2019年1月5日土曜日

課題と解決手段について(2)

次に、解決手段の創出ですが、これも「課題」と同様の分類を用いますと、以下のようになります。


解決手段
内容
設計方法
連続的
類似設計
寸法、配置の変更程度
既存設計の改造
準連続的
適応設計
既存の設計を異なる製品に流用
流用可能な設計の文献調査
非連続的
独自設計
独自の設計を作り上げる
機能を実現する構造の創造
(各種発想法の利用)



連続的解決手段とは、既存設計を多少変更した程度のものです。

準連続的解決手段とは、異なる製品から設計を持ってくるものです。これは、特許調査や文献調査で他の適用可能な設計を発見できそうです。

非連続的解決手段とは、従来にない設計となりますが、従来にありませんので、解決手段を発想するという過程が必要となります。

解決手段の発想ということでは、いろいろな手段がありますが、例えば、ブレインストーミングやTRIZがあります。

私見ですが、ブレインストーミングで解決手段を発想することは難しいのではないかと考えています。それは、ブレインストーミングで解決手段の上位概念は議論できますが、下位概念までは議論できないからです。

すなわち、下位概念から上位概念はわかるが、上位概念から下位概念はわからない、という宿命があります。結局、下位概念の創出は、個人が、地道に時間をかけて探求するしかないと思います。

TRIZに関しては、本をたくさん持っており、高額なTRIZソフトを使ったこともありますが、正直なところ使いこなせていません。

したがいまして、解決手段に関しましては、発想法をどう簡便にするか、が課題となります。


2019年1月1日火曜日

課題と解決手段について(1)

年の初めには1年の目標を立てるものですが、今年は、課題と解決手段について、何かまとめておこうかと考えています。

特許的にいえば、課題と解決手段というものは、非常に重要でして、明細書に記載するのが、まさに課題と解決手段であり、また、課題が新規、解決手段が新規であれば、特許される可能性が高いです。

研究開発においても、適切な課題分析と、差別化された解決手段の創出が、よいアウトプットの条件となります。

とはいえ、「適切な課題分析」、「差別化された解決手段の創出」、と簡単に言ってしまいますが、実際に体系だてた方法論というものはありません。

とはいえ、全くないという訳ではなく、様々な人がいろいろ独自の方法論を語ってはおります。

例えば、課題分析については、特許分析、アンケートなど古くから用いられているものや、デザイン思考、デザインドリブンイノベーションなど最近話題の方法などがあります。

それらを、まとめて簡単な方法論とできないかというのが問題意識です。

下図は、試しに分類してみた図です。


課題
内容
視点
調査方法
分析手法
連続的
課題が明示されている
技術
現状調査
不具合分析
特許分析
人間
現状調査
アンケート分析
準連続的
課題が非明示的に形成されている
技術
故障予測
FMEA
人間
ユーザー観察
デザイン思考
QFD
非連続的
課題が明示されず非明示的にも形成されていない
技術
技術トレンドの想定
バックキャスティング
人間
感性、価値観、問題意識、有り様の想定
ブランドQFD
DDI



「連続的」、「準連続的」、「非連続的」という分類は、「創造デザイン工学(東京大学出版会)」からもってきました。

課題というのは、よくよく考えると様々な種類があり、顕在課題(連続的)、潜在課題(準連続的)、将来の課題(非連続的)があることがわかります。また、課題は、純粋に技術的なものと、人間心理から発生するものの2つがあります。

連続的課題の分析には、特許分析やアンケート分析で足ります。

準連続的課題は非明示的ですので、特許分析やアンケートから見出すことはできません。したがって、技術や人間の行動を深堀して推測・推定する分析が必要となります。これらの推定手法としては、FMEAやデザイン思考があります。

さらに、非連続的課題は、現在の常識の延長で考えることは難しいと思われます。そうしますと、未来の技術のあるべき姿から課題を見出すバックキャスティングや、人間の感性、価値観から有り様を見出す、ブランドQFDのような手法を用いることが考えられます。

「連続的」、「準連続的」、「非連続的」となるにつれて、課題としては新規なものとなりますが、そのような課題を設定することが適切であるかどうかは別の話となります。

なぜなら「連続的」な課題は市場性がありますが、「準連続的」、「非連続的」な課題は市場性があるかどうか不明確だからです。つまり、「準連続的」、「非連続的」な課題を解決したからと言って、売れる製品になるかどうかは別の問題となります。

ただし、製品としてはインパクトがありますので、うまくゆけばイノベーティブな製品となるでしょう。

謹賀新年

2018年12月19日水曜日

マーケティングプロセスと特許情報について


私のレベルの低い無査読論文が公開されましたので、ご笑覧願います。

 


 

この論文は、実のところ2012年に書いたものなのですが、お蔵入りとなっておりました。

 

しかし、今年、日本マーケティング学会に入会しましたので、会費を払っている以上、何か1件上げてみたくなったのと、野崎さんという非常にとても著名なコンサルタントの方が、私が2012年の知財学会で発表した図をご自身のブログにあげられておりましたので、今でも需要があるのかと思い、公開してみました。

 

この論文を読んで、よいと思うところはセミマクロ分析を行っているところです。最近よく見る特許情報分析は、マクロ分析が主と思います。

 

なぜ、そうなるかといえば、マクロ分析は書誌的事項のみで分析をしますので、明細書を読まなくて済むからです。一方、セミマクロ分析は1件1件明細書を読むことになりますので、とても時間がかかります。

 

特許分析をやっている方には、「明細書を読んだら負け」という人もいます。といっても、1件1件明細書を読み始めると工数がかかりすぎますので、仕事として特許分析を行う場合には、そうなることは仕方がないかもしれません。

 

マクロ分析の場合には、技術分析は特許分類で行いますので、特許マップの軸にはIPCやらFIなどのわけのわからない記号が並ぶことになります。セミマクロ分析の場合には意味が理解できる単語が並びますので、マップを理解しやすくなります。しかし、作るのが大変であることから、あまり普及はしていません。

 

論文の内容的には、IPランドスケープ(登録商標)を先取りしたような内容となっておりますが、今公開しますと後追いのようなイメージとなるのがかっこ悪く感じます。

 
このようなかっこ悪いこととならぬよう、皆様も新しいアイデアを思いついたら、つまらないことでも、その都度、論文で発表するなり、特許出願をした方がよいと思います。

【PR】“AI、生成AI”による知財業務の効率化、スピード化のセミナーについて(9/27開催)

掲題の件、セミナーの1/4を担当することになりました。私の担当分は、「【第2部】生成AIで革新する特許データ分析」です。URLは以下となります。 AI 生成AI 特許調査 分析 翻訳 技術情報協会はセミナー・出版・通信教育を通じて企業の最前線に立つ研究者、技術者をサポートし社会に...