朝の支度の時間にはNHKの朝ドラをながら見することが多いです。
前作の「半分青い」は、最後のエピソードが扇風機の発明でしたが、今回の「まんぷく」も発明の話となりました。
「まんぷく」の方は、いよいよメインのエピソードである即席めんの開発に入ったところです。
ながら見ですので、細かいところは記憶違いがあるかもしれませんが、このラーメンの開発過程はなかなか興味深いものがあります。ざっといえば以下のような感じです。
・ラーメンについて
開発テーマとしてラーメンが選ばれました。ラーメンは当時すでに国民食であったので、開発に成功すれば、十分な利益が得られるからかと思います。
・便益について
まず開発コンセプトとして「家で簡単にできる」という便益が設定されました。ラーメン自体はありふれた食品ですので、ただ開発しただけでは売れません。
差別化のためには、新しい要素を考える必要がありますが、ここで従来にない便益である「家で簡単につくれる」を設定し、顧客に新たな価値を提供することを目的としました。
・品質について
次に、「家で簡単に作れる」という便益を提供するための製品の品質として「美味しい」、「安い」、「簡単に作れる」、「常温保存」、「安全」という5つの品質が規定されました。
・構成要素について
主人公の万平さんは、様々なラーメンを食べ歩き、図書館に通って、現状のラーメンの知識を集めました。ラーメンの構成要素は「麺」と「スープ」ですが、例えば、スープも、昆布だし、かつおだし、鶏がら、豚骨等、様々ありますので、そういう分析を予めしておきます。
主人公の万平さんは、このように周辺情報の収集と分析から、開発を始めるところが優れていると感じました。
新たなラーメンは、品質と構成要素のぶつかるところにありますので、情報を分析しておくことにより、ある程度論理的に考えることができます。
実際の研究開発には試行錯誤が必要ですが、情報を分析しておくことにより、不要な試行錯誤を減らすことができます。
例えば、牛、豚系の材料は高価であるため安いという品質を充たさず、検討不要となります。また、生めんも常温で保存できないことから、検討不要になります。さて、情報分析が終わると、実際の試作に入るわけですが、各品質を充足する材料をとりあえず集めることになります。
「安い」という品質を充足するために、スープは「鶏がら」となりました。これは、ただ同然で手に入る材料だからです。
「常温保存」という品質を充足するために、麺は乾麺となりました。当時の乾麺としては「そうめん」、「パスタ」がありますので、これらの流用をまず考えます。すなわち、用途転用による準連続的な解決手段の創出となります。
それで、早速、鶏がらスープにゆでたパスタを入れた試作品を作成し、家族に食べさせるわけですが、これは「まずい」(すなわち、おいしいという品質を充足しない)となり、さらなる改良を行うことになります。 試作・改良のサイクルを繰り返すというのは、今はやりのデザイン思考に通じる開発手法です。
とはいえ、上記試作も麺をゆでたり、鶏がらスープを煮出したり、とても簡単に作れるものではありません。万平さんは、嫁さんがとろろ昆布?にお湯をかけて、だしをとっている?のを見て、麺にスープをしみこませればよいのかと思い付きます。
要は、昆布のような麺にするという「メタファー」による非連続な解決手段の創出となります。
このような感じで、最終的には即席めんが完成するのだと思います。もちろん、朝ドラですのでフィクションの部分もあるかと思いますが、技術がわからない人にも興味が持てるストーリーとなっていると思います。
ラーメンといえば、私は5年前にラーメンのQFDを作ったことがあります。
https://drive.google.com/file/d/1u3jByPVTWhGJfcOVp_dVsWtuMX37WQZt/view?usp=sharing
(PDFファイルです。)
当時はストレート麺の特許について係争がありましたので、麺に着目したQFDとなっております。これを見ますと、品質の「安さ」と「保存性」が抜けております。
「安さ」と「保存性」に関しては、現状ではすべてのメーカーが備えていることから、この品質については差別化要因にはもはやならないからかと思います。
今は特許情報がありますので、このくらいの分析はすぐできますが、当時は情報を足で稼ぐしかありませんでしたので、大変です。そういう意味では、今は恵まれておりますので、発明者には有利な時代と言えるのではないでしょうか。