2021年3月4日木曜日

アナリシスとデザインについて

昔の資料を整理しておりましたら、ネットで拾った吉川先生の一般設計学の講義のパワーポイントを見つけました。

↓まだこちらで見れるようです。

http://www.robot.t.u-tokyo.ac.jp/asamalab/lectures/lecture6/files/20110112GeneralDesignTheory.pdf

しかし、内容が難解でしたので、真剣には読んでおりませんでしたので、この機会に少し読んでみました。

パワポの10ページに以下の図がありました。

 

この図は、分析と設計の関係を表した良い図と思います。

特許の世界でも、特許情報分析を行うことがありますが、分析結果はいくつかの法則性がわかることであり、分析により、何か新しいものが生まれる訳ではありません。

新しいものを生み出すには、分析により得られた法則を組み合わせる作業が必要となります。この作業がいわゆる設計(デザイン)となります。

ということで、今後はアナリシスの後工程としてのデザインが重要となると思います。

ここからは脱線ですが、上記パワポによれば、分析は、常に正しい、正当性がある、ような結果が得られるようです。

一方、デザインの方は、誤りうる、というおそろしい言葉が書かれております。

そう考えますと、例えば、人の失敗を責めるような企業文化がある企業では、デザイナー的な人は失敗により出世できない、アナリスト的な人は出世しやすい、ようなことがありそうです。

しかし、社内にアナリスト的な人が増えますと、新しいものは生まれませんので、企業としては衰退する、というようなことがあると思います。

そう考えますと、アナリシスとデザインのバランスを図ることが、特に、製造業では必要と思います。

2021年2月28日日曜日

現状より悪くすることについて

今から35年くらい前でしょうか。NHK(おそらく)で、ある無名ライダーのドキュメンタリーを放送しておりました。

当時のレースは、少数のワークスマシーンとプライベータが混走して戦う構図となっておりました。もちろん、ワークスマシーンはお金がかかっておりますので、プライベータが勝利する可能性はほぼありません。

しかしながら、上記のドキュメンタリーでは、無名のプライベータが勝利しました。そのライダーとは本間選手です。

本間選手はその後、全日本チャンピオンになりましたが、世界を狙える才能があったものの、怪我のためレースの世界から引退としたと思います。

その本間選手ですが、最近Youtuberとしてデビューしたようですので、動画を見てみました。

 https://www.youtube.com/watch?v=XWjqtLQZ74Q

(↑おっさんがただしゃべっているだけですので、興味のない方は視聴不要です。)

テーマとしては、サスペンションセッティングの話で、3コーナーのセッティングがバッチリ出てしまったときどう考えるか、というテーマです。

サーキットには10個くらいコーナーがありますので、3コーナーのセッティングがバッチリでても、他のコーナーが遅ければ、サーキット1周としてはタイムが出ませんので、よろしくないこととなります。

それで、どうすればよいかといえば、上記動画を見てください・・・。

以下は、私の感想となりますが、 3コーナーのセッティングがバッチリでますと、そのセッティングを変えたくない心理状態となります(ラチェット効果みたいなものでしょうか)。

そうすると、3コーナーのセッティングのまま、他のコーナーも早く走れるようなセッティングを求めがちですが、これは無理な話となり、セッティングの沼に陥ることになります。

本間選手の言うところでは、マシンのセッティングとは

マシンをよくする→マシンをさらによくする→マシンをもっとよくする

という流れではなく

マシンをよくする→マシンを一旦悪くする→マシンをよくする

という流れとなります。

つまり、 3コーナーのセッティングがでましたら、そのセッティングを一旦悪化させ、その分他のコーナーを早くできるセッティングにし、コース全体として早くすることが必要とのことです。

しかし、マシンをいったん悪くする判断をできる人はおりませんので、これが難しいところとなります。

これは、レーサーの開発に限らず、一般の商品にもあてはまるかと思います。例えば、コンパクトデジタルカメラは、性能をよくし続けた結果、市場自体がなくなってしまいました。

どこかの段階で、カメラ性能を悪化させ、他の用途にも使えるセッティングを考えられれば生き残れたかもしれません。 

ただし、特に大企業では「性能を悪くする」製品開発など提案しましたら、ぼろぼろに叩かれるでしょうから、どうなんでしょう。

オートバイレースにあてはめますと、カメラが「製品」、サーキットが「市場」となるでしょうか。製品を部分最適化するのではなく、市場適合性を最適化するため、機能を切り捨てたり、機能を付加したりすることを考えることになるでしょうか。

しかし、レーサーに限らず、スポーツ選手などの勝負師の方の言うことは、深い話が多いと思います。真剣勝負により感覚が研ぎ澄まされるからでしょうか。 

この、良くするために、あえて悪くするという考えは、いろいろな分野に応用できると思います。

2021年2月24日水曜日

システムデザインについて

年をとりますと老化現象なのか、新しいものを否定的に捉えるようになります。

最近、否定的に考えていますのが、空飛ぶ自動車です、最近いろいろなところで話題になっておりますが、安全性や騒音、航続距離を考えますと、実用化は難しいと思います。

ただし、これは老化現象なのか、それとも単に知識が足りないのか、よくわからないため、空飛ぶ自動車の解説書を買ってみました。

題名は「空飛ぶクルマのしくみ」という2000円の本となります。題名からわかるように専門書というより入門書という感じの本となります。

この本では、空飛ぶ自動車を単なるメカニズムとしてとらえるのではなく、システムデザインからとらえています。

システムデザインとは、初めて聞いた言葉ですが、「システム」は複数の要素が相互作用するとき、その全体のこと、「デザイン」は、システムをつくるときの設計図、設計行為、だそうです。

つまり、システムデザインとは、複数の要素の相互作用全体の設計図・設計行為、となると思います(でよいのでしょうか?)。

空飛ぶクルマの場合の要素には、メカニズムや制御系のみならず、サービス、使い勝手みたいなものも要素となりますし、法律(道交法?、航空法?)なども要素に含まれます。

要は、メカのみならず、その他関連する要素もあわせてデザインするのがシステムデザインというのかと思います。

システムデザインのアプローチによれば、空飛ぶクルマが完成しますと合わせて、市場性や法適合性もデザイン完了しておりますので、プロジェクトの失敗が少なくなると思います。

この話を聞いて思い出しますのが、MRJのプロジェクトです。MRJはメカ的には完成しておりましたが、米国の航空法に適合する構造となっておりませんでしたの、設計変更が生じ、これにより完成が遅れ、コロナの影響により、プロジェクト中断という残念な流れとなりました。

MRJもシステムデザイン的な考えをしていれば、失敗しなかったかもしれません。まあ、後知恵ですが・・・。

さて、空飛ぶクルマですが、あくまでも私見ですが、電気自動車と同様に、人が乗ることにとらわれすぎのような気がします。

空飛ぶクルマについても、無人化すれば、結構用途が拡大すると思いますが、人を乗せることを考えますと、用途は特殊用途しかないと思います。

無人化の空飛ぶクルマとは、すなわち、ただのドローンかもしれませんが・・・。まあ、予想が外れますと、かっこ悪いので、これ以上は、言わないでおきます・・・。

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