2013年9月21日土曜日

代替・補完・相乗について

私は妹尾堅一郎先生の講座が好きで、機会があるとよく聞きにゆきます。

先生は、場の雰囲気を和ませるためか、受講者に、「物の関係にはどういうものがあるか?」と意地悪な質問をよくします。

多くの人は答えられないのですが、先生によれば、「代替」、「補完」、「相乗」の3つの関係があるとのことです。

「代替」とは、コーヒーと紅茶の関係のようなものであり、要はどちらか一方が選ばれる関係といえるでしょうか。

ビジネスの場で「代替」関係は、例えば、ニコンとキャノンのような競合関係へつながる場合があり、少々よろしくない関係とも感じます。

「補完」とは、コーヒーとミルクのような関係と言えます。つまり、互いの足りない部分を補い合う関係といえます。

仕事をしていると、この「補完」関係というものを非常に意識することになります。

私が仕事を一緒にさせていただく相手は、特許調査の専門家や弁護士や大学の先生など、私の技能を提供できるとともに、相手の技能を利用させていただける相手となります。

逆に、他の弁理士とは「代替」関係にありますので、一緒に仕事をすることはあまりありません・・・。

ただ、補完関係にあると安心していると、いつの間にか代替関係に変化していることもあり注意が必要です。

例えば、特許事務所は主に企業の知財部から仕事をいただいています。つまり、両者は補完関係にあります。

しかし、近年知財部門を分社化する動きもあり、この場合、知財部門の会社は、特許出願関係のビジネスを始めることになります。

そうすると、特許事務所とは、「代替」関係になり、ライバル関係に変化することになります。怖いですね。

最後に、「相乗」とは、コーヒーとタバコのような関係です。私は今はタバコは吸いませんが、学生時代は研究室に篭って、コーヒーとタバコで息抜きをしていました。

「相乗」関係とは、なかなかいい例がないとも思いましたが、例えば、男女の結婚などは、場合によっては相乗関係といえると思います・・・。

特許の世界では「相乗」は非常に重要でして、発明の進歩性を主張するために、構成要素の組み合わせにより生じる相乗効果を主張することがよく行われます。

「相乗」関係はなかなか難しいですが、「補完」関係をいかにうまく作れるかが、いろいろな仕事のコツだと思います。

2013年9月16日月曜日

パテントマップについて

特許情報解析の方法の一つにパテントマップがあります。

パテントマップは、数百~数千件の特許出願から、キーワードや特許分類を抽出して図表化するものです。

私もこの業界に入ってパテントマップというものを初めて見たのですが、正直何を示しているのかよくわからない、というのが最初の感想でした。

出願人別の出願件数ランキングぐらいでしたら、あの会社の出願が多い、というレベルでの理解は可能です。

しかし、軸にIPC、Fタームなどの特許分類をとった場合には、特許分類が何を示しているのかわからず、大変理解が難しくなります。

さらに、近年ではテキストマイニング等の言語処理技術を利用して、分布図や等高線図のような図を出力するソフトがありますが、 こういう図から何を読み取るべきか非常に悩みます。

そこで、パテントマップを理解するために、自腹でパテントマップソフトを購入し、自分でつくってみることにしました。

自分でつくると、パテントマップを作る過程の試行錯誤も知識として加わりますので、最終的なパテントマップの意味内容がかなり理解できるようになりました。

ただし、これではクライアントにパテントマップを見せるときに困ります。自分は理解できていますが、クライアントは理解できないという事態に繋がります。

そこで現在はクライアントと一緒にパテントマップを作成するようにしています。

パテントマップ作成の試行錯誤を共有することによりパテントマップの理解も深まりますし、将来的にはパテントマップを自社独自で作成できるようにもなります。

もう一つの考え方としては、ソフトに頼らずマニュアルでパテントマップを作ることがあると思います。

従来のパテントマップは、特許明細書からキーワードや特許分類を自動的・機械的に抽出して出力するだけですので、特許明細書に書かれている技術内容を正確に抽出できるわけではありません。

したがって、人間が1件1件明細書を読み、キーワードをマニュアルで抽出してパテントマップを作成すれば、より理解しやすいマップを作れると思います。

しかし、この作業は多大な労力が必要となるデメリットがあります。この辺りは、あきらめて地道に作業するか、情報処理技術の進歩を待つしかなさそうです。

2013年9月6日金曜日

特許調査テクニック(研修備忘録)

弁理士には法で定められた研修制度というものがありまして、所定の期間で所定の単位を取得しなければなりません。

私も月1回程度研修に参加してるのですが、時間が経つと勉強したことを忘れてしまうことが多いため、研修で気付いたことを備忘録的に書きたいと思います。

なお、以下の記載には、私の記憶違いや認識の誤りの部分もあるかと思いますので、さらに詳しく知りたい方は、講師の出されている書籍や論文をお読みいただければと思います。

本日の研修は、ランドンIP合同会社の野崎さんが講師の「弁理士が知っておきたい特許調査テクニック」でした。

先行技術調査では、ターゲットとなる特許文献を収集するために、検索式を考える必要があります。検索式を構築するにあたり講義では、特許検索マトリクスの作成が提案されておりました。

特許検索マトリクスは、横軸に調査対象の背景技術、課題・目的、技術的特徴・解決手段を配し、縦軸に、検索キーワード、キーワード同義語、IPC、FI、Fタームが配された表です。

つまり、特許検索マトリクスの横軸は異なる概念が配され、縦軸には同じ概念が配されることになります。

そして、特許検索マトリクスの空欄に、必要な情報を記入してゆきます。記入が終わりましたら、記載内容を横軸方向に「and」をとり、縦軸方向に「or」をとるようにして(つまり、同じ概念はor、異なる概念はand)、検索式を幾つか構築してゆきます。

このマトリクスの良い所は、横軸は異なる概念が配され、縦軸には同じ概念が配されるため、検索式の「and」、「or」の取り方を間違わなくて済むところです。

「and」、「or」の取り方を間違えますと、ノイズや漏れが多くなってしまいますが、 特許検索マトリクスを使用しますと、機械的に「and」、「or」をとれますので、アウトプットにブレが生じにくいと思います。

また、私は特許検索をする場合には、特許分類(IPC、FI、Fターム)を主に使用します。それはキーワードを使用しますと、検索モレが多くなるという恐怖感があるからです。

今回の講義では、キーワードを使用する際のテクニックについても教えていただきました。キーワードを使用する際には、同義語もキーワードとして使用し、検索式では「or」をとればよいとのことです。

同義語については、Cyclone、JSTシソーラス、かんたん特許検索、J-GLOBALなどの無料のサイトを利用すれば、ある程度機械的に抽出できるとのことでした。

また、先行技術調査についてはユーザーが主体的に行い、他の難易度の高い特許調査をサーチャーが行うような役割分担を提案されていましたが、これには私も全く同意です。

以上、備忘録でした。

2013年9月3日火曜日

組織は規程に従う

おかげさまで、現在何社かの企業で「御社の知財部(登録商標です)」サービスを提供させていただいております。

提供するサービスの内容はクライアント企業の状況により異なりますが、サービスのひとつの軸として知財管理規程(及びその他規程類)の策定があります。

知財管理規程は、社内の知財の取り扱いを就業規則などと同様に条文にしてまとめたものと考えていただければ、イメージしやすいと思います。

提案する知財管理規程はベースとなる規程がありますが、そのままでは企業の実情に合わない場合がありますので、実情をヒアリングしながら微修正を加え完成してゆきます。

例えば、知財管理規程には、各規定を実行する担当者や責任者を明確にして記載する必要があります。そうしないと、せっかく規程を作っても、規程が実行されないということになりかねません。

しかし、 社内にそうした適任者がいない場合には、規程の記載を変更して規程が社内で回せるように修正します。

そうすることにより、会社の組織にマッチした知財管理規程が策定できることになります。

とはいえ、知財管理規程の修正程度では足らない場合もあり、その場合には、会社の方の組織を多少変更してもらう必要があります。例えば、知財責任者や知財担当者の任命は必須となります。

しかし、組織変更は簡単に行えるものではありませんので、最終的には社長の判断となります。したがって、知財管理規程の重要性を経営者に理解していただく必要があります。

経営学では、組織は戦略に従う、という言葉が有名ですが、 知財に関しては、組織は知財管理規程に従う、とでもなるでしょうか。

いずれにせよ、知財活動を社内に定着させる手段として、知財管理に適する組織を構築するというもの一つの有効な手段と思います。

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