2025年3月8日土曜日

「量より質」って本当?~歴史から学ぶ特許戦略のヒント~

 最近、特許の世界でよく聞く言葉があります。

「量より質が大切です!」

確かに、いいことのように聞こえますよね。でも、ちょっと待ってください。本当にそうなんでしょうか?

昔の日本はすごかった!

実は、日本には「特許出願件数世界一」だった時代があるんです。そして、その頃の日本経済は世界でもトップクラスの強さを誇っていました。

「量は質を生む」っていう言葉、ご存知ですか? もしかしたら、当時の日本は、世界一の特許出願数(量)があったからこそ、世界一の経済力(質)を手に入れることができたのかもしれません。

歴史から学ぶヒント

ここで、ちょっと歴史の話をさせてください。 (戦争の話で恐縮ですが、とても分かりやすい例なんです)

日露戦争の時、日本の指導者たちは何を考えていたと思いますか? 実は、「とにかくロシアと同じくらいの数の戦力を持とう!」ということに必死だったんです。

  • 陸上戦力を20万人くらいに
  • 戦艦も5隻くらいに

国の予算をかなり使って、この数字を実現したんです(その分、国民は大変だったみたいですが...)。

そして面白いのは、この「数」が揃ってから、はじめて質の勝負ができたということ。

  • イギリス製の高性能な戦艦
  • 良質な石炭
  • 熱意あふれる日本兵

こういった「質」の面での強みを活かすことができたんです。

逆に、太平洋戦争ではどうだったでしょう? アメリカの圧倒的な物量の前に、質の勝負にすら持ち込めませんでした。

何が言いたいか?

この歴史から、二つの大切なことが見えてきます:

  1. 量があってこそ、質も育つ
  2. 質が効いてくるのは、量が十分にある時

今の日本企業は大丈夫?

実は、最近の「量より質」という話には、ちょっと怪しいところがあるんです。

バブル崩壊後、多くの日本企業は経費削減に走りました。その時の言い訳として、「量より質」という理屈が使われたんじゃないか...というのが私の見方です。

その結果どうなったか? たくさんの特許を出願し続けているアメリカや中国の企業に、どんどん追い抜かれているんです。

まとめ

「量より質が大切」

確かにその通りなんです。でも、それは「十分な量がある」という前提があってこその話。量を無視して質だけを追求しても、うまくいかないかもしれません。

特許戦略を考えるとき、まずは「必要な量」をしっかり確保すること。そこから質を高めていく。そんな順番で考えてみてはいかがでしょうか?

2025年3月1日土曜日

「製造方法は特許出願しちゃダメ?」という迷信について考えてみた

「製造方法は特許出願しないほうがいいよ。秘密にしておくべきだよ」

よくこんなアドバイスを聞きませんか?一見もっともらしく聞こえますよね。でも、ちょっと待って!本当にそうなんでしょうか?

怖い話:もしライバル企業が特許を取っちゃったら...

例えば、こんなシナリオを想像してみてください:

あなたの会社が何年も前から使っている製造方法。ところがある日、ライバル企業がその方法の特許を取っちゃった!

「えぇ!?うちが先に使ってたのに!」

そうなんです。実は、先に使っていても、形式上は特許権の侵害になっちゃうんです。

「でも先使用権があるから大丈夫でしょ?」

そう思いますよね。私も最初はそう思っていました。 でも、先使用権を主張するのって、実はすっごく大変なんです:

  • 昔からの書類を全部保管しておく必要がある
  • 証拠集めが超面倒
  • 裁判になったら時間もお金もかかる

もっと怖い話:改良したら...?

さらに怖いのが、製造方法を改良したケース。 「ちょっと良くしただけ」でも、先使用権が使えなくなることも。そうなると... 「ライセンス料を払ってください」 って言われかねないんです。

「うちの技術は誰にも真似できない!」って本当?

そう思いたい気持ち、分かります。でもね:

  • ライバル企業にも優秀な技術者がいっぱい
  • 技術の進歩は速い
  • 意外と同じアイデアを思いつくもの

実は昔の話が影響してるんです

「製造方法は出願しない方がいい」って考え、実はある時期に広まったものなんです。

昔々、特許庁が審査件数の多さに困って、「出願を減らしたい!」というキャンペーンをしたことがありました。その時に:

  • 「ノウハウは秘密にしましょう」
  • 「外国に技術が流出しちゃう!」 という理屈が広まったみたい。

(でも、外国流出が心配なら、外国でも特許取ればいいだけですよね...?)

企業側も「出願費用が節約できる!」と、この考えを受け入れやすかったのかも。

今は時代が変わってます

最近では:

  • 法律も変わって、製造方法の特許権を主張しやすくなった
  • むしろ特許を取ることで、ライバル企業の参入を防げる
  • 自社の権利をしっかり守れる

まとめ

「ノウハウだから出願しない」

この考え方、ちょっと古いかもしれません。大切な製造方法は、むしろ特許出願して守ったほうが安全な時代になってきているんです。

みなさんも、古い常識にとらわれすぎず、柔軟に考えてみませんか?


2025年2月22日土曜日

特許って不動産投資に似てる?~成功のカギは「先読み力」~

以前、「特許は土地みたいなもの」っていう話をしましたね。

お店を始めるときに土地を確保するように、新しい技術でビジネスを始めるなら特許も確保しておかないと、後から「それ、私の特許なんですけど?」って言われちゃうかもしれない...という話でした。

実は難しいんです、「どこに投資するか」

でもね、ここからが本当の悩みどころ。 「どの特許を取るべきか?」

これって、不動産投資でいうと「どの土地を買うか?」という悩みにそっくりなんです。

考えてみてください:

土地の場合:

  • 駅前の土地?→超高い!
  • インターチェンジそば?→これも高い!
  • 工場の近く?→需要があるけど、やっぱり高い!

当然、いい場所は値段も高いですよね。高すぎる土地を買って、その分を回収できないと意味がありません。

じゃあ、どうする?

賢い不動産投資家って、こんなことを考えます: 「この辺に将来駅ができるんじゃない?」 「ここに新しいインターチェンジの計画があるらしい」

つまり、将来の価値を予想して、今のうちに安く買っておくんです。

特許も同じ発想で!

特許だって同じ考え方ができます:

  • 将来どんな市場が生まれそう?
  • そこでどんな技術が必要になる?
  • 今のうちに特許を押さえておこう!

...という具合です。

でも難しいですよね、「予想」って

「10年先なんて分かるわけない!」

そうなんです。正直、外れることもあります。 だからこそのポイントは...

ある程度外れることを覚悟で、たくさん出願すること!

例えば、100件出願して1件当たれば、全体の費用は回収できちゃったり。意外とギャンブル的な要素もあるんです。

「それって出願料稼ぎじゃない?」

時々こんな声も聞こえてきます: 「弁理士さんが儲けたいから、そんなこと言うんでしょ?」なんて声を聞くことがあります。

でも、ここで要注意なのが「私の予想は絶対に当たる!」「最小限の出願で十分!」という考え方。

実は、これってかなり危険な発想なんです。なぜなら:

  • 技術開発のスピードは年々加速している
  • 競合他社の動きは予測が難しい
  • 市場ニーズは急激に変化することも
  • 一つの技術が思わぬ分野で活用されることも

実際、「これは間違いない!」と思った予測が外れたり、「こんな使い方があったのか!」という想定外の活用方法が生まれたり...。そんな経験、誰にでもあるはずです。

だからこそ、ある程度の「分散投資」的な考え方が重要になってくるんです。


まとめ

特許って、ある意味「技術の不動産投資」みたいなもの。

将来を見据えて、今のうちに権利を確保しておく。でも、予想が外れることもある。だからこそ、ある程度の"分散投資"も大切。

なかなか難しい判断が必要ですが、これも経営の醍醐味かもしれませんね!

2025年2月18日火曜日

生成AI活用による知財業務効率化・特許分析セミナーのご案内

 【AI時代の知財業務を革新する】

生成AI活用による知財業務効率化・特許分析セミナー

知財業務の新時代が始まっています。生成AI(大規模言語モデル)の台頭により、特許分析や明細書作成の手法が大きく変わりつつある今、その波に乗り遅れないためのスキルが求められています。

本セミナーでは、知財分野での豊富な実務経験を持つ川上成年氏が、ChatGPTなどの生成AIを活用した最新の特許データ分析手法から、業務効率化のための実践的なテクニックまでを、分かりやすく解説します。

◆セミナーのポイント

・生成AIの基礎から実践的な活用方法まで、体系的に学べます

・特許データ分析における生成AIとテキストマイニングの融合手法を習得

・実務で即活用できるプロンプトエンジニアリングスキルの習得

・GPT4o-mini APIを用いた大量データ処理の自動化テクニック

◆こんな方におすすめ

・知財部門で業務効率化を推進したい方

・特許分析の新しい手法を模索している方

・生成AIを活用した知財戦略の立案に興味がある方

・基礎から実践まで体系的に学びたい初心者~中級者の方

日時:2025年02月28日(金)13:00~17:00

形式:WEBセミナー(Zoom使用)

受講料:非会員 49,500円(税込)/ 会員 46,200円(税込)

定員:30名(先着順)

【講師プロフィール】

川上成年氏(株式会社知財デザイン 代表取締役)

弁理士として豊富な実務経験を持ち、AIやデータ分析を活用した知財戦略のエキスパート。著書に「ChatGPTでできる特許データ分析入門」など多数。

お申し込み・詳細はこちら:

知財実務者のためのAI活用セミナー:生成AIで実現する業務効率化とデータ解析【LIVE配信】

※本セミナーは、貴重な実践的知識が満載の4時間です。よろしくお願いいたします。 

2025年2月15日土曜日

特許出願が拒絶...でも実は悪いことばかりじゃないんです!

「特許出願が拒絶されました...」

この知らせを受け取ったとき、がっかりしますよね。お金と時間をかけたのに...と落ち込んでしまう方も多いと思います。

実は私、特許の仕事をしていて、よく聞く声があるんです。 「出願費用が無駄になった!」 「お金返して!」

でもちょっと待ってください!

実は、特許出願が通らなかったことにも、悪いことばかりではないんです。今日はその「意外な価値」についてお話ししたいと思います。

拒絶査定で分かる3つの大切なこと

1. 「今の立ち位置」が分かる!

特許が通らなかったってことは、実は「似たような技術がすでにたくさんある」というサインなんです。

つまり...

  • 今の技術レベルが「普通」だということが分かる
  • 「もっと頑張らないと!」という具体的な目標ができる
  • 次の開発の方向性が見えてくる

2. 「これ、やっていいんだ!」が分かる

「特許が取れなかった」=「他の会社も特許は取れない」

...ということは?そうです!その技術、基本的に誰でも使えるってことなんです。 (※ただし、他の特許に引っかからないか、確認は必要です)

確かに権利は持てませんが:

  • ビジネスはできる
  • 開発した技術が使える
  • 市場参入のチャンスがある

3. 「将来の特許」も防げちゃう!

実は、拒絶された特許出願でも公開されるんです。そして、この公開された情報には大きな力があります。

どんな力かというと:

  • 後から似たような特許を出そうとする人の「壁」になる
  • 他社が似た技術の特許を取りにくくなる
  • つまり、「未来永劫」似たような特許の発生を防いでくれる

結局どう考えればいいの?

特許出願が通らなかったからって、すべてが無駄になったわけじゃないんです。

もちろん、いつも拒絶されてばかりじゃマズイですよ。でも、たまには「拒絶」も、技術開発やビジネス戦略のヒントをくれる大切なメッセージとして受け止めてみてはどうでしょうか?

「拒絶」は終わりじゃない。むしろ、次の一歩を考えるチャンスかもしれませんよ!

2025年2月12日水曜日

AIと知財の新時代を切り拓く!実務者向け特別セミナーのご案内

特許実務におけるAI活用が急速に進む中、最新の生成AI技術を実践的に学べる特別セミナーを開催いたします。本セミナーでは、特許出願から特許データ分析まで、実務で即座に活用できるスキルを、hands-onで習得していただけます。

【セミナー概要】 日時:2025年3月25日(火)13:00~17:00 テーマ:AI×知財の最前線:特許出願からデータ分析まで実務で使える生成AI講座

【カリキュラムのハイライト】

■生成AI基礎と知財業務への応用 最新のGPT-4やClaude、Gemini 2.0 Flashなど、話題の生成AIツールの基本から実践的な活用方法まで、知財業務に特化した形で解説します。特許明細書作成から特許マップ作成まで、業務効率を劇的に向上させるテクニックをご紹介します。

■実践!特許出願×生成AI 発明提案書作成から中間処理まで、特許出願の全プロセスにおけるAI活用術を実演します。Claude 3.5 SonnetやChatGPT 4o with canvasなど、最新ツールを使った効率的な文書作成テクニックを、実例を交えながら詳しく解説します。

■データ分析の最新手法 ChatGPT4oを使った特許データの分析手法や、APIを活用した大量データ処理など、データサイエンスの視点から特許分析を効率化する方法をお伝えします。Pythonとの連携など、より高度な活用方法についても触れます。

本セミナーの特徴は、理論だけでなく、実際の業務フローに沿って、具体的なツールの使い方や実践的なテクニックを学べる点です。ローコストで導入できる生成AIツールを中心に、明日から使える実用的なスキルを身につけていただけます。

知財実務のデジタルトランスフォーメーションに関心をお持ちの方、業務効率化をお考えの方は、ぜひご参加ください。質疑応答の時間も設けておりますので、日頃の疑問点について直接質問することも可能です。

※詳細な内容や申し込みについては、公式案内ページをご確認ください。

「AI×知財の最前線:特許出願からデータ分析まで実務で使える生成AI講座」

皆様のご参加を心よりお待ちしております。よろしくお願いいたします。

2025年2月8日土曜日

「先使用権があるから大丈夫」って本当?~特許出願との比較で考えてみた~

「新製品を出すんだけど、特許出願って費用かかるよね~。先使用権があるから大丈夫でしょ?」

よくこんな声を聞くんです。でもちょっと待って!そんなに甘くないですよ。今日は先使用権の意外と知られていない「お金と手間」の話をしてみたいと思います。

先使用権って、そんなに簡単じゃないんです

「先使用権があります!」 「はい、そうですか。では引き下がります」

...こんな展開、残念ながら現実にはありません(笑)

実は先使用権って、裁判所が「あなたにはその権利がありますよ」って認めてくれて、はじめて確定する権利なんです。つまり...

  • 地方裁判所で戦う
  • 負けたら高等裁判所に控訴
  • 場合によっては最高裁判所まで行くことも

考えただけでも大変ですよね?

証拠集めが超大変!

「じゃあ、証拠をしっかり残しておけばいいんでしょ?」

そう、その通りなんです。でも、これがまた大変なんです。必要なものを見てみましょう:

  • 伝票は全部保存
  • 実験ノートもちゃんと保存
  • 会議の議事録も取っておく
  • これら全部に確定日付やタイムスタンプも必要

しかも、これらの資料を保管する場所も必要です。倉庫代もバカにならないですよね。

特許出願との比較

ここで考えてみましょう。

特許を出願する場合:

  • 一回の費用で済む
  • 権利化されれば強い味方に
  • 管理も比較的シンプル

先使用権に頼る場合:

  • 証拠集めの手間が大変
  • 保管場所も必要
  • 裁判になったら費用も時間もかかる

じゃあ先使用権って意味ないの?

いえいえ、そんなことはありません!

先使用権が特に有効なのは:

  • 企業秘密として守りたい技術がある場合
  • 他社に真似されたくない製造ノウハウがある場合

ただし、こういった場合でも、あれもこれもと先使用権で守ろうとすると大変なことに。本当に重要な技術に絞って考えるのがポイントです。

まとめ

「特許出願の費用がもったいないから先使用権で」

一見そう思えるかもしれません。でも実は、手間やコストを考えると、特許出願の方が「お得」かもしれないんです。

特許出願するか、先使用権で守るか。技術の性質や重要度を考えながら、賢く選んでいきたいですね!

2025年2月1日土曜日

『土地がないのに店を出すの!?』特許のない商売も同じですよ、というお話

皆さん、特許ってなんのためにあるか考えたことありますか?

「そりゃ、まねされないためでしょ?」 「模倣品が出たら訴えるため?」

よくこんな声を聞きます。確かにその通りなんですが、実はそれだけじゃないんですよ。

「でもうちは訴訟なんてする気ないし、まねされても仕方ないから特許なんていらないよ」

こんな声も時々聞きます。一見もっともらしく聞こえますよね。でも、ちょっと待ってください!それって特許の大事な役割を見落としているかもしれません。

特許の本当の価値って?

特許には実は2つの大切な役割があるんです:

  1. まねされたときに文句が言える権利(これは皆さんご存知ですよね)
  2. 自分の事業を守るための「土地」(ここが重要!)

特に2番目の「土地」という考え方、ちょっとピンとこないかもしれませんね。じゃあ、身近な例で考えてみましょう。

ラーメン屋さんの話で考えてみよう

例えば、あなたがラーメン屋さんを開こうとしているとします。

繁華街で良い場所を見つけて、はりきって店舗を建てました。お客さんもたくさん来て、バリバリ商売繁盛!

...でもある日、突然知らないおじさんが来店。 「すみませんが、この土地、実は私の所有地なんですよ。店舗、撤去してもらえます?」

え゛っ!?

さらに「これまでの土地の使用料も払ってくださいね」なんて言われたら...最悪ですよね。

特許も同じなんです

実は特許も、このラーメン屋さんの土地と同じような役割があるんです。

技術を使ってビジネスをするなら、その技術の「土地」(=特許)をちゃんと確保しておかないと、後から「それ、私の特許ですよ?」って言われかねません。

もちろん特許があっても100%安全というわけじゃありません(法律の世界って複雑なので)。でも、特許を持っていれば、かなりの確率で安心してビジネスを続けられます。

「訴訟はしない」は理由にならない

「でもうちは訴訟なんてしないから...」

これって、「私は人の土地を奪ったりしないから、自分の土地の権利書はいらない」って言っているようなものです。

大事なのは、自分から訴えるかどうかじゃなくて、他の人から訴えられたときの「盾」になるってことなんです。

結局どうすればいいの?

特許って、ビジネスをする上での「土地」みたいなものです。

  • 攻撃的な使い方:他人の模倣を止めることができる
  • 防御的な使い方:自分の事業を守ることができる

だから、訴訟をする気がなくても、事業を安全に続けたいなら、やっぱり特許は取っておいた方が無難ですよ。

お店を出すときに土地を買うのと同じように、新しい技術でビジネスを始めるなら、その技術の「土地」(特許)も確保しておく。

そうすれば、せっかく軌道に乗ったビジネスを、突然の権利主張で止められる心配も少なくなりますからね。

特許って面倒くさそう...って思う方も多いと思います。でも、事業を守るための「保険」だと思えば、そんなに高い買い物でもないかもしれませんね。

2025年1月25日土曜日

「当たり前の技術になぜ特許が?」という疑問への回答

「こんな当たり前の技術に特許を与えてはいけない」

Xを見ていると、よくこんな意見を目にします。確かに一見もっともらしく聞こえますよね。でも、ちょっと待ってください。この考え方、実は特許制度の本質を見誤っているかもしれません。

なぜ「当たり前の技術」の特許が重要なのか?

実は、特許戦略において「当たり前の技術」こそが宝の山なんです。その理由を、現場の経験を交えてお話ししましょう。

1. 経済的価値は「実用性」で決まる

「当たり前」と感じる技術って、つまり「誰もが使いたい」技術ですよね。だからこそ、ビジネス的な価値が高いんです。特許の真の価値は技術の難しさではなく、市場での有用性にあります。

2. 高度な技術は特許より秘匿が有効なことも

逆説的ですが、すごく高度な技術って、実は特許化する必要性が低かったりします。理由は2つ:

  • 他社が真似できないので、権利化の必要性が低い
  • 特許を取ると技術内容が公開され、競合にヒントを与えてしまう

3. タイミングの問題

高度な技術には、もう一つ注意点があります。特許権の存続期間は出願から20年。技術が実用化される頃には権利が切れちゃう...なんてことも。これって、もったいないですよね。

4. 特許取得のリアル

「当たり前の技術なら誰でも特許が取れる」 ...そう思われがちですが、現実はそう単純じゃありません。

特許を1件取るのに必要な費用は、おおよそ100万円。

  • 弁理士への依頼費用
  • 特許庁への出願料
  • 審査請求料
  • 特許料...etc

もちろん、権利化も大変で、審査、審判、訴訟と戦う必要がでてくるかもしれません。

つまり、「当たり前」と批判する前に、自分で出願する覚悟があるかどうか。それが本当の分かれ目なんです。

特許戦略の真髄

実は、特許制度の本質は「画期的な発明の保護」だけじゃないんです。むしろ、実用的で広く使える技術を適切に保護することで、産業の発展を促進する。それが特許制度の重要な役割なんです。

だから私からのアドバイスは simple: 「これ、特許取れるかな?」と思ったら、技術レベルの高低にこだわらず、まずは出願を検討してみること。

結局のところ、批判は簡単です。でも、実際に行動を起こして、費用も負担して、特許を取得する。その過程を経験してこそ、特許制度の本質が見えてくるんじゃないでしょうか。

まとめ

「当たり前すぎる」という批判は、ある意味でその特許の価値を証明しているのかもしれません。だって、みんなが使いたいと思う技術だからこそ、そういう声が上がるわけですから。

特許の真の価値は、技術の難しさではなく、市場での有用性にある。このシンプルな事実を忘れないでください。

アイデアがあるなら、「当たり前かも」なんて思わずに、ぜひ特許出願にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

2025年1月18日土曜日

重要なのはIPづくり ~テレビ局の失敗から学ぶ、私たちの働き方~

最近、YouTubeである方の発言が面白かったので、みなさんと考えたいことがあります。その方が指摘していたのは、「今のテレビってバラエティばっかりで、IP(知的財産のこと)づくりができてないよね」ということ。

なるほど、確かに!と思いました。例えば、ドラマは一回作れば、再放送したり、映画化したり、続編を作ったり。いろんな形で活用できますよね。でも、バラエティって放送したらそれっきり。いわば"使い切り"なんです。

テレビ局さんも分かってるんでしょうけど、最近はテレビ離れもあって、お金のかかるドラマを作る余裕がない。だから低予算のバラエティに頼らざるを得ない。でもそれが、さらに視聴者離れを招いて...という悪循環に陥っているみたいです。

ここで「それって、私たちにも当てはまるんじゃない?」と気づきました。

私たちビジネスパーソンも、毎日バリバリ働いています。でも、その仕事って「フロー」の仕事、つまり"その場限り"になってないでしょうか?漫然と仕事をこなしているだけだと、10年20年働いても、手元に残るものが意外と少なかったりするんですよね。

だから私は、この10年くらい、意識的に「ストック」を作ることを心がけてきました。具体的には、仕事で得た知見を論文にまとめて発表するようにしています。

最初は「こんなの、誰が読むんだろう...」って思ってました。でも、続けているうちに少しずつ変化が。去年なんか、知財フェアで会った人や、マーケティング学会の授賞式で出会った方、それに知財学会やセミナーで声をかけていただいて。「論文読ませてもらってます」って言われることが増えてきたんです。

正直、すごく嬉しかった!地道にやってきたことが、少しずつ実を結んでいるんだなって。

みなさんも、日々の仕事の中で「これ、形に残せるかも?」というものがあるはずです。例えば:

  • 仕事のコツやノウハウをまとめる
  • 得意分野について記事を書く
  • 業務改善の仕組みを考える
  • ブログやSNSで専門的な情報を発信する

なんでもいいんです。大事なのは、今やっている仕事の中から「残せるもの」を意識的に見つけていくこと。それが、あなた自身の"IP"になっていくんです。

実は私、IPづくりの大切さに気づいたのは、ある本がきっかけでした。今でも時々読み返す大事な本です。よかったら、みなさんも読んでみてください:

『知ってなアカン!知的資産活用術』 https://amzn.asia/d/1xkkX2g

みなさんも、明日から少しずつでいいので、自分なりのIPづくりを始めてみませんか?きっと、数年後の自分に「やっておいてよかった!」って思ってもらえると信じています。

2025年1月3日金曜日

生成AIが示唆する知財業界の悲しい未来

2025年になりました!本年もよろしくお願いいたします!ということで、元気よく始めましたが、これからは暗い話題です。

先日、X上で、仕事がなくなった翻訳者の方のツィートが話題になってました(リンクは貼りませんが、検索すればすぐ出てくると思います。)

内容としては、生成AIが翻訳してしまうので、翻訳の仕事がなくなった、という話となります。

翻訳の仕事がなくなることは予期されていましたので、驚きはありませんが、いよいよこのような事態が現実化してきたと感じました。

知財業務が生成AIに置き換わり始めるのが2025年となるかと思います。以下は、私の悲観的な予想となりますので、当たらないかもしれませんし、当たらないでほしくもあります。

予想1:明細書作成業務

まず、生成AIに置き換わる可能性があるのが明細書作成業務となります。生成AIが生成する明細書は、現状大したことはありませんが、生成AIの能力の急速な発展を鑑みますと、そろそろ今年あたりから生成AIに置き換わり始めるのではないかと思います。

おそらく、明細書作成AI的なものが大企業を中心に普及を始めるのではないかと思います。そうしますと、明細書につきましては大企業を中心に内製化が進み、特許事務所へ依頼する件数が激減するのではないかと思います。

予想2:特許分析業務

特許分析業務も生成AIに置き換えが進むと思います。もともと分析自体はコンピュータが得意なところではありますが、それに生成AIの解釈能力が加わりますので、人間が太刀打ちできるところはまったくありません。

そうしますと、特許分析業務も大企業の内製化が進み、特許分析業者への依頼も激減するとと思います。

つまり、翻訳業界と同じように、明細書作成や特許分析をやっている人の仕事はなくなるのが2025年以降の宿命という悲しい未来がやってきます。

それでは、どうすればよいかも考えてみました。

1.若い人(20~30歳代)

若い人につきましては、まず、知財業界からの脱出を検討すべきと思います。若い人は転身が容易ですので、生成AIの影響が少ない業界へ転身するのがよいと思います。

具体的には、どんな仕事かといわれると困るのですが(知っていたら、私も転職します)、少なくとも生成AIに置き換わる可能性がある仕事は選ばないのがよいと思います。

2.中堅(30~40歳代)

中堅どころは、他の収入源の確保を考えるべきと思います。明細書作成や特許分析の売り上げが激減すると思いますので、他の収入源を確保して、収入の低下を補完するのがよいと思います。

具体的には、どんな収入源かといわれると困るのですが(知っていたら、私もやります)、今の仕事と相乗効果がある仕事や、逆にまったく関係ない仕事を副業的にするなどの対応が必要と思います。

場合によっては、新たなスキルを得るために、大学院へ通ったり、資格を取るなどのリスキリングが必要となると思います。

3.お年寄り(50歳以上)

50歳以上は、転職もリスキリングも容易でないので、残存者利益を狙うことになるかと思います。明細書の仕事が激減するといっても、まったくなくなるわけでもないので、少なくなった仕事を拾って生き延びることが考えられます。

ただし、売り上げは低下すると思いますので、固定費の削減等、売り上げが低下しても生き延びられる対策が必要となると思います。

しかし、知財業界の悲しい未来というタイトルにしましたが、知財業界自体は生成AIの活用により大きくレベルアップしますので、悲しいのは生成AIに置き換えられる実務者のみで、業界自体は発展するということになります。

私も、弁理士を廃業することを含めて、いろいろ考えております。まあ、人手不足で仕事は選ばなければあるようですので、深刻に考えず、どうにかなるという楽観的な考えでいたいとは思います。

「量より質」って本当?~歴史から学ぶ特許戦略のヒント~

 最近、特許の世界でよく聞く言葉があります。 「量より質が大切です!」 確かに、いいことのように聞こえますよね。でも、ちょっと待ってください。本当にそうなんでしょうか? 昔の日本はすごかった! 実は、日本には「特許出願件数世界一」だった時代があるんです。そして、その頃の日...