2015年8月17日月曜日

機能美と装飾美について

東京オリンピックのメインスタジアムの建設費用が高すぎるとして問題となっています。

今の日本であれば3000億円程度であれば、出せない額ではありませんが、世論的には批判の的となっています。

その理由はなぜかといえば、あのヌメッとしたデザインに3000億円の価値はないと日本国民が認識しているからと思います。

デザインが備える美には、機能美と装飾美があるといわれています。

機能美とは機械や建築物等が機能を発揮するために必要な形態から生じる美といえると思います。

美しい形態は優れた機能を発揮することが期待できますので、人間がこのような形態に本能的に美を感じるのかもしれません。

装飾美とは、機能とは関係なくデコレーションした形態から生ずる美といえると思います。例えば、花柄とか、意味不明な突起とか、まあそういうものです。

工業製品の場合には、機能を満たすことが必須ですので、機能美を重視しつつ、コストや性能に余裕がある場合には、装飾美を付加することになるかと思います。

例えば、刀や戦闘機などの武器類は装飾美「0」といえますが、カッコよく見えるのは、研ぎ澄まされた機能から生ずる機能美があるからです。

民生品でも、乗用車のように多少の遊びが可能な場合には、セクシーな曲面を多用するなど外形に装飾を施すことも可能です。この場合には、機能美と装飾美のバランスを考えることになるかと思います。

さて、以前の案のメインスタジアムのデザインを見ますと、装飾的な形態が多すぎると思われます。

巨大なキール部分や 、女性器を連想させる外形には機能上の必要性がありません。

したがって、ヌメッとした形態に美が感じられない人には、やめてほしい建物となると思います。

もちろん、機能的な形態だけでは無味乾燥なスタジアムができますので、久しぶりのオリンピックであることも考えますと、お年寄りの審査員からみれば装飾をてんこ盛りとしたい気持ちもわかります。

しかし、それは多くの国民の感性とは異なるものであったということでしょう。

そうすると、今後のスタジアムのデザインについては、多くの人が本能的に理解できる機能美部分を多くして、装飾美部分については、多くの人が美を感じられる形態とする必要があると思います。

日本人が共通して感じられる美としては、神社・仏閣のデザインや、森や花など自然をモチーフとした形態などがあり、これらは外国人も日本的と感じますので、こういう形態をとりいれるのが無難と思います。

あとは、 2020年の東京オリンピックを予言していたAKIRAなどのサイバーパンク的なデザインも私世代以下の人には受け入れられる余地があるかもしれません。

さて、新たにデザインされるスタジアムはどのような形態になるのでしょうか。楽しみです。

2015年8月8日土曜日

フレームワークについて

最近は弁理士知財コンサルの研修に励む日々ですが、こういう研修で必ず紹介されるのがSWOT分析です。

ご存じとは思いますが、SWOT分析は、自社の状況について、強み、弱み、機会、脅威の4象限に分けて記入して、自社の状況を分析する手法です。

私が初めてSWOT分析を知ったのは、5、6年前の農工大MOTでのクラス討議でしたが、私以外の社会人学生は当然その程度は知っており、自分の馬鹿さ加減に驚いた記憶があります。

何年か前、某コンサルタントの先生が、あなたたちのSWOT分析は間違っている。本当はこうやるのだ、とおっしゃってましたが、逆に言えば、初心者でも初心者なりの分析ができる点で、とっつきやすいと思いますし、人気の理由と思います。

その他、フレームワークというものは無数にありますが、SWOT分析が生き残る理由としては、情報の分類数が、たった4つというところにあると思います。

分類数が多いと表をつくるのも大変ですし、見る方もパッと見で内容を理解することは難しいと思います。

何年か前の研修で、知財フレームワーク的なものを考案された方の解説を聞いたことがありますが、確かに、よく分析できるとは思いましたが、項目が若干多く、表を作るのが大変と思いました。そうすると一般に定着させることは難しいと思います。

世の中で使われているフレームワークといえば、PEST、4P、3C、アンゾフのマトリクス等、3つ、4つの分類となるのが多く、5フォースとなるとあまり使われておりませんので、このあたりの3つ、4つの分類数が上限なのかと思います。

そう考えると、知財関係のフレームワークを新たに考案しようとする場合には、2×2のマトリクス位とするのがよいと思いますが、どういう分類にすればよいのでしょうか・・・。

2015年7月25日土曜日

弁理士知財キャラバンについて

先日、弁理士知財キャラバンの支援員となるための第1回研修を受けてまいりました。

弁理士知財キャラバンとは、日本弁理士会が各地の中小企業に弁理士を派遣し、知的財産活動についてコンサルティングを行う事業のことをいいます。

弁理士知財キャラバンを利用すれば、中小企業は、無料で弁理士によるコンサルティングを受けられるそうです。

支援員となるための研修は、1回が1日みっちり使った研修を5回うけ、その後所定の要件を満たすと実行委員会に認められれば、めでたく支援員となり、中小企業のコンサルを行えることになります。

本年度だけで1000人の支援員が誕生する予定です・・・。

ここで疑問なのが、はたして1000人も支援員が必要なほどの支援の要請があるのか、ということです。

この辺りは、弁理士会のプロモーションによることとなると思いますが、支援要請が少ない場合には、実行委員会にコネのない私のようなものには仕事が回ってこないことを危惧します。

研修で得たスキルをもとに独自に仕事を得ることも考えられますが、弁理士会が無料でやっているのにあえて有料でのコンサルをやろうという中小企業はないと思われます。

そう考えると勉強する意欲も薄れますが、とりあえず支援員にはなろうと考えています。

コンサルティングをご希望の中小企業の方は、募集が始まりましたら、当ブログで詳細な情報をお知らせしますので、少々お待ちください。

2015年7月16日木曜日

法的妥当性について

プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する最高裁判決が平成27年6月5日にありました。

それに応じて、特許庁における審査・審判の取り扱いも修正されました。
(特許庁HP http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C150706.htm )

今後は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であると判断し、拒絶理由を通知されることになります。

簡単に言えば、プロダクト・バイ・プロセスクレームを書いてはダメ、ということになるでしょうか。

今回の判決により請求項の表現は著しく制限されることになります。 技術分野によっては、発明の保護が十分に図れないという事態が生じるのではないでしょうか。

裁判官は、こう判断することが法的に妥当であると判断したと思いますが、たかだか4名の判事による判断が対世的に効力を持つことに、少々怖さを感じます。

特許は、法律、技術、ビジネスの境界に存在するため、各方面からの検討が必要と思います。しかし、裁判官は、法的妥当性から判断を行います。そうすると、今回の判決は技術的に妥当なのかという疑問があります。

近年、侵害訴訟の原告勝訴率が20%くらいしかないことが問題となっています。裁判官の方のお話を伺ったことがありますが、勝訴率うんぬんを問題にするのはよろしくない、というようなニュアンスの話をされておりました(正確ではありません。)

もちろん、法的には妥当な判断をされていると思いますが、それだけでよいのでしょうか?

企業はボランティアで特許出願をしているわけではありませんので、勝訴率が20%では、特許出願はしませんし、特許権があっても権利行使はしません。

そうすると、権利はあるのに行使しないという、法的に歪んだ状態が作り出されますし、権利行使がされないということは、そもそも、特許法が無意味化(いらない?)するという、法的に変な状態となります。

そう考えると、裁判官の判断が国民経済に不利益な方向に向かわないようにコントロールする必要があると思います。その一つの方法が、適切な立法をしてゆくことがあるのかと思います。

プロダクト・バイ・プロセスクレームについても、ビジネス、技術の分野の方々から、請求項の記載のあるべき姿をヒアリングし、必要であれば立法化してゆくことも必要なのかと考えます。

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