強いものが生き残るのではない。変化するものが生き残る、という有名な名言があります。ダーウィンの言葉と言われてますが、実際には言った事実は無いようです。
よくこの言葉を引用して、日本の企業は変化しないからダメなのだとか言われたりします。生き残るには変化しなければいけないな、と思ったりもします。
しかし、本当に変化することがよいことなのでしょうか?
この言葉をさらに正確にいえば、変化する生物は「大部分は死滅するが、ごく稀に」生き残る、となると思います。
なぜなら、変化が環境に適合できるかどうかは、偶然に頼るしかないからです。ただし、生き残った生物は、環境に最高度に適合し、既存の生物を淘汰してゆくでしょう。
そう考えると日本企業が変化しない理由もわかります。それは変化すると会社が潰れるリスクが高まるからです。
日本では会社が潰れると、社長は会社の債務の連帯保証人となっていたり、従業員も年金、退職金が減額され、個人の生活に大きな影響がありますので、何としても避けなければなりません。
一方、アメリカなどでは会社を潰すことに対する抵抗感は日本ほどありませんので、どんどん変化して、潰れる会社は多くとも、一部の環境に適合した強力な会社が誕生しやすいともいえます。
ということで、変化できるものが生き残るのは確かですが、それは、多くの生き残れないものの上になりたつ考えであることを冷静に考えて欲しいと思います。
2013年1月25日金曜日
2013年1月6日日曜日
液晶テレビについて
スピーカーの性能が低いのか、ボリュームを大きくしても声がよく聞き取れません。また、処理速度が遅く、番組表の表示やチャンネルの切替に微妙に時間がかかり、とてもいらいらしました。
これらの液晶テレビは当然日本製ではなく、メーカーもよく知らないテレビでした。なぜこのようなテレビがホテルに据え付けられることになるかというと、単に安いからです。
これは日本のホテルに限らず、安い液晶テレビは全世界的に受け入れられており、高性能の日本の液晶テレビが苦境に立っているのはご存知のことと思います。
思えば、日本のものづくりはひたすら高性能化を図る技術開発が行われてきました。それにより、1990年前後には日本の製造業は世界を席巻するレベルに達しました。
この成功体験をひきずって、今でも技術力重視の製品開発が行われていると思います(私は、製造現場から離れて10年立ちますので、この部分は私の推測です。間違っていたらすいません。)
しかしながら、技術力を考える場合には、もうひとつ世の中のニーズとのマッチングを考える必要があると思います。
図のように、企業の開発活動により技術力は急激に高まりますが、世の中のニーズは、ゆるやかに高まりますので、ある時点で需要者が技術力の向上のありがたさを感じにくくなります。
日本でいえば、電気製品や自動車の性能向上は、1990年くらいまでは非常に意味があるものでしたが、それ以降は、高性能は逆にコスト増大要因となり、結局安く製造できる、新興国の製品がありがたがれることになりました(いわゆる、イノベーションのジレンマ)。
したがって、日本の製造業が復活するには、少々やり方を変える必要があると思います。
例えば、世の中のニーズを満たすほどに技術が進化していない他の分野へ進出するとか、技術力が十分な分野については、ニーズを満たす範囲で性能を落とし、コストを低減した製品を販売するなどです。
安いホテルの安い液晶テレビも1晩テレビを見る分には我慢ができるレベルと思いますので、こういう割り切りも必要なのかと思います。真面目に開発に取り組んでいる技術者の方には面白くないかもしれませんが・・・。
2013年1月2日水曜日
2012年12月19日水曜日
法律文章について
(記事はこちらです)
http://www.monodukuri.com/jirei/article/50
この事件は、日清食品がサンヨー食品を相手取って起こした訴訟ですが、まず、日清食品の特許の請求項をみてみましょう。
【請求項1】 複数の麺線が重なり合って略扁平な束になった即席麺用生麺であって、 前記生麺は、麺生地から切り出され、コンベア上で、当該コンベアの搬送方向に向けて配列されて製造されるものであり、 前記生麺を構成する各麺線は、前記コンベア上で屈曲しつつ繰り返し輪を描き、 前記輪は、前記コンベアの搬送方向と逆方向に順次ずれながら配置され、 前記各麺線の描く軌道は、隣り合う麺線の描く軌道と同調せず、 前記各麺線は、前記各麺線中の輪の位置が隣り合う麺線の輪の位置とずれた状態で、相互に交差して重なり合っており、 その重なり合った状態のまま蒸煮され、延伸され、切断され、乾燥されると、湯戻し時に麺線が略直線状となることを特徴とする、前記束になった即席麺用生麺。(特許第4381470号)
少々長くてわかりすらいですが、この請求項には、 「コンベアの搬送方向に向けて配列されて製造される」という製法の記載があることに注目ください。
この発明は「生麺」という物の発明ですが、製法で物を特定する記載を含む請求項をプロダクト・バイ・プロセス・クレームといいます。
物の発明は、形状や構造で特定すべきでありますので、このような製法で物を特定する記載は、発明が不明確となり一般的には好ましくはないとされます。
では、なぜこのような記載となってしまったのでしょうか?
出願経過をみてみますと、この出願に関しては、早期審査の事情説明書が提出されております。
そこには、「請求項1に記載された即席麺用の生麺の束を用いて、請求項2に記載するような製造方法に従って製造した即席麺を平成20年9月頃より商品として製造・販売しています。」とあります。
この出願は平成21年2月に出願されてますので、出願人自ら、早期審査の事情説明書において、本願発明は公然実施された製品と自白してしまっています。
当然、拒絶理由として特許法第29条第1項第2号が通知されますので、この拒絶理由を解消するために、製品を見ただけではわからない製造方法を請求項に加えて、特許になった、というのが実際のところのようです。
ただし、特許されたものの、物の発明の特許性は、結果物で判断されるのが原則であり、製法は考慮されないのが原則であることを考えると、無効理由を含んでいる可能性もあります。
また、他の製法(例えば、コンベアを用いない製法)の麺には権利行使できない可能性が高いので、はたして、特許権侵害を立証できるか不確かな部分もあります。
法律文書に使用する用語は様々な効果を生じることを考えると、不用意な表現を用いることは危険であり、早期審査の事情説明書のような、重要性の低い文章でも、注意が必要ということがわかります。
少々固い話でしたが、一度提出した文章は撤回がむずかしいことを考えると、充分に注意して文章を作成したいものです。
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