2015年7月25日土曜日

弁理士知財キャラバンについて

先日、弁理士知財キャラバンの支援員となるための第1回研修を受けてまいりました。

弁理士知財キャラバンとは、日本弁理士会が各地の中小企業に弁理士を派遣し、知的財産活動についてコンサルティングを行う事業のことをいいます。

弁理士知財キャラバンを利用すれば、中小企業は、無料で弁理士によるコンサルティングを受けられるそうです。

支援員となるための研修は、1回が1日みっちり使った研修を5回うけ、その後所定の要件を満たすと実行委員会に認められれば、めでたく支援員となり、中小企業のコンサルを行えることになります。

本年度だけで1000人の支援員が誕生する予定です・・・。

ここで疑問なのが、はたして1000人も支援員が必要なほどの支援の要請があるのか、ということです。

この辺りは、弁理士会のプロモーションによることとなると思いますが、支援要請が少ない場合には、実行委員会にコネのない私のようなものには仕事が回ってこないことを危惧します。

研修で得たスキルをもとに独自に仕事を得ることも考えられますが、弁理士会が無料でやっているのにあえて有料でのコンサルをやろうという中小企業はないと思われます。

そう考えると勉強する意欲も薄れますが、とりあえず支援員にはなろうと考えています。

コンサルティングをご希望の中小企業の方は、募集が始まりましたら、当ブログで詳細な情報をお知らせしますので、少々お待ちください。

2015年7月16日木曜日

法的妥当性について

プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する最高裁判決が平成27年6月5日にありました。

それに応じて、特許庁における審査・審判の取り扱いも修正されました。
(特許庁HP http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/product_process_C150706.htm )

今後は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であると判断し、拒絶理由を通知されることになります。

簡単に言えば、プロダクト・バイ・プロセスクレームを書いてはダメ、ということになるでしょうか。

今回の判決により請求項の表現は著しく制限されることになります。 技術分野によっては、発明の保護が十分に図れないという事態が生じるのではないでしょうか。

裁判官は、こう判断することが法的に妥当であると判断したと思いますが、たかだか4名の判事による判断が対世的に効力を持つことに、少々怖さを感じます。

特許は、法律、技術、ビジネスの境界に存在するため、各方面からの検討が必要と思います。しかし、裁判官は、法的妥当性から判断を行います。そうすると、今回の判決は技術的に妥当なのかという疑問があります。

近年、侵害訴訟の原告勝訴率が20%くらいしかないことが問題となっています。裁判官の方のお話を伺ったことがありますが、勝訴率うんぬんを問題にするのはよろしくない、というようなニュアンスの話をされておりました(正確ではありません。)

もちろん、法的には妥当な判断をされていると思いますが、それだけでよいのでしょうか?

企業はボランティアで特許出願をしているわけではありませんので、勝訴率が20%では、特許出願はしませんし、特許権があっても権利行使はしません。

そうすると、権利はあるのに行使しないという、法的に歪んだ状態が作り出されますし、権利行使がされないということは、そもそも、特許法が無意味化(いらない?)するという、法的に変な状態となります。

そう考えると、裁判官の判断が国民経済に不利益な方向に向かわないようにコントロールする必要があると思います。その一つの方法が、適切な立法をしてゆくことがあるのかと思います。

プロダクト・バイ・プロセスクレームについても、ビジネス、技術の分野の方々から、請求項の記載のあるべき姿をヒアリングし、必要であれば立法化してゆくことも必要なのかと考えます。

2015年7月11日土曜日

知財の予算など

たまに、特許や商標にあまりお金をかけない方法がないかと、聞かれることがあります。確かに、特許権、商標権をとるには、結構な費用が掛かりますので、お気持ちはわかります。

この場合、例えば、ノウハウで守るとか、先使用権を主張できるよう証拠を残すとか、そういう風なアドバイスをすることになります。

しかし、ノウハウで守るといっても高度な秘密管理体制が求められますし、先使用権を主張といっても証拠を保存して確定日付をもらう手続きが必要ですし、はたして実行できるのかという疑問は残ります。

そう考えると、権利なくして知財を保護するというのは、無理難題なのかもしれません。

なぜ権利をとるのかといえば、最終的には訴訟で勝つためです。訴訟では、権利に基づいて主張を行いますので、権利がない場合には、何も主張できずそのまま敗訴となります。

したがって、どんなに優秀な弁護士を雇っても、権利がなければ勝ち目はない、ということになります。

逆に、多くの権利があれば、権利をいろいろ組み合わせて戦うような、戦略の自由度を確保できます。こうなれば優秀な弁護士を雇う意味もでてくるかもしれません。

とにかく権利を取りなさいという弁理士は、あながち間違っていることをいっているわけではないいといえます。(権利化しないのであれば、弁理士の腕の見せ所がないという事情もありますが・・・。)

そうはいっても予算には限界もありますので、まずは、必要な知財権を洗い出し、優先度の高い知財権から予算を確保して、権利化を進めるのが、現実的な線と思います。

2015年6月10日水曜日

周知技術について

中間処理で拒絶理由を解消すべく補正して対処したところ、周知文献をいくつか追加的に提示されて拒絶査定となるケースが、何件か続きました。

周知文献を拒絶理由通知時に提示してもらえれば対処の方法もあるのですが、後出し的に証拠を出されると手の打ちようがありません。

大企業であれば、拒絶査定不服審判を請求すればよいので、あまり問題ないのかもしれませんが、中小企業に審判を請求させることは費用的に酷と思われます。

ユーザーフレンドリーな審査を目指すのであれば、

(1)進歩性を否定する根拠となる証拠については拒絶理由にすべて明示する。

(2)新たな証拠を追加する場合には、再度の拒絶理由を通知する。

となると思いますが、審査の迅速化の要請のためか、上記の無理な運用になっているようです。

そう考えると、今後の中間処理は、周知文献という「見えない証拠」があることを前提に対応する必要があると思います。

例えば、

(1)中間処理時には、出願人自ら「補足的な特許調査」を行い、拒絶査定にて不意打ち的に追加される可能性のある証拠を事前に把握する。

特許調査には費用がかかりますが、審判請求の費用に比べれば安くできると思いますので、検討の余地はあると思います。

追加的な特許調査を行わない場合には以下のような対応かと思います。

(2) 補正は、引用文献との差別化を図るだけで安心せず、拒絶査定にて不意打ち的に追加される可能性のある証拠の存在を前提に、さらなる減縮を図る。

過度に減縮補正をすることにより、周知技術とされるリスクを低減できます。ただし、権利範囲が必要以上に狭くなりますので、使えない特許権が量産されることになるかもしれません。

話はそれますが、最近は、中小企業が特許出願する意味を少し考えてしまいます。特許出願するにしても、審判、訴訟と結構な費用がかかりますので、技術開発やマーケティングにその費用を投じたほうが有益なのではとも考えてしまいます。

せめて、特許庁には手続きコストを押さえる審査を期待したいところです。

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