NECが従業員を1万人リストラするというニュースを最近聞きました。近年の事業環境の激変に耐えられなくなってきたのでしょうか。
私は以前NECで生産技術者として働いておりましたが、10年ほど前に自主的に退職いたしました。その理由は会社全体がソフトウェア関係の事業を強化する中、自分の居所が無くなりつつあったからです。独身であり身軽だったという事情もあります。
さて、会社と従業員の関係は、以前お話しした大企業と下請けの関係に似ていると思います。つまり、会社が「課題」を提供し、従業員はその「解決手段」を提供します。
会社の「課題」は変化してゆきますから、その「課題」に対する「解決手段」を提供できない従業員はリストラ候補となると考えられます。
私の例でいえば、会社の課題は「ものづくり」から「ソリューション事業」へ変化してゆきましたので、「ものつくり」に対する解決手段しか提供できない私は遅かれ早かれリストラされる運命にあったといえます。
どうすればよいかといえばこれは難しい問題ですが、3つの考え方があると思います。
1つめは、解決手段としてより高度な技能を身につけることです。私の例であれば、生産現場は完全に無くなるわけではありませんので、より高度な設計技術を身につけることにより、生き残りを図る戦術です。
しかしながら、この方法は誰もが考える手段ですので、小さくなるパイの中では椅子取りゲームのように競争が激化し、レッドオーシャンの中に飛び込むことになります。
2つめは、解決手段として現在とは異なる技能を身につけることです。例えば、機械技術者がプログラミング能力を新たに身につけて生き残りを図る戦術です。
しかしながら、新たな技能を身につけるためには多くの時間が必要であり、他部署へ異動させてもらうなどの配慮が必要と思います。しかし、異動希望が叶えられる可能性は低いとも考えます。
3つめは、解決手段を提供することは諦め、課題を提供する側に回る、すなわち、起業するということです。
この場合には会社を辞めなければなりませんのでリスクが高いといえます。会社によっては社内ベンチャー制度もあるようですが、有効に活用されている例はあまり聞きません。
このように、会社で働いている間には、今の技能を高めるという1つめの手段しかとれませんので、競争が過酷になる、つまり生き残れる可能性が低くなるジレンマがあります。
しかしながら、夜間の社会人大学院に通うとか、週末起業をするなどして、2、3つめの手段を取ることも可能ですので、金銭的・精神的に余裕があるうちに次の手をいろいろ考えることも必要と思います。
2012年1月31日火曜日
2012年1月27日金曜日
ソリューションビジネスについて
私は10年ほど前、NECの生産技術開発本部という部署で働いておりました。その名の通り、NECグループの製造機械を開発・設計する部署でありまして、男ばかりのお固い部署でした。
私がNECに入ってしばらくすると「・・・ソリューション技術部」など横文字が入った部署が増えてまいりました。3K職場の私には、「ソリューション」の部分がなんとなくいけ好かない気がしていました。
ソリューションビジネスの元祖はIBMといわれています。日本勢の攻勢によりメインフレームの販売で劣勢に立たされたIBMが始めたモデルであり、コンサルテーションやシステムインテグレーション、アウトソーシング等のサービスを組み合わせたビジネスをいいます。
簡単にいえば、単なるハードウェアの販売に、情報処理システムを構築するために好適なハードウェアの組み合わせを提案するサービスを組み合わせたものといえるでしょうか。
このようなビジネスモデルのメリットは顧客の課題解決を自社でできることと思います。従来の販売は、顧客が課題を感じ、その解決手段としてハードが売れますので、販売はあくまでも待ちの姿勢となります。
顧客の課題を分析できることができれば、必要な解決手段を販売側で提案できますので、攻めの営業を行うことができます。顧客が気づいていない潜在的な課題を抽出できれば、さらに販売を伸ばすことも可能となります。
マーケティングでは顧客のニーズを探ることが重要とされます。しかしながら、近年ではニーズといえるようなニーズは存在せず、潜在的なニーズを探ることが重要となっています。
ソリューションビジネスは、顧客の課題解決を通じて潜在的なニーズを浮き彫りにできますので、IBMはこのあたりをうまくやって復活を果たしたということでしょうか。
さて、私がNECを退社したのち、NECは半導体やPDPなどの事業を切り離し、ソリューションビジネスに経営資源を集中しました。コアコンピタンス経営というやつです。IBMと同じ土俵で戦うことになりますが、なんとか頑張ってもらいたいものです・・。
私がNECに入ってしばらくすると「・・・ソリューション技術部」など横文字が入った部署が増えてまいりました。3K職場の私には、「ソリューション」の部分がなんとなくいけ好かない気がしていました。
ソリューションビジネスの元祖はIBMといわれています。日本勢の攻勢によりメインフレームの販売で劣勢に立たされたIBMが始めたモデルであり、コンサルテーションやシステムインテグレーション、アウトソーシング等のサービスを組み合わせたビジネスをいいます。
簡単にいえば、単なるハードウェアの販売に、情報処理システムを構築するために好適なハードウェアの組み合わせを提案するサービスを組み合わせたものといえるでしょうか。
このようなビジネスモデルのメリットは顧客の課題解決を自社でできることと思います。従来の販売は、顧客が課題を感じ、その解決手段としてハードが売れますので、販売はあくまでも待ちの姿勢となります。
顧客の課題を分析できることができれば、必要な解決手段を販売側で提案できますので、攻めの営業を行うことができます。顧客が気づいていない潜在的な課題を抽出できれば、さらに販売を伸ばすことも可能となります。
マーケティングでは顧客のニーズを探ることが重要とされます。しかしながら、近年ではニーズといえるようなニーズは存在せず、潜在的なニーズを探ることが重要となっています。
ソリューションビジネスは、顧客の課題解決を通じて潜在的なニーズを浮き彫りにできますので、IBMはこのあたりをうまくやって復活を果たしたということでしょうか。
さて、私がNECを退社したのち、NECは半導体やPDPなどの事業を切り離し、ソリューションビジネスに経営資源を集中しました。コアコンピタンス経営というやつです。IBMと同じ土俵で戦うことになりますが、なんとか頑張ってもらいたいものです・・。
2012年1月24日火曜日
第8回「サロン・ド・MOT」 講演について
1月23日の夜、「サロン・ド・MOT」にて日米特許法改正についての講演をしてまいりました。
「サロン・ド・MOT」とは、農工大MOT卒業生、MOT在籍者、MOT教員などが月1回都内の某所に集まりまして、技術経営に関して語り合う場のことです。
今回は光栄にも私が演者ということで、何をお話しようと考えましたが、日米の特許法改正が重なりましたので、このネタにしました。
日本の特許法改正で大きな話題となったのは以下の図です(法改正とは関係ないですが・・・)。
(出典:日本経済新聞)
こうみると、日本の特許出願件数は減少傾向にあり、事実上、中国に抜かれておりますので、これはどうなんだという話となりました。確かに、日本の開発活動が低下した結果、出願件数も低下したならゆゆしき事態です。
一方、従来の出願できるものは何でも出願するというスタイルが修正され、不必要な出願が削減された結果ともいえます。
日本の発明は新興国において即座に翻訳され真似されてきましたので、そういう意味では日本の出願件数が減って不利益を被るのは中国あたりかもしれません。
いずれにせよ数字にはいろいろな見方があることを再認識いたしました。
また、米国特許法改正については、やはり先願主義への移行が話題となりました。
発明をあらかじめ公表してしまえば、米国出願まで最大2年の時間的猶予がありますので、この2年間をどう考えるべきか議論となりました。結論はでませんでしたが。
その後、田町の飲み屋で今後の「サロン・ド・MOT」の進め方など議論させていただきました。(その他就職問題など)
発表の機会をいただき誠にありがとうございました。
「サロン・ド・MOT」とは、農工大MOT卒業生、MOT在籍者、MOT教員などが月1回都内の某所に集まりまして、技術経営に関して語り合う場のことです。
今回は光栄にも私が演者ということで、何をお話しようと考えましたが、日米の特許法改正が重なりましたので、このネタにしました。
日本の特許法改正で大きな話題となったのは以下の図です(法改正とは関係ないですが・・・)。
(出典:日本経済新聞)
こうみると、日本の特許出願件数は減少傾向にあり、事実上、中国に抜かれておりますので、これはどうなんだという話となりました。確かに、日本の開発活動が低下した結果、出願件数も低下したならゆゆしき事態です。
一方、従来の出願できるものは何でも出願するというスタイルが修正され、不必要な出願が削減された結果ともいえます。
日本の発明は新興国において即座に翻訳され真似されてきましたので、そういう意味では日本の出願件数が減って不利益を被るのは中国あたりかもしれません。
いずれにせよ数字にはいろいろな見方があることを再認識いたしました。
また、米国特許法改正については、やはり先願主義への移行が話題となりました。
発明をあらかじめ公表してしまえば、米国出願まで最大2年の時間的猶予がありますので、この2年間をどう考えるべきか議論となりました。結論はでませんでしたが。
その後、田町の飲み屋で今後の「サロン・ド・MOT」の進め方など議論させていただきました。(その他就職問題など)
発表の機会をいただき誠にありがとうございました。
2012年1月21日土曜日
課題と解決手段について
私は会議が苦手です。時間を取りますし、声の大きい人の意見が通ることが多く、参加する意味が無いと思うこともあります(単なる議論下手かもしれませんが)。
先日ある経営会議に出席したのですが、議題は「売上向上」という、どの会社でもあるような議題でした。様々な解決方法を議論した結果、「特定の会社に営業に行く」ことに決定しました。つまり、「売上向上」という課題に対し、「営業」という解決手段を選択したことになります。
こういう会議には、私は2点の問題があると思います。1点目は解決手段を出しあうことには意味がないということです。
解決手段自体は巷に存在する方法を適宜選択すればよいため、googleで「売上向上」を検索すればよいだけの話であり、時間をかけて会議でアイデア出しをするほどのものではありません。会議の前に検索しておいて、参考資料として会議で提示すれば会議も早く終わります。
2点目は、「売上向上」という課題に対して「営業」という解決手段が妥当であるか不明確な点です。「売上向上」という課題はそのままでは解決できない大きさの課題であり、解決できる程度まで課題を分割(ブレークダウン)する必要があります。
マーケティングの4P(place, price, promotion, product)というフレームワークを用いて分割すれば、「売上向上」という課題は、「製品上の課題」、「販売ルート上の課題」、「価格上の課題」、「宣伝上の課題」という単位に分解できます。
「宣伝方法」に課題がある場合には、「営業」という解決手段はそれなりに妥当ではありますが、価格が高い点に課題がある場合には営業しても効果はなく、価格戦略をどうすべきか考える必要があります。
したがって、有効な会議とするには、根本の課題を見出す議論を行うか、予め課題をブレークダウンしておいて会議に参考資料として提出するような工夫が必要でしょう。課題がきちんと設定できれば、解決手段をgoogle検索する程度で効果的なoutputを出せるのではないでしょうか。
時間をかけて会議を沢山行い、仕事をしたつもりにならないよう注意したいものです。
先日ある経営会議に出席したのですが、議題は「売上向上」という、どの会社でもあるような議題でした。様々な解決方法を議論した結果、「特定の会社に営業に行く」ことに決定しました。つまり、「売上向上」という課題に対し、「営業」という解決手段を選択したことになります。
こういう会議には、私は2点の問題があると思います。1点目は解決手段を出しあうことには意味がないということです。
解決手段自体は巷に存在する方法を適宜選択すればよいため、googleで「売上向上」を検索すればよいだけの話であり、時間をかけて会議でアイデア出しをするほどのものではありません。会議の前に検索しておいて、参考資料として会議で提示すれば会議も早く終わります。
2点目は、「売上向上」という課題に対して「営業」という解決手段が妥当であるか不明確な点です。「売上向上」という課題はそのままでは解決できない大きさの課題であり、解決できる程度まで課題を分割(ブレークダウン)する必要があります。
マーケティングの4P(place, price, promotion, product)というフレームワークを用いて分割すれば、「売上向上」という課題は、「製品上の課題」、「販売ルート上の課題」、「価格上の課題」、「宣伝上の課題」という単位に分解できます。
「宣伝方法」に課題がある場合には、「営業」という解決手段はそれなりに妥当ではありますが、価格が高い点に課題がある場合には営業しても効果はなく、価格戦略をどうすべきか考える必要があります。
したがって、有効な会議とするには、根本の課題を見出す議論を行うか、予め課題をブレークダウンしておいて会議に参考資料として提出するような工夫が必要でしょう。課題がきちんと設定できれば、解決手段をgoogle検索する程度で効果的なoutputを出せるのではないでしょうか。
時間をかけて会議を沢山行い、仕事をしたつもりにならないよう注意したいものです。
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