部分意匠と並んで活用したい制度が関連意匠制度です。
本意匠と類似する関連意匠を複数登録することにより、意匠の類似の範囲が明確となり、他社の意匠登録を排除する効果が期待できます。
関連意匠制度を利用するにあたり、悩むのが本意匠の選択です。実際に使用する製品の意匠を本意匠とするのが一般的ですが、 他社の意匠登録を排除するためには、関連意匠を数多く登録できる意匠を本意匠とすることも有効です。
さて、本意匠と関連意匠は類似する意匠であることが必要ですが、どのようなバリエーションとすればよいでしょうか。
意匠の類否は前にも述べましたように、意匠の要部認定が大きな影響を与えますので、意匠の創作性を有するコアの部分を共通な形状等にし、他の部分の形状等を変化させるバリエーションとすることが必要と思われます。
こうすることにより、意匠のコアの部分が明確となりますので、その他些細な部分が意匠の類否判断に影響を与えることが少なくなり、意匠の創作性を有する部分が的確に保護されることになります。
一点注意が必要なのは、関連意匠出願を行うことにより、意匠の要部は明確となりますが、それがその後の権利行使に影響を与える場合があります。
携帯用魔法瓶事件(H24.6.21 大阪地裁 平成23年(ワ)9600)では、原告が関連意匠から想定される要部以外の部分を意匠の要部として主張することが認められず、意匠は非類似、非侵害とされてしまいました。
このあたりは禁反言の考え方に似ているともいえます。
最後に、意匠制度についていろいろ紹介させていただきましたが、実際のところ、部分意匠や関連意匠が今回、前回と書いたように取り扱われるかは不明な部分もあります。
意匠の類否等の法解釈は訴訟を通じて判決内容から固まってゆく側面が大きいのですが、日本では意匠に関する訴訟はとても少ないので、結局、特許庁の審査基準からいろいろと推測してゆくしかありません。
日本では裁判を起こすことはあまりよくないイメージが有りますが、法に対する議論を活発化するという意味では、裁判制度を積極的に利用することも必要と思います。アメリカのようになると行き過ぎとか思いますが。
さらに、意匠の類否については解釈が難しい部分もありますので、意匠出願のみならず、特許出願も併用して技術的な保護を求めることも、保険として必要と思います。
2013年10月18日金曜日
2013年10月12日土曜日
部分意匠について
部分意匠とは、ある製品の特定の箇所について権利化したい場合に用いる出願制度です。権利化したい部分を実線で描き、他の部分を点線で描いて出願します。
こうすることにより、製品の特定の部分の意匠に関して類否が判断されることになりますので、意匠全体が非類似の場合でも、特定の部分の意匠を保護することが可能となります。
例えば、スマートフォンの画面を意匠で保護したい場合には、外形を点線で描き、画面を実線で描き出願します。このような出願を「クレーム型」と呼ぶそうです。
私は、部分意匠といえばこの「クレーム型」と考えていたのですが、その他に「ディスクレーム型」というのもあるそうです。
例えば、スマートフォンの外形を実線で描き、画面を点線で描いて出願をする場合はディスクレーム型となります。これによれば、画面の形にかかわらず外形が保護されますので、外形に特徴がある場合には、ディスクレーム型が有効です。
スマートフォンの外形のみで意匠出願すればよいかと思いますが、例えば、画面形状に特徴があるスマートフォンが他社により製造された場合、画面形状が意匠の類否に影響を与え、意匠が非類似と判断されてしまう可能性があります(利用関係で権利行使できる場合もあります)。
したがって、ディスクレーム型の出願を行うことにより、いかなる画面形状に対するスマートフォンに対しても外形が類似していれば権利行使できることになります。
なお、ディスクレーム型の出願は審査で拒絶される可能性が高いため、特に新規な製品について有効な出願といえます。
ということで、新規な製品を販売する場合には、次のような意匠出願を組み合わせることが、権利行使のためには有効と思われます。
(1)全体意匠(製品の意匠をそのまま保護)
(2)部分意匠(ディスクレーム型:外形形状の保護)
(3)部分意匠(クレーム型:特徴的な部分の保護)
まとめとしましては、部分意匠制度とは、特定の部分を審査して欲しい場合に利用する制度であるとともに、特定の部分を審査してほしくない場合にも利用できる制度といえます。
したがって、意匠出願の際には、全体と部分の組み合わせをいろいろ考えて出願することも今後は必要と思います。
こうすることにより、製品の特定の部分の意匠に関して類否が判断されることになりますので、意匠全体が非類似の場合でも、特定の部分の意匠を保護することが可能となります。
例えば、スマートフォンの画面を意匠で保護したい場合には、外形を点線で描き、画面を実線で描き出願します。このような出願を「クレーム型」と呼ぶそうです。
私は、部分意匠といえばこの「クレーム型」と考えていたのですが、その他に「ディスクレーム型」というのもあるそうです。
例えば、スマートフォンの外形を実線で描き、画面を点線で描いて出願をする場合はディスクレーム型となります。これによれば、画面の形にかかわらず外形が保護されますので、外形に特徴がある場合には、ディスクレーム型が有効です。
スマートフォンの外形のみで意匠出願すればよいかと思いますが、例えば、画面形状に特徴があるスマートフォンが他社により製造された場合、画面形状が意匠の類否に影響を与え、意匠が非類似と判断されてしまう可能性があります(利用関係で権利行使できる場合もあります)。
したがって、ディスクレーム型の出願を行うことにより、いかなる画面形状に対するスマートフォンに対しても外形が類似していれば権利行使できることになります。
なお、ディスクレーム型の出願は審査で拒絶される可能性が高いため、特に新規な製品について有効な出願といえます。
ということで、新規な製品を販売する場合には、次のような意匠出願を組み合わせることが、権利行使のためには有効と思われます。
(1)全体意匠(製品の意匠をそのまま保護)
(2)部分意匠(ディスクレーム型:外形形状の保護)
(3)部分意匠(クレーム型:特徴的な部分の保護)
まとめとしましては、部分意匠制度とは、特定の部分を審査して欲しい場合に利用する制度であるとともに、特定の部分を審査してほしくない場合にも利用できる制度といえます。
したがって、意匠出願の際には、全体と部分の組み合わせをいろいろ考えて出願することも今後は必要と思います。
2013年10月10日木曜日
意匠出願について
私は主に特許の仕事をしているのですが、時たま意匠権侵害の相談を受けることがあります。
その場合、登録意匠と侵害しているであろう実際の製品とを比較して、意匠の類否を判断すればよいと思いますが、実はそうではありません。
意匠の類否を判断する前に、まず意匠の要部を認定する必要があります。意匠の要部とは、 創作が特徴的な部分とか、見る人が最も注意を引かれる部分と言われる特定の部分です。
意匠の類否には、この要部の形状や模様等が大きな影響を与えますので、登録意匠のみならず、公知意匠を参照して要部を認定してゆかなければなりません。
そうすると、相談されたその場で、2つのデザインを比較して意匠の類否や意匠権侵害の判断をするということは、非常に難しいといえます。
相談者は、デザインは目で見て明らかであるから意匠の類否の判断は容易であると思い違いをしている場合もありますので、その場合は少々申し訳ない気持ちにもなります。
意匠の登録率は約80%といわれ比較的簡単に権利化されるのですが、いざ権利行使をしようとすると、 このような意匠特有の難しい問題がでてくることになります。
そういう観点からは、意匠の要部というものを出願時にある程度、出願人の側で確定して出願すれば、意匠の要部の認定、ひいては、意匠の類否の判断を、出願人の想定通りにもってゆくことが可能となり、権利行使が容易になります。
そういう出願法としては、部分意匠出願制度と、関連意匠出願制度の利用が考えられます。
部分意匠(ぶぶんいしょう)とは、物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分を保護するための意匠のこと。たとえば、コップの縁の部分に特徴あるデザインの場合、そのコップの縁の部分について部分意匠を受けることができる(wiki)。
関連意匠制度では、登録を受けようとする意匠に類似する関連意匠にも、一般の意匠の権利とほぼ同様の効力が与えられる(wiki)。
先日、部分意匠及び関連意匠の活用法についての研修を受けてきましたので、次回は具体的な出願法について書きたいと思います。
その場合、登録意匠と侵害しているであろう実際の製品とを比較して、意匠の類否を判断すればよいと思いますが、実はそうではありません。
意匠の類否を判断する前に、まず意匠の要部を認定する必要があります。意匠の要部とは、 創作が特徴的な部分とか、見る人が最も注意を引かれる部分と言われる特定の部分です。
意匠の類否には、この要部の形状や模様等が大きな影響を与えますので、登録意匠のみならず、公知意匠を参照して要部を認定してゆかなければなりません。
そうすると、相談されたその場で、2つのデザインを比較して意匠の類否や意匠権侵害の判断をするということは、非常に難しいといえます。
相談者は、デザインは目で見て明らかであるから意匠の類否の判断は容易であると思い違いをしている場合もありますので、その場合は少々申し訳ない気持ちにもなります。
意匠の登録率は約80%といわれ比較的簡単に権利化されるのですが、いざ権利行使をしようとすると、 このような意匠特有の難しい問題がでてくることになります。
そういう観点からは、意匠の要部というものを出願時にある程度、出願人の側で確定して出願すれば、意匠の要部の認定、ひいては、意匠の類否の判断を、出願人の想定通りにもってゆくことが可能となり、権利行使が容易になります。
そういう出願法としては、部分意匠出願制度と、関連意匠出願制度の利用が考えられます。
部分意匠(ぶぶんいしょう)とは、物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分を保護するための意匠のこと。たとえば、コップの縁の部分に特徴あるデザインの場合、そのコップの縁の部分について部分意匠を受けることができる(wiki)。
関連意匠制度では、登録を受けようとする意匠に類似する関連意匠にも、一般の意匠の権利とほぼ同様の効力が与えられる(wiki)。
先日、部分意匠及び関連意匠の活用法についての研修を受けてきましたので、次回は具体的な出願法について書きたいと思います。
2013年10月4日金曜日
TPPと知財について
最近ニュースでTPPが話題になっています。wikiによればTPPとは以下の意味のようです。
環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership,(トランスパシフィックパートナーシップ) TPP,環太平洋経済協定、環太平洋連携協定、環太平洋経済連携協定、環太平洋パートナーシップ協定)は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) である。
経済貿易協定といえば、一昔前はGATTやWTOの場で話し合われて来ましたが、多数の国の協議では利害が衝突しやすく、近年は、利害を調整しやすい二国間や地域別の協定を結ぶことが盛んに行われているようです。
さて、TPPの話を聞くと私はどうしてもGATTのウルグアイ・ラウンドのことを思い出してしまいます。
ウルグアイ・ラウンドとは、1986年にウルグアイで交渉開始が宣言された、GATT(関税貿易一般協定)の多角的貿易交渉のこと。自由貿易の拡大を目指して新しい貿易ルールを作る交渉である。期間は4年間で交渉は15項目。GATTは2国間に貿易問題が起きたとき仲裁する立場だったが、貿易の形も次第に複雑化し、複数国の間で利害問題が浮上してきたため、多角的貿易交渉(ラウンド)へ移行していく。ウルグアイラウンドでは特許権、商標権、著作権といった知的所有権の取り扱いから、旅行、金融、情報通信など、物品をともなわないサービス貿易の国際的取引の自由化、農産物の例外なき関税化について交渉した。124カ国が参加したこの会議は難航をきわめ、94年に合意に至った(ASCII.jpデジタル用語辞典) 。
今思い返せば、このウルグアイ・ラウンドが、日本のいわゆる失われた20年を創りだした一つの要因とも思います。
この交渉では様々な協定が成立したのですが、例えば、TRIPS協定が成立したものの一つです。
TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)は、1994年に作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の一部(附属書1c)を成す知的財産に関する条約である(wiki)。
この協定により、発展途上国も知的財産権の保護を実行あるものとする義務が生じましたので、プロパテント政策を推し進めるアメリカには有利に働き、その後のアメリカの復活の要因の一つとなりました。
また、TBT協定というのも成立しました。 TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定:Agreement on Technical Barriers to Trade)は、東京ラウンドにおいて1979年に「GATTスタンダードコード」として合意し、ウルグアイラウンドにおいて1994年にTBT協定として改定合意されて、1995年に世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO設立協定)に包含した標準化に関する条約である(wiki)。
この協定によって、規格を国際規格(国際標準)に整合化する義務が生じました。このため、日本のたて型洗濯機が輸出できなくなったりしました。
国際標準の策定についてはヨーロッパ勢が優位に立っておりますので、ヨーロッパに有利な標準が成立しやすく、ヨーロッパの存在感の向上に寄与しました。
さて、日本といえば何をやっていたかというと、もっぱら「コメの自由化阻止」でした。ウルグアイ・ラウンド対策として農村にお金がばらまかれ、余ったお金で温泉センターが乱立したりもしました。
ウルグアイ・ラウンドではコメの完全自由化は阻止されましたので、目的は達成されたかもしれませんが、国益という観点では、TRIPS協定やTBT協定をねじ込んだアメリカやヨーロッパにしてやられた感があると思います。
今回のTPPの件でも農業の保護が主要な論点となると、ウルグアイ・ラウンドの二の舞いとなる恐れがあります。
やはり、日本として今後発展してゆく分野は何かを見定め、交渉に力を入れてゆくことが必要となると思います。
前回と違い今回は知財も大きなトピックとなっておりますので、交渉の行方を見守りたいと思います。
環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership,(トランスパシフィックパートナーシップ) TPP,環太平洋経済協定、環太平洋連携協定、環太平洋経済連携協定、環太平洋パートナーシップ協定)は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的とした多角的な経済連携協定 (EPA) である。
経済貿易協定といえば、一昔前はGATTやWTOの場で話し合われて来ましたが、多数の国の協議では利害が衝突しやすく、近年は、利害を調整しやすい二国間や地域別の協定を結ぶことが盛んに行われているようです。
さて、TPPの話を聞くと私はどうしてもGATTのウルグアイ・ラウンドのことを思い出してしまいます。
ウルグアイ・ラウンドとは、1986年にウルグアイで交渉開始が宣言された、GATT(関税貿易一般協定)の多角的貿易交渉のこと。自由貿易の拡大を目指して新しい貿易ルールを作る交渉である。期間は4年間で交渉は15項目。GATTは2国間に貿易問題が起きたとき仲裁する立場だったが、貿易の形も次第に複雑化し、複数国の間で利害問題が浮上してきたため、多角的貿易交渉(ラウンド)へ移行していく。ウルグアイラウンドでは特許権、商標権、著作権といった知的所有権の取り扱いから、旅行、金融、情報通信など、物品をともなわないサービス貿易の国際的取引の自由化、農産物の例外なき関税化について交渉した。124カ国が参加したこの会議は難航をきわめ、94年に合意に至った(ASCII.jpデジタル用語辞典) 。
今思い返せば、このウルグアイ・ラウンドが、日本のいわゆる失われた20年を創りだした一つの要因とも思います。
この交渉では様々な協定が成立したのですが、例えば、TRIPS協定が成立したものの一つです。
TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定:Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)は、1994年に作成された世界貿易機関を設立するマラケシュ協定の一部(附属書1c)を成す知的財産に関する条約である(wiki)。
この協定により、発展途上国も知的財産権の保護を実行あるものとする義務が生じましたので、プロパテント政策を推し進めるアメリカには有利に働き、その後のアメリカの復活の要因の一つとなりました。
また、TBT協定というのも成立しました。 TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定:Agreement on Technical Barriers to Trade)は、東京ラウンドにおいて1979年に「GATTスタンダードコード」として合意し、ウルグアイラウンドにおいて1994年にTBT協定として改定合意されて、1995年に世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO設立協定)に包含した標準化に関する条約である(wiki)。
この協定によって、規格を国際規格(国際標準)に整合化する義務が生じました。このため、日本のたて型洗濯機が輸出できなくなったりしました。
国際標準の策定についてはヨーロッパ勢が優位に立っておりますので、ヨーロッパに有利な標準が成立しやすく、ヨーロッパの存在感の向上に寄与しました。
さて、日本といえば何をやっていたかというと、もっぱら「コメの自由化阻止」でした。ウルグアイ・ラウンド対策として農村にお金がばらまかれ、余ったお金で温泉センターが乱立したりもしました。
ウルグアイ・ラウンドではコメの完全自由化は阻止されましたので、目的は達成されたかもしれませんが、国益という観点では、TRIPS協定やTBT協定をねじ込んだアメリカやヨーロッパにしてやられた感があると思います。
今回のTPPの件でも農業の保護が主要な論点となると、ウルグアイ・ラウンドの二の舞いとなる恐れがあります。
やはり、日本として今後発展してゆく分野は何かを見定め、交渉に力を入れてゆくことが必要となると思います。
前回と違い今回は知財も大きなトピックとなっておりますので、交渉の行方を見守りたいと思います。
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