2020年6月7日日曜日

発明は仮説推論

最近はIPランドスケープ等の特許情報分析の重要性が叫ばれております。

私が面白いと感じるのは、いくら特許情報分析をしても、その分析結果のみでは発明には至らないことです。

特許を綿密に分析しているのに、発明とはならないのは、何故なんでしょうか?

特許を分析して発明になるのでしたら、特許分析業者が大量に発明をして特許出願できるわけですが、そうでもありません。

一般に、分析とは帰納推論といわれます。つまり、様々な多くの事実から何らかの規則を見出す行為となります。

つまり、帰納推論からは発明は生まれないことになります。

では、発明は何から生まれるといえば、これは仮説推論となります。仮説推論とは、何らかの規則から事実を導出する行為です。

そうしますと、IPランドスケープ等の特許情報分析とは、発明を生み出すための仮説推論の材料(すなわち規則)を提供することに意義がある、ということになります。

一般に、仮説推論の信頼度は、帰納推論や演繹推論と比較して、低いとされますので、精度の高い特許情報分析をしても、優れた発明が生まれるわけではないところが難しいところとなります。

デザイン思考では、仮説推論の信頼度の低さを克服するために、プロトタイプを早く作り演繹推論へ持ち込むことが推奨されます。

演繹推論は事実と規則から結論を導く行為です。演繹推論は論証力が強いといわれておりますので、仮説推論の信頼度の低さを補うことができます。

そうしますと、IPランドスケープを一生懸命考えるのも重要ですが、帰納推論→仮説推論→演繹推論という流れを押えることの方が、より重要となるかと思います。

また、発明者は仮説推論という難易度の高い仕事(失敗する可能性の方が高い仕事!)に取り組んでおりますので、このことからも温かい目で見てあげる必要があると思います。

2020年6月6日土曜日

発明は逆推論

順推論とは、原因から結果を導出する行為で、逆推論とは結果から原因を導出する行為です。

一般には、順推論より逆推論の方が論理的に難しいとされます。

例えば、「Aが大きな声を出した」→「うるさい」という順推論は容易ですが、「うるさい」→「Aが大きな声を出した」という逆推論は、A以外に人間がいた場合や周りの環境によっては単純にはなりたちません。

発明行為は逆推論といえると思います。つまり、効果(結果)から構成(原因)を導出する行為と言えます。

だから何だといえば、何でもないのですが、順推論と逆推論とは論理的に非対称性があることは認識した方が良いと思います。

以下は私の勝手な作り話ですが、企業も大きくなるとイノベーションが起きにくくなりますが、一つの要因として有名大学の官僚的な人材が増えるからと言えます。

イノベーションを考えることは逆推論ですので、論理的に穴だらけとなります。企業内でよいアイデアが出た場合でも、官僚的な社員が順推論でつぶすことはとても容易です。

頭のよい方の順推論には、論理的に穴がありませんので、アイデアはお蔵入りとなってしまうでしょう。こうして企業の活力が失われます。

以上は作り話ですが、私が発明相談を行う際にも、似たような状況になることがあります。発明者の説明を聞きますと、技術的な問題が明らかにあることが多いです。これは順推論なので、容易な推論となります。

そこで私が発明者の方に、順推論をひたすらぶつけますと、発明者としては返答しようがない状況に陥るおそれがあります。これでは、発明する気もなくなります。

したがって、発明者からヒアリングする際には、順推論と逆推論との論理的非対称性(順推論は容易、逆推論は困難)を頭に置いておきませんと、けんかになる可能性もあります。

これを逆手にとったのが、デザイン思考のプロトタイプをすぐつくる行為です。デザインは逆推論ですので、当初は問題があるのかどうかよくわかりません。

そこで、プロトタイプをつくって市場にすぐ出せば、これは順推論問題となりますので、容易に問題点を明らかにすることができます。

ようは、逆推論状態を短くして順推論状態へもってゆく合理的な考えです。これを繰り返せば妥当なデザインに近づくのではないでしょうか。

結論としましては、発明者は逆推論という論理的に非常な困難な仕事に取り組んでおりますので、温かい目で見てほしいということになります。

2020年5月25日月曜日

祝・緊急事態宣言解除

緊急事態宣言が本日解除されました。

緊急事態といえど誰もパニックになることなく終わったことは日本人の民度の高さを示すものであり、よかったと思います。

と、同時に、経済の立て直しが果たしてうまくゆくかという課題も残されたままとなります。

緊急事態宣言中の時間を利用して知財学会発表の作業を進めたわけですが、本日出願と審査請求を完了しまして、一区切りとなりました。

審査結果は8月ごろ通知されることになるかと思います。

しかし、素人レベルの人間が、1か月で出願までもって行けたということは、多空間デザインモデルの有用性を示したのではないかと思います。

知財学会発表の作業は審査結果が得られる9月ごろ再開したいと思います。

2020年5月24日日曜日

明細書の作成について

明細書ですが、初稿の方が完成しました。一応、これが本業ですので、1日で何とか書けました・・・。

今回は、実務というより実験に近いため、明細書の品質はあまり上げず、最低限の記載要件を満たす程度の記載としました。

また、今回は、何が何でも特許を目指すというよりは、拒絶となってもよいという考えで進めております(半分、あらかじめの言い訳ですが・・・)。

拒絶理由を分析することにより、今回のプロセスの問題点が浮かび上がるかもしれませんので、それによってプロセスを改善する手がかりになると思います。

再度見直して、今週中に出願と審査請求を行おうかと思います。

ついでに、明細書自動作成ツールのようなものがないか、googleで調べてみましたが、まだ、無いようです・・・。

現状の機械学習は相関関係しかわからないため、翻訳や調査には使用できますが、がちがちの因果関係が求められる特許明細書作成はできないということでしょうか。

文書作成ソフトといえば、ネット記事を大量生産するソフトが昔あったような気がするのですが、あれも相関関係だけ見て文書を生成しているようですので、生成される文書の内容が何かおかしかったような気がします。

例えば、音楽や絵など、因果関係が不要な創作については機械学習が得意なような気がします。

とはいえ、これからの特許実務はAIで随時進歩性をチェックしながら請求項をドラフティングしてゆく時代が来るのかなと思います。

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