2014年9月13日土曜日

ライバル不在の戦略について

芸能ネタで申し訳ありませんが、Perfumeが全米デビューするそうです。

日刊スポーツの記事
 http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20140909-1363803.html

この話で面白いと思ったのは、米国デビューに向けて新しい曲を特に作るのではなく、従来の曲を多少リミックスして販売する部分です。

従来の全米デビューといえば、アメリカの大物プロデューサーに曲作りやプロモーションを依頼し、アーティストは日本を離れアメリカに滞在してダンスや英語のレッスンをし、詩、曲、アピアランスはあくまでもアメリカ人好みとするのが一般的でした。

こういう戦略は経営学的には、レッドオーシャン戦略といわれます。

 

従来の音楽のレベルを緑の線とすれば、そのレベルに近づく、そして超えるように曲作りをし、ライバルを蹴落とすべく赤色の線のレベルを目指すのが、いわゆるレッドオーシャン戦略です。

ただし、日本人は英語が苦手ですし、アメリカ自体アーティストの層が厚いので、レッドオーシャン戦略を成功させるには、努力と運が必要となります。

一方、Perfumeについては、レッドオーシャン戦略を取らず、ブルーオーシャン戦略を採っているように見えます。

つまり、英語はあきらめ、アメリカ人好みの曲作りをあきらめるが、従来にない新たな価値要因(テクノロジーやダンス)などを付加することにより、全体として差別化を図る戦略です。

ブルーオーシャン戦略はライバル不在となるのがメリットですが、それが成功するためには、新たに付加した価値観がアメリカ人に受け入れられるかがポイントとなります。

また、この全米デビューのやり方の良い所は、日本市場を失う可能性が低いところです。

全米デビューに向けて、英語で歌う等、アメリカ人好みの曲作りをすれば、それは日本人好みではない可能性が高いため、日本での売上が低下するおそれがあります。

日本の音楽市場は、現在ではアメリカの音楽市場とほぼ同等、CD売上に関しては上回っておりますので、日本市場を手放すことは、経営的にはありえません。

夢の無いこといえば、経営的には日本で売れれば充分であり、外国に関しては、多少の利益が出ればいいというところでしょうか。

このブルーオーシャン戦略はPerfumeが初めてではなく、YMOも同じような戦略だったと思います。

YMOも歌詞を無くして言語的な壁を乗り越えるとともに、テクノロジーやアジア的な雰囲気を付加して、世界を目指しました。そういう意味では、本当にテクノサウンドの継承者といえるのかもしれません。

2014年9月6日土曜日

情報源について

先日、以下のような報道がありました。

特許、無条件で会社のもの 社員の発明巡り政府方針転換(朝日新聞)
http://www.asahi.com/articles/ASG924QNWG92ULFA00K.html

「無条件」という強い表現が用いられておりましたので、どのような法律の構成にするのだろうと思っていましたが、どうやら誤報だったようです。

日本の報道は「早ければ価値がある」という意識が強すぎるような気がします。

したがって、不正確な情報の元、よくわからない上記のような報道がなされるのではないかと思います。

個人的には、報道には「事実」とその「根拠」がしっかりしていれば、あとはその内容を自分で解釈しますので、不正確な記者の考えというものはまったくいらないどころか、かえって害になると思います。

自分は新聞をとっていないのですが、インターネットを利用すれば一次情報にあたれますので、新聞からのバイアスがかかった情報が不要ということもあります。

同様な理由でニュースもあまりみません。事実のみを素直に伝えてくれればいいのですが、専門家でもないキャスターやコメンテーターが、的はずれなコメントを事実に載せてきますので、事実が汚染されて伝わります。

そう考えると、今の記者に必要なのは専門性かもしれません。先ほどの朝日の記事も、弁護士や大学の教授がチェックすれば、明らかにおかしいことが自明です。

また、最近はネイティブ記事という、事実の報道なのか、企業の宣伝なのかよくわからない記事も見受けられます。

企業の宣伝の場合には、内容にバイアスがかかりますので、これも不要な情報、役に立たない情報といえます。

こうなると、新聞やニュースのみをニュースソースとすると痛い目に合うことになりますので、ある程度は情報を自分で取ってこなければなりません。

ということで、朝日の一件は、いろいろ考えさせることになりました。

2014年8月30日土曜日

幸福感について

以前、幸福を感じるにはどうすればよいか?というテーマの本を読みました(書名は失念しました・・・)。

その中に、物を買うことにより幸福感を得られるか?、ということについて調査した結果が載っていました。

結論としては、幸福感は得られるが、その感情は数ヶ月しか持続しないということでした。

人間の心理には感覚が減衰する機能があるそうで、これは例えば、身内の死等の、とてつもなく不幸な状況が生じた場合でも、その感覚は時間とともに薄れてゆき、不幸な感情が持続しないという心理的作用のようです。

不幸な感情が持続した場合には、生きる気力が失われ自己の生命に危険が及びますが、感情が薄れることにより、生命の保護を図っているといえるでしょう。

この心理的作用が、不幸な感情にのみ作用すればよいのですが、幸福な感情にも作用してしまうとのことです。

例えば、メルセデス・ベンツを買ったとしても、嬉しいのは3ヶ月くらいで、その後は、ベンツがある生活が当たりまえとなってしまいます。

したがって、物による幸福感を持続させるためには、定期的に物を買ってゆくことが必要となります。ベンツであれば、モデルチェンジのたびに買い換えるなどです。

但し、幸福感が多少麻痺していますので、単に買い換えるのではなく、グレードの高いベンツにしなければなりません。まあ、お金持ちにしかできないことです。

それでは、そこまでお金のない人はどうすればよいかというと、経験に投資することがよいと書いてありました。

経験は頭の中に記憶されますので、思い出すたびに幸福感が(多少なりとも)蘇り、幸福感が持続しやすいとのことです。

そう考えると、これはものづくりのヒントとなるかもしれません。

私はアップル製品をもっていないのですが、アップル製品はユーザー・エクスペリエンスを大事にすると聞いております。

つまり、単に物としてのスマホを売るのではなく、スマホを使用して得られる経験も売っているといえます。これにより、アップル製品を使用する幸福感が持続し、熱狂的なファンを得ているのではないでしょうか。

また、ハーレーという大型バイクが、日本の大型バイク市場の大きなシェアを占めていますが、ハーレーのバイク自体はメカニズム的に優れた部分もなく、性能、品質の面で日本のバイクに劣っています。

それでも、ハーレーに乗ることによるアウトロー的経験は格別のものですし、ショップもイベントを開催し、購入者がそういう経験を得られる仕組みも整えております。

そこでやはり、物としての幸福感に加えて経験が加わる幸福感の相乗効果があり、熱狂的なファンがいるのだと思います。

日本製品はハイスペックですが、使用者の心理的な面の考慮が少々弱いと思います。

製品設計のみにエンジニアを配置するのではなく、ユーザーが製品を使用することに得られる経験を設計する人や、ハーレーのように能動的に経験させる仕組みを設計する人も開発に加えると、厚みのあるものづくりができるのではと思います。

2014年8月10日日曜日

意匠と商標の狭間で

先日、ジャポニカ学習帳の商品形態について立体商標の登録がされたとのニュースが有りました。そういえば、ホンダのスーパーカブも立体商標となりました。

立体商標とは、立体的な形状からなる商標をいう、とされますが、商標権は半永久権ですので、商品形態に独占権を付与することは、ちょっと強すぎる権利となりすぎますので、従来はなかなか商標登録を受けることはできませんでした。

しかし、こういうニュースが連続して飛び込んでくるということは、審査の方針が商標登録を受けやすい方向へ変化したのかもしれません。

商品形態は、基本的には意匠法で保護を図るのが基本と思いますが、その意匠を継続的に使用することにより業務上の信用が化体した場合には、商標登録を受けうることになります。

そう考えると意匠と商標というものは明確に区別できるものではなく、その境界はぼんやりとしているのかもしれません。

こういう考え方をトレードドレスともいうようですが、日本もこのような方向に実務が動いてゆくのかもしれません。
 
それでは、今後は商品形態の保護をどのように図るべきなのでしょうか。商品形態を保護する方としては、意匠法、商標法(立体商標)、及び、不正競争防止法(周知表示、形態模倣)があります。



商品販売当初は、不競法2条3号で保護を図り、意匠登録後は意匠法で保護をはかり、意匠権の存続期間満了後は、不競法2条1号で保護を図り、自他商品識別機能を有した段階で商標登録を受ける、というような感じでしょうか。

もちろん、このような考えができる商品はものすごくライフサイクルの長い商品(少なくとも50年?)に限られると思います。

スマートフォンや乗用車のような数年でモデルチェンジする商品の形態は、数年守られればよく、立体商標の登録を受ける場合は、ほぼ無いと思います。

それでは、どのような商品があるのかといえば、私の身の回りでいえば、腕時計、万年筆、椅子などの家具、ハンドバックなどがあるでしょうか。

ということで、今後は、長く愛されるデザインというものを創作してゆく、というのも1つの考えかもしれません。

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