2014年7月11日金曜日

知財診断について

以前、当ブログで切り餅事件をとりあげましたが、それに関連したニュースが報じられました。

株式会社きむら食品 民事再生法の適用を申請 負債49億3357万円
(帝国データバングホームページ:http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3948.html) 

2013年6月には、同業の越後製菓(株)(長岡市)から、切り餅をきれいに焼くための特許が侵害されたとして、製品の製造販売の差し止めおよび約45億 3000万円の損害賠償請求の訴訟を起こされたことや、過去の不適切な会計処理が判明したことで対外信用が悪化。資金繰りがひっ迫するなか、民事再生手続きによる再建を図ることとなった。(引用終わり)

特許権侵害訴訟が民事再生の直接の原因とは思いませんが、1つの要因となったことは間違いないと思われます。

訴えられるリスクといえば、差止による製造販売の禁止や損害賠償による金銭負担、多額の訴訟費用負担を考えてしまいますが、一番大きなリスクは、業務上の信用が失われて資金繰りが悪化することなのかもしれません。

特に、中小企業の場合には、資金繰りの悪化がそのまま企業の存亡に直結すると思われますので、何としてでも侵害訴訟に巻き込まれないよう、普段から準備しておく必要があると思います。

その手段として、弊社が中小企業で行っている支援の1つが「知財診断」です(宣伝となり申し訳ありませんが・・・)。

「知財診断」とは、製品の上市前に他社の知的財産権(特許、実案、意匠、商標、著作権) を侵害していないかすべてチェックすることをいいます(他にも診断する事項はありますが、ここでは割愛します)。

上市前に、他社の知財権のチェックを行いますので、製品を市場に出しても訴えられることはなく、安心して製品を市場に出せます。

侵害チェック作業については、特許事務所に依頼すればよいと思いますので、企業としては、上市の数ヶ月前に「知財診断」を行うことを義務付けるスケジュールを組めばよいと思います。

そして、「知財診断」の結果、大丈夫と判断できる製品のみ市場へ出す決定を、経営者がすることになります。

「知財診断」自体は、特許事務所に依頼するとそれなりの額となると思いますが、業務上の信用が失われる不利益に比べれば、大きな負担とはいえないでしょう。

「知財診断」を行なっていないのであれば、是非導入してみてはいかがでしょうか。

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私が著者として加わっている書籍が出版されました。

『知的財産イノベーション研究の諸相』(日本知財学会知財学ゼミナール編集委員会編), コンテンツ・シティ出版

知財学会の論文集ということで、10論文中の「5. 戦略的商品開発手法の開発―QFDと特許情報の融合―」を担当させていただいております。

ご注文はこちらへお願いいたします。 (MARUZEN & JUNKUDOネットストアHP

よろしくお願いいたします。

2014年7月8日火曜日

知財インフラについて

国民経済の発展にはインフラ整備が欠かせないとよくいわれます。

インフラとは、学校、病院、道路、港湾、工業用地、公営住宅、橋梁、鉄道路線、バス路線、上水道、下水道、電気、ガス、電話…等、社会基盤となる施設を示すとされます。

インフラを整備することにより、産業活動が活発となり、それらから得られる収益(税収)が増大する効果があります。

しかし、インフラ自体は収益を生むというよりは、むしろ経費が掛かる存在といえます。以前、熊しか走らない高速道路が北海道にありましたが、経済効果を生まないインフラは経費負担のみが重くのしかかることになります。

したがって、インフラを整備する場合には、そのインフラに乗っかる工場、ショッピングセンター、住宅団地等、具体的なビジネスを想定しなければなりません。

会社で行っている「御社の知財部」(登録商標)というサービスも、インフラ事業(いうなれば知財インフラの整備)に近いと最近感じています。

「御社の知財部」(登録商標)というサービスは、中小企業の知財管理規定の整備や、知財教育の実施、知財活動の運営の支援等を行っています。

これらは利益を直接生み出す活動というより、利益を生み出す活動をサポートする、いうなれば社内インフラを整備する活動といえます。

したがって、当社が構築する知財インフラの上に、うまくビジネスが乗っかれば、参入障壁形成の効果等により、収益が増大するという相乗効果が得られます。

一方、ビジネスとの合体に失敗すると、単なる経費を消耗するだけの不要な存在となってしまいます。よく、特許出願は無駄だ、という意見がありますが、これは、知財活動と事業のリンクがとれてなく、知財活動が自己目的化した場合に起きる現象と思います。

では、どうしたら知財インフラの上に、うまくビジネスが乗っかるのかといいますと、一般的な答えはないと思いますが、長期間継続的に知財活動を行いその方法を会社なりに学習してゆくしか方法はないと考えています。

当社では、料金を押さえて、その代り長期間の活動(数年以上)を前提に中小企業の知財活動を支援させていただいておりますが、これは、我々の方も学習する必要があるからです。

ということで、わが社も知財をやってみたいという会社様がありましたら、ぜひお声かけください。

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私が著者として加わっている書籍が出版されました。

『知的財産イノベーション研究の諸相』(日本知財学会知財学ゼミナール編集委員会編), コンテンツ・シティ出版

知財学会の論文集ということで、10論文中の「5. 戦略的商品開発手法の開発―QFDと特許情報の融合―」を担当させていただいております。
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よろしくお願いいたします。

2014年6月23日月曜日

著書出版のお知らせ。

私が著者として加わっている書籍が出版されました。

『知的財産イノベーション研究の諸相』(日本知財学会知財学ゼミナール編集委員会編), コンテンツ・シティ出版

知財学会の論文集ということで、10論文中の「5. 戦略的商品開発手法の開発―QFDと特許情報の融合―」を担当させていただいております。

少数出版・・のためか、どの本屋に置いていないようですので・・・、ネットからご注文いただければと思います。(ご注文はこちらへMARUZEN & JUNKUDOネットストアHP

よろしくお願いいたします。

追記)2014.6.28
アマゾンでも販売が7/3から開始されるようです。

(ご予約はこちらへ http://www.amazon.co.jp/dp/490686502X )

よろしくお願いいたします。

2014年6月14日土曜日

広い請求の範囲について

先日、某企業の知財部長の方の講演をお聞きする機会がありました。その中で出た話として、このようなものがありました。

知財部長さんのところに、部下が「とても広い請求項の記載で権利化できました!」と喜んで報告にきたそうです。

その知財部長さんは、「で、そのクレームで権利行使できるの?」と部下に一言いったそうです。なかなか厳しいお言葉です。

広いクレームで権利化しろ、とはよく言われることですし、弁理士も請求の範囲を記載する場合には、とりあえず広く書きます。狭いと先輩に怒られたりしますし・・・。

しかし、広いクレームは権利行使のときに無効にされやすいという問題があります。審査の結果、特許されたのだから、後で無効とされるのはおかしいと誰でも思います。

ただし、審査官は地球上すべての文献を調査できるものではなく、まれに調査漏れが生ずる場合があります。

したがって、時間とコストをかけて文献調査を行えば、無効の根拠となる資料を探し出すことも可能かと思います。

ある弁護士の方は1億円の調査費用があれば、大抵の特許は無効とできるとおっしゃってましたし、ある調査専門の弁理士の方は、世の中の特許の8割を無効にできる調査能力が自分にはある、とおっしゃってました(敵には回したくありませんね・・・)。

また、訴訟となると、判断主体が特許庁の審査官ではなく、裁判官となるため、同じ証拠でも、事実認定の相違により異なる判断がされる可能性もあります。

実際に、現在の侵害訴訟の原告勝訴率は2~3割程度であり、敗訴の原因として、権利が無効と判断されたケースが約半分となっており、権利の有効性は非常に厳しく判断されます。

そういう観点からすると、クレームの広さ、狭さは、実際の権利行使や権利の用途によって、いろいろ変えてみることも必要かと思います。

例えば、競合他社への牽制、威嚇にしか用いないのであれば、広いクレームでよいと思います。一方、侵害訴訟の可能性がある場合には、公知技術をほぼ含まないような狭いクレームの権利とする必要があると思います。

現実的には、複数の特許で広い、狭いの役割分担をさせることになるのかと思います。

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