弁理士は、弁理士会の研修を受講して、所定の単位数を取得しないと、懲戒となってしまうのですが、先日、掲題の研修を見つけました。
その研修を受けておりませんので、内容はわからないのですが、日本の特許出願件数が少なすぎるのは同意です。
特許出願をなぜするかといえば、いろいろな説がありますが、個人的には、未来における事業領域の確保があると思います。
特許権をとれば、その権利範囲内で(まあ安全に)事業実施することができます。
逆に特許がありませんと、誰のものかわからない土地に、ビルを建てて商売するようなもので、最悪事業を停止することになるかもしれません。
したがって、特許出願が足りませんと、5年、10年後に安心して事業を行える領域がなくなり、商売に支障が出ることになります。
といっても、数十年前は日本も特許出願を盛んに行っていましたので、どうしてこうなってしまったかといえば、2つの理由が考えられます。
一つは、コストカット重視の企業が増えたことがあると思います。バブル崩壊以降、日本企業はリストラを進めましたが、その中で、コストカットすることはよいことだという意識が強くなったと思います。
コストカットのよいところは効果がわかりやすいことです。例えば、特許出願を1件やめれば100万円コストカットできたと成果を主張できます。
一方、特許出願1件やめたことによる、将来事業の喪失については、誰にも定量的にはわかりませんので、特許を増やすことによる成果は主張しにくいものがあります。
といっても、このあたりは、10年後、特許を増やした企業は生き残り、特許を減らした企業はじり貧となると思いますので、コストカットの弊害みたいなものは、将来明らかになると思います。
二つ目は、特許庁による出願件数抑制策があると思います。これは、出願件数が多いと特許庁の処理能力を超えてしまいますので、出願件数抑制のお願いを以前は行っておりました。
例えば、ノウハウは出願しないように、とか、価値ある特許のみ出願するように、という話となります。
ノウハウは出願しないようにといいますが、他社がそのノウハウを特許化した場合には、面倒なことになります。また、価値ある特許というのも結果論でして、出願時に正確に価値を算定することは不可能となります。
そうしますと、この企業のコストカットと特許庁の抑制策は、なかなかマッチングが良い、すなわち、企業は経費削減できるし、特許庁は出願件数を減らすことができるという相乗効果で、日本の特許出願件数は減る方向となり、今もその考えが強いのではないかと思います。
このように、企業のコスト削減と特許庁の対応能力という二つの要因が、日本の特許出願件数の減少につながっていると考えられます。しかし、これが将来のビジネスの安定と発展に対するリスクを高めていることを認識することが重要です。特許出願がビジネスの将来に与える影響を理解し、その価値を正しく評価する必要があります。