2012年10月20日土曜日

iPS細胞と国内優先権制度について

ものつくり革新ナビに特許出願及び権利化の戦略について投稿しました。

iPS細胞のような、不確実性の高い技術の特許出願の参考となると思いますので、是非ご参照ください。

(記事はこちらです)
http://www.monodukuri.com/jirei/article/42

この記事を書く際に表現に困ったのが、国内優先権制度の取り扱いです。

国内優先権制度とは、すでに出願した自己の特許出願(先の出願)の発明を含めて包括的な発明として優先権を主張して特許出願(後の出願)をする場合には、その包括的な特許出願 に係る発明のうち、先の出願の出願当初の明細書等に記載されている発明について、新規性、進歩性等の判断に関し出願の時を先の出願の時とする規定です(特許法第41条)。

利用の態様として、以下の例が「特許法概説」 に挙げられています。

(1)単一性利用型
関連のある発明を一つの出願にまとめる手法です。

(2)上位概念抽出型
複数の下位概念の発明をまとめて上位概念化し、発明の範囲を広げる手法です。

(3)実施例補充型
実施例を追加して明細書の記載を充実させる手法です。

具体的な利用の局面としましては、製品発表が迫っている、又は、論文発表が迫っているときに、明細書作成の時間がない場合や、必要なデータが揃っていない場合に、とりあえず手持ちの情報で先の出願を行い、上記(1)~(3)の記載を補充した後の出願を後日行うケースがあります。

これにより、新規性が失われる前に先の出願が行われることになりますので、一安心ということになるはずでした・・・。

しかし、ある判決を境に、 国内優先権制度の有効性について疑問が生じることになりました。

その事件とは、東京高裁平成14(行ケ)539審決取消「人工乳首」事件(裁判所ホームページ)です。

判決の内容についてざっくり申しますと、後の出願で新たに追加した実施例によって、先の出願と後の出願の間に出願された他社の出願に基づいて拒絶されてしまいました。

簡単にいえば、実施例を追加することにより拒絶理由が生じる場合があるということです。

ということで、今後は、国内優先権制度を利用する際には、先の出願の内容を充実させる、ことや、後の出願もできるだけ早く行う、などの対処も必要となるかと思います。

ちょっと細かい話でしたが、 国内優先権制度を利用する際には留意下さい。

2012年9月15日土曜日

標準品とネット販売について

毎日使っている電気ひげそりの切れ味が悪くなって来ましたので、新しい替刃を注文しました。昔は家電量販店で買っていましたが、最近はもっぱらAMAZONで買ってます。

ネットショップが気軽に利用できるようになった背景としましては、インフラが整備されたこともありますが、一番の理由は、製品の標準化が進んだことがあると思います。

製品の標準化が進むと品質が安定しますので、家電量販店で買ってもAMAZONで買っても、期待通りの性能の製品を手に入れることができます。

後は、価格が安いことが選択の基準となり、結果として一番安いネットショップが選択されることになります。

我が家の近くにある家電量販店も8月で店じまいしてしまいましたが、家電の多くは標準化が進んでますので、ネットショップに勝てなくなって来ているのではないでしょうか。

但し、標準化されていない製品については、ネットショップで買うわけには行きません。例えば、エアコンや洗濯機は、家に備え付けてもらう(すり合わせ)作業が必要ですので、家電量販店で買うことになります。

また、同様に家具や洋服なども実際に自分の家やからだに合わせて見る必要がありますので、量販店が強いと思います(これらの欠点を解消したネットショップもあるようですが・・・)。

製品の標準化に合わせてビジネスモデルも変化させてゆく必要が有るようです。

さて、AMAZONで替刃を検索しましたら、正規の製品以外にも並行輸入の製品やら非正規の製品も多数ひっかかりました。このような標準品の販売戦略について次回考えたいと思います。

2012年9月1日土曜日

スマホと中小企業の経営について

私はいわゆるガラケーを長年使用しておりますが、そろそろスマホもよいかと思い、ドコモショップをのぞきに先日行って参りました。

少々驚きましたのが、外国製の商品でほぼ半分を占めており、日本製もあることはあるのですが存在感が薄いようでした。

ハイテク製品といえば昔は日本の独壇場でしたが、最近はそうでもないようです。その理由はいくつかあると思いますが、製品のネットワーク化が進んだことがあると思います。

ネットワーク型の製品は相互に接続が可能なように設計されるため、製品の仕様としては、類似若しくはほぼ同一とならざるを得ません。

これでは製品の機能による差別化がしにくく、価格による差別化のみ可能となります。そのため、安く製造できる中国、韓国製品が競争力を有することになります。

これを避けるためには、ネットワーク型の製品から撤退して、スタンドアロン型の製品に注力することが考えられます。

スタンドアロン型の製品には自動車や一眼レフのカメラなどがありますが、これらは特定のプラットフォームに縛られることはありませんので、製品自体で差別化ができます。

さて、中小企業の経営でも同じことがいえるのでなないでしょうか。大企業の下請けの仕事は、大企業に製品の仕様を規定されてしまうため、製品の差別化がしにくく、やはり価格競争に巻き込まれやすいと思います。

したがって、中小企業でも、下請けの仕事を減らして独自製品の開発を行うことが、価格競争に巻き込まれないようにするためには重要でしょう。

2012年8月27日月曜日

中小企業の特許情報の活用について

ものづくり革新ナビに、知的財産マネジメントの技法に関する記事を投稿いたしました。

マクロ分析、セミマクロ分析、及び、ミクロ分析の概要について説明させていただきましたのでご参考に願います。

(記事はこちらです)
http://www.monodukuri.com/gihou/article/87

さて、特許情報解析は大企業では広く活用されておりますが、中小企業ではあまり活用されておりません。 その理由はいろいろありますが、理由の一つとして中小企業特有の問題があります。

特許情報解析といいますが、簡単にいえば、「自社の特許出願」と「他社の特許出願」とを「比較」して「一致点」と「相違点」を見出す、ことが最初の作業内容となります。

大企業の場合には、「自社の特許出願」の数が充分にあるため、他社との比較が容易にできます。

一方、中小企業は特許出願の数が少ないため他社との比較が難しく、有意義な特許情報解析を行うことができません。

出願件数が5件程度であれば母集団を小さくするなど工夫して特許情報解析を行うことも可能ですが、出願件数0の場合には自社の出願を含めた分析はできません(他社の分析はできますが・・・)。

中小企業でも自社出願を地道に行うことにより、特許情報を活用することが可能となりますので、自社のコア技術については何件か出願しておくことをおすすめします。

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