2019年11月16日土曜日

テキストマイニングを使用したブランドQFDの作成手順の予稿について


知財学会で発表する資料をつくっておりますが、時間がかかります。昨日は5行書くのに1日かかりました。

これは、できるだけ論証を先行文献に書かれたものを利用(流用)するようにしているので、先行文献から使える部分を探し出して、文章化するという作業となるからです。

著名な学者であるならば、自分の考えでどんどん書けばよいのですが、そうではありませんので、論証を偉い先生の書物からもってきませんと、学会発表で論理的矛盾を指摘され、火だるまとなってしまうおそれがあります。(知財学会は某学会のように殺伐とはしておりませんので、たぶん大丈夫とは思います・・・。)

知財学会の内容につきましては、後日、某誌に投稿して公開(リジェクトされましたら、何でも掲載されるマーケティング学会のワーキングペーパにします・・・)しますので、ご興味のある方は、知財学会に参加されなくとも情報がゆくようにいたします。 

予稿も以下に公開します。なお、学会発表では、ブランドQFDの作り方については、予稿を読めばわかるため、あまり時間をとらず、具体的分析手法の説明に時間をとる予定です(これからの準備次第となりますので、あくまでも予定です・・・)。

1.はじめに
(1)ブランドQFDとは
ブランドとは、組織から顧客への約束である、といわれる1)。ブランドに必要なのは、ブランドが表すものが、機能面だけではなく、情緒面や自己表現、人間関係においても役立つという約束を守ることである。
ブランドの理解には商品・サービスが提供するベネフィットの全体像を知ることが必要となるが、その手段の一つにブランドQFDがある。ブランドQFDは、顧客へのベネフィットと属性との接点を可視化する方法論である2。ブランドQFDでは、機能的ベネフィットを介した、自己表現的ベネフィットや情緒的ベネフィットと属性との関連の強さを図表化する。このため、高い顧客ロイヤルティを獲得できる商品・サービスの開発に役立つ。

(2)ブランドQFDの作成方法について
ブランドQFDは、顧客のアンケートやインタビュー等に基づいて作成される2。また、特許情報及びレビュー情報に基づいてブランドQFDを作成する方法がある3

(3)本稿の目的
人間がレビュー情報等を読み込んで、用語を抽出する場合には、熟練者でも情報1件当たり、ある程度の時間が必要である。例えば、情報100件処理するには多大な時間が必要となる。これでは、多忙な担当者が、ブランドQFD作成を業務として行うのは難しい。そこで、本稿では、テキストマイニングの技術を使用してブランドQFDの作成を省力化することを目的とする。

2.テキストマイニングについて
(1)テキストマイニングとは
テキストマイニングとは、文書形式のデータを定量的な方法で分析することをいう。テキストマイニングでは、コンピュータの処理によってデータの中から自動的に言葉を取り出し、さまざまな統計手法を用いた探索的な分析を行う。これにより、パターンやルール、ひいては知識の発見を目指すものである。

(2)使用ソフトについて
本稿では、KH Coderを使用してテキストマイニングを行う。KH Coderは、テキストマイニング用のフリーソフトウェアである4)。フリーソフトであることから、無料で、学術的な目的であれ商業的な目的であれ,自由に使用できる。

3.テキストマイニングを使用したブランドQFDの作成手順について
Step 1 特許情報取得
特許情報データをJ-PlatPatから取得する。本稿では、検索対象製品をおむつとし、出願人をA社とB社として検索した。A社とB社各100件(計200件)の特許出願を分析の対象とした。
1 特許情報の一例(2件)

Step 2 レビュー情報取得
レビュー情報をECサイトのカスタマーレビューから取得する。本稿では、検索対象をおむつとし、メーカーをA社とB社として検索した。A社とB社各100件(計200件)のレビュー情報を分析の対象とした。
2 レビュー情報の一例(3件)

Step 3 形態素解析
形態素解析とは、自然言語のテキストデータから、対象言語の文法や、辞書と呼ばれる単語の品詞等の情報に基づき、形態素の列に分割し、それぞれの形態素の品詞等を判別する処理のことをいう。特許情報200件とレビュー情報200件を合わせた計400件の情報に対して形態素解析を行う。これにより400件の情報から分析対象となる抽出語を抽出する。
3 抽出語の一部

Step 4 コーディング
コーディングとは、仮説やテーマに基づいて、抽出語を組み合わせる処理のことをいう。コーディング処理を行う前には、コードを設定し、特定の記述がデータ中にあればそのデータを特定のコードに分類すること、といった基準を設定する。この基準のことをコーディングルールという。本稿では、A社とB社の商品のホームページの記載から、自己表現的ベネフィット、情緒的ベネフィット、機能的ベネフィット、及び、属性のコードを抽出した。
4 コード

コーディングルールは、形態素解析により抽出された多数の抽出語を、コードに割り当てて設定した。
5 コーディングルール

Step 5 ブランドQFD出力
特定ベネフィットと属性とを行とし、機能的ベネフィットを列とした類似度行列を生成する。類似度行列は、Jaccard係数を計算して生成される。
6 類似度行列

類似度行列から、ブランドQFDを作成する。類似度行列は、01の数値で表されるため、見やすさ等の関係上、所定の類似度以上の場合に、対応関係あり(図中の〇)とした。

 

7 ブランドQFD

4.まとめ
テキストマイニングの技術を使用することにより、特許情報及びレビュー情報を区別なく一括して処理することができる。これにより、ブランドQFDの作成作業を省力化できる。
本稿における処理は、KH Coderというフリーソフトで実行できるため、容易にブランドQFDを作成できる。

5.参考文献
1) デービッド・アーカー, ブランド論, ダイヤモンド社 (2014)
2) 加藤雄一郎, ブランドクオリティ開発のための「ブランドQFD, フレグランスジャーナル, 33(1), 27-34, (2005)
3) 川上成年, 谷津維則, 「ブランドQFDを活用した調査手法の開発」, パテント, Vol.70, 2017.3, pp.82-89 (2017)
4 樋口耕一, 「社会調査のための計量テキスト分析 内容分析の継承と発展を目指して」, 株式会社ナカニシヤ出版 (2014)

2019年11月13日水曜日

質的研究法について

知財学会も12/7に迫っておりますが、当然のごとく発表資料はできておりません。

時間的には1か月ありますが、作業にとれる時間は土日くらいしかありませんし、土日も家の用事がありますので、時間的な余裕はあまりありません。

それで、資料を作成しようと思うのですが、ブランドQFDによる分析が、あまりイケていないというか、何らかの数値を出して相関をとるようなかっこいい分析ができないものかと調べておりましたら、以下のページを見つけました。

しつてきけんきゅうほう
質的研究法
qualitative research methods

https://kotobank.jp/word/%E8%B3%AA%E7%9A%84%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%B3%95-2099777

どうやら私がイメージする分析法は、量的分析と言われるもので、機械エンジニアの私は分析法といえば量的分析しか知りませんでした。

それに対して、主に心理学の分野では、上記の質的分析法というものがよく用いられるそうです。

ブランドQFDによる分析では、コンテクストによる分析を行いますが、これはブランドの分野特有の分析手法ではなく、どちらかといえば心理学由来の分析法なのかなと思います。

また、「意味への関心」ということで思い出すのは、デザインドリブンイノベーションです。あちらは、意味のイノベーションと言われますが、これも心理学由来の考え方なのかなと思います。

私は、デザインドリブンイノベーションの本は半分くらいしか読んでおらず、内容も理解しにくい部分が多くありましたが、これは私は心理学の知識が0であったからとも思います。

よく、デザインドリブンイノベーションとデザイン思考を混同している人がいますが、考え方は全然違うということになります。

また、ブランドとデザインドリブンイノベーションは心理学的分析を基礎とする点で、共通性が高い考え方と思います。

ということで、質的研究法の本を買い込んで今読んでおりますが、資料作成がさらに進まないことなりました。とはいえ、質的分析の知見を高めて、量的分析によらない分析法を極めたいと思います。

2019年11月1日金曜日

自分でする特許出願 -クレジットカード納付の注意点-

さて、自分でする特許出願シリーズですが、特許出願関係の料金をクレジットカードで納付できることは以前書きました。

しかし、1点注意点があります。それは、庁メンテナンス中はクレジットカード納付ができない時間があることです。

私のように趣味で出願している場合には、土曜、日曜の夜中に特許庁への手続きをすることが多くなります。

しかし、このような時間はメンテナンス中であることが多く、クレジットカード納付ができないことが多々あります。

この場合取りうる措置は、
(1)メンテが終わるまで待つ
(2)強制送信する
の2つがあります。

メンテが終わるまで待つのがよいのですが、例えば、特許出願はできるだけ出願を早くしたいため、メンテ明けが翌日などになる場合には、待てない事情もあります。

この場合、強制送信するのですが、これは注意が必要です。

私は、特許庁からの通知は郵送で受け取る設定にしておりますので、強制送信した場合には、補充指令が書留で庁から郵送され、それに応じて補正書をオンラインで提出すれば事足ります。

しかし、補充指令が来ず、オンラインで手続却下通知が送信され、これに気が付かない場合があります。

特許事務所では、毎日特許庁からの通知を常時チェックしているので、このようなことは無いのですが、個人的に出願する場合には、年に1件くらいしか出願しないので、オンラインのチェックなど基本的にはしません。

そうすると、却下理由通知を見逃すことになり、顔が真っ青になります。このようなことを避けるために、特許庁からの通知は郵送処理としているのですが・・・。

とはいえ、趣味で出願する場合には、強制送信のような実務では絶対にやらないようなリスクをあえておかして、どのようなトラブルが生じるかの知見を得ることができますので、これはよい勉強になります。

ということで、オンラインで出願した場合には、週1回くらいは、出願ソフトを立ち上げて、特許庁から何か通知が来ていないか確認した方がよいこととなります。

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