。

日本マーケティング学会のワーキングペーパーとして2件ほど公開しておりますが、そういえば、最近まったく見ておりませんでしたので、確認してみました。

一つ目の論文は

マーケティング・プロセスへの特許情報の活用について

となります。 総ダウンロード数122、総閲覧数301となっております。ダウンロードや閲覧いただいた方、まことにありがとうございます。

この論文は2012年ごろに書きましたので、ちょうどMOTを修了したての頃に作成したものです。したがって、技術経営の勘がある頃でした。

この論文のよいところは、マーケティングプロセスがまとめられているところです。これは農工大MOTのマーケティング概論の講義資料をまとめたものですので、内容はなかなかよいです(私の力ではありませんが・・・)。

私もたまにこの部分は復習がてら見返すことがあります。

マーケティングプロセスに特許情報を無理やり当てはめているのが、図7です。この図からわかるように、 なかなか難しいことになっております。

また、特許情報からは、「品質」,「価格」,「理念」,「ビジョン」,「利益」、「売上」、「顧客ニーズ」等の抽象的な情報はとれませんので、このあたりが、マーケティングプロセスへの特許情報適用の限界となります。

(なお、品質や顧客ニーズについては、この後の論文で考慮できるようになりました。)

そうしますと、かなり限定的な分析となりますが、無理せず、一般のマーケティング情報も合わせて用いればよいのかと思います。この論文を書いた時には、特許情報原理主義者でしたので、そこまでは考えませんでした。

環境分析の結果が図11となりますが、今の自分でしたらどういう図を作成するかなと考えますと、多分、IPランドスケープの本から適当にもってくることになるでしょうか。

この図のよくないところは、分析にFIを使用していることと、作成に特許マップソフトを使用しているところです。これでは、特許実務に慣れた人でないと、図の意味を理解できないことになります。 

今見ても面白いのが図14です。セグメンテーションとターゲティングをアンゾフのマトリクスを使って、一つの図に表現しています。結構すごいと思いますが、どなたか褒めてくださいませんでしょうか・・・

一方、まったく手付かずなのが、ポジショニングとミクロ分析となります。このあたりは、QFDと多空間デザインモデルを使用すれば、処理できるかもしれません。 

ということで、IPランドスケープやQFDなど、最近の知見を使用して、マーケティングプロセスを再考してみるのもよいかもしれません。来年の知財ネタの一つにできそうです。

2020年12月5日土曜日

電気自動車に思うこと。

2030年代半ばに電動車のみとする日本政府の方針が検討されているようです。

電気自動車といえば、私がMOTに通っていた10年前から、いろいろ議論がありました。

10年前の予想としては、ガソリン車はすり合わせ構造、電気自動車はモジュール構造ということで、日本は不利になり、中国は有利になるという感じでした。

そして、BYDのような新興企業が成長し、 タタのような廉価な自動車の電気自動車バージョンが、破壊的イノベーションとして市場を席巻し始めるだろう、というような予想がされておりました。

10年後の答え合わせとしては、上記のような事態は生じず、ガソリン車があいかわらずシェアの上位を占めております。 

ということで、ここで電気自動車がどうなるか、予想をしてもおそらく当たりませんので、予想はしないことにします。

とはいえ、上記は政府の方針となりますので、電動車のみの未来がくることは、今度は確実といえるかと思います。

一つ疑問なのが、電動車を増やした場合、電力はどうするのだろうということです。

今の発電量では足りませんので、発電所を増設する必要がありますが、火力はつくれず、再生可能エネルギーは当てにならずということで、電力が足りません。

中国や米国のように、最新技術にアレルギーのない国は、新型原子力発電所の増設でローコストの電力供給を可能とすると思います。

中国から電気を買うという考えもありますが、安全保障上好ましくありません。

さらに、再生可能エネルギーの高い電気で車を動かそうとした場合には、物流にコストがかかりすぎ、日本の国際競争力も低くなると思います。 

という難しい問題は政府に任せるとして、将来の電気自動車はどうなるか勝手に予想したいと思います。

おそらく、将来の電気自動車は移動手段というより、アンドロイドに近くなるのではないでしょうか。

例えば、牛乳が切れた場合には、電気自動車が近くのイオンに牛乳を買いに行ってくれる、とか、駅で雨に降られた場合には、駅まで迎えに来てくれる、などです。

このような場合、人間が運転する必要はありませんので、無人での移動となります。道路上の車の半分くらいが無人の移動となっているのではないでしょうか。

あと、自動車事故が起きなくなりますので、エアバック等の安全装備が不要となり、衝突安全性も不要となります。したがってシャシーはFRPとか、軽い材料で十分となるかと思います。

自動車損害保険も不要となり、自動車免許も不要となります。

まあこうなると、そもそも自動車を所有する意味もなくなりますので、よく言われるように、共有物になってゆくのかなと思います。

私としましては、ガソリン車に乗れるのがあと10年と区切られてしまいましたので、最後にSR400あたりのバイクでも買って、内燃機関の最後を見送りたいと思います。

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