2012年3月24日土曜日

ノウハウの管理について

近年、企業内の技術的なノウハウを秘密情報として管理することが求められています。

これは、ノウハウも企業の重要な知的資産であり、不正競争防止法上の保護を受けるためには適切に管理する必要があるからです。

したがって、取引先に技術情報を開示するときや、従業員が退職する際などには、ノウハウに関する秘密保持契約を結ぶ必要があります。

さて、この場合、客体としてのノウハウをどのように特定すればよろしいでしょうか。

例えば、「~に関するデータ」や「◯◯装置に関する情報」など概括的な特定の方法があると思います。ただし、ノウハウ部分以外も含む広い表現となりますので、秘密保持義務が過大となる可能性があります。

また、「Xノートに記録された情報」、「Yメモリーに格納された情報」など媒体で特定することも考えられます。この場合も上記と同様の問題があります。

特定法の一つとしては、特許明細書と同様のフォーマットでノウハウに関する明細書を記載することが考えられます。

明細書化することにより、ノウハウの範囲の解釈に、判例の蓄積がある特許明細書の解釈手法を流用できますので、ノウハウの範囲を明確に定めることが可能となります。

なおかつ、特許発明とノウハウとが同一フォーマットで作成されるため、会社内の特許・ノウハウを含めた技術ポートフォリオの管理やノウハウ創作者の特定が容易となるでしょう。

さて、ノウハウの明細書の記載はどうあるべきでしょうか。特許庁で審査を受けるわけではありませんので、ある程度簡略化してもよいと思います。ただし、特許法の要件(新規性、記載要件)はある程度満たすような記載とした方が、後々役に立つと思います。

例えば、ノウハウの範囲につきましては新規性を満たすことを特許調査により確認したほうがよいと思います。これは不正競争防止法上の秘密情報として保護されるためには、非公知性の要件を満たす必要があるからです。

また、非公知性を確認することにより、法上保護されない不要なノウハウを管理することを避けられ、管理工数を削減することが可能となります。

実際問題としてノウハウの明細書を作成することは、コスト的に厳しいため(弁理士に頼めば1件20~30万円必要)、すべてのノウハウに適用することは難しいと思いますが、重要な案件についてはトライされてみてはいかがでしょうか。

2012年3月17日土曜日

TOPページの写真について

今は沢山の方がブログを書かれていて、中には非常にセンスを感じさせるデザインが見受けられます。

個人的にはシンプルなデザインが好きなのですが、私はページ作成の技術がないため、ブログの機能に依存するページ作りとなり、結局ごちゃごちゃしたページとなってしまいます。

ということで、デザインが悪化することがわかりつつもトップページに写真を入れてみました。(2012.4.2追記:うまく表示できないようですので写真は削除いたしました。すいません。)

この写真は私がNikonのP300で撮影した戦艦三笠です。よくみると、マストにZ旗が掲げられていることがわかると思います。 このお正月休みに横須賀で撮影してまいりました。

戦艦三笠が活躍した戦争といえば日露戦争ですが、当時のロシアと日本との間には27倍もの国力の差があり、普通に戦争を行えば勝ち目はまったくないといえると思います。

しかしながら、結果としては何とか勝利(ほぼ引き分け)の状態にまで持ち込んだわけで、当時の日本人の優秀さには感服してしまいます。

日本が勝利した要因の1つとしては、満州地域の局地戦に持ち込んだことがあると思います。

日本とロシアとの間には何倍もの戦力差がありましたが、ロシアは広い国土に戦力を分散させておりましたので、満州という局地でいえば日本の方が戦力が上回る状態を作り出すことに成功しました。

そういう意味では日本は、敵を上回る戦力を投入する、という基本に忠実な戦略を実行したといえるでしょう。

さて、戦争を持ちだして企業経営を語ることも不謹慎とは思いますが、中小企業が大企業に対抗するには同じような戦術を取る必要があると思います。

つまり、特定の技術分野にリソースを投入し、大企業よりも戦力で上回る状態を局地的に作り出すことが必要でしょう。

選択と集中といわれますが、単に集中するだけではなく、人員、投資額、特許権の数、など、客観的な数字で上回る必要があると思います。

戦艦三笠の船体には、戦歴を記録したプレートが取り付けてあります。


少々見にくいですが、この船は引退までのすべての戦いに勝利していることがわかります。 戦いに勝つには優れた戦略があったことはいうまでもないでしょう。

2012年3月15日木曜日

サービスイノベーションについて

私は以前、メーカーで技術者をしておりました。メーカーでは技術開発が重要な活動となります。これは、他社と差別化した製品を開発することにより、売上を増大するためであることはいうまでもありません。

今は転職して、どちらかといえばサービス業をやっております。最近感じることは、サービス業でも新製品を開発することの必要性です。既存のサービスの提供では、他社と差別化できませんし、大きな会社相手では勝ち目がありません。

ただし、せっかく新サービスを開発しても模倣されやすいという欠点があります。製品の場合には、特許網を築くことにより参入障壁を築けます。一方、サービスは人為的取り決めでありますので、自然法則を利用しておらず、特許権を取ることが無理な場合があります。

それではサービスの模倣を防ぐににはどうすればよいでしょうか?

まずは、サービスの一部をクローズド・ブラックボックス化し、他者から見えなくすることが考えられます。牛丼チェーンでいえば、フランチャイズというビジネスモデルを選択しつつも、牛丼のレシピは外部に公開しないことにより、ビジネス全体の模倣を防ぐという考えです。

レシピについて秘密として管理すれば不正競争防止法による保護が可能ですし、マニュアル化すれば著作権法で守ることも可能と思います。

また、 ビジネスモデルの一部にコンピュータによる情報処理が行われる部分があれば、特許権による保護を受けることも可能かと思います。牛丼チェーンでいえば、コンピュータによる在庫管理システムなどが特許権化できる可能性があります。

さらに、サービスをブランド化できれば、単なる模倣業者に対しては優位な位置を占めることも可能でしょう。もちろんサービスマークについては商標権をとっておきます。

このように、サービスについても知財を組み合わせることにより、完全とはいえませんがある程度模倣を防ぐことが可能です。

私のビジネスでいえば、商標として「御社の知財部」というのは確保しましたが、その他のサービスの開発はまだまだです。クローズドの部分を如何にして作るか考えどころです。

2012年3月7日水曜日

参入促進のための知財について

特許権をとる意味としては他社に対する参入障壁を築くことがあります。

これは、自社技術について独占排他権である特許権を多数取得して特許網を築くことにより、他社が自社事業に侵入することを防止し、事業を独占するという考えです。

大企業の場合には多数の特許出願を行うことができるため、特許権による参入障壁を築くことが知財戦略の基本となります。

一方、中小企業の場合には、多数の特許出願を行うことができないため、完全な参入障壁を築くことはできません。したがって、特許出願をしても無駄になることが多く、特許出願の意義について疑問をもつ企業も多いのではないでしょうか。

しかしながら、特許権というものは参入障壁という機能を持つだけではなく、参入促進という機能も持つことにも留意が必要です。参入促進機能としては以下のようなものがあるかと思います。

1つ目は、他社から権利行使されにくくなることです。中小企業が新規事業に参入する場合には、既にその事業領域に存在する企業から特許権の行使等の妨害を受けることとなります。

その場合、必須特許を1、2個持っていれば、 他社から権利行使される可能性が低くなります。なぜなら、こちらには必須特許があるので、訴えられたら訴え返せばよいからです。訴訟合戦を防ぐためにも相手は権利行使に慎重になるでしょう。

2つ目は、アライアンスの目安となることです。大企業は常に特許情報に目を光らせてますので、特許出願を行うことにより、自社の技術が大企業の目に留まる可能性があります。技術の補完効果が高ければ大企業とのアライアンスにより、その技術分野に参入することができます。

3つ目は、銀行から融資を受けやすくなることです。必須特許をいくつか保有していれば、会社の技術力の証明になりますし、事業が成功する可能性も高まりますので銀行から融資を受けやすくなります。資金力があれば新規参入も容易になるでしょう。

このように、中小企業の場合には、特許権の参入促進機能が今後は重要となると思います。

また、中小企業の特許戦略は、ただ特許出願を沢山だすのではなく、必須特許に絞って、効果的に出願を行うことが重要と思いますので、特許戦略を立てる場合には参考にしていただければと思います。

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