年末年始休暇に入り、暇となりましたので、たまには知財の現状について、個人的に考えてゆきたいと思います。
テーマは、
(1) 知財は資産か費用か?
(2) 有効な特許権とは?
(3) ((1),(2)にもかかわらず)特許権をとる意義とは?
について、まったく個人的な意見を述べたいと思いますが、やっぱり休みたくなりましたら、残りはまたいつかの機会に述べたいと思います。
今回は、(1)知財は資産か費用か?をテーマとしたいと思います。
最近、略称「知財・無形資産ガバナンスガイドライン」案が公開されました。
これを読みますと、強調されておりますのが、知財を費用としてではなく、資産として認識すべき、ということです。
「資産」とはいろいろな捉え方がありますが、会計上の定義は以下の通りです。
そうしますと、特許権は無形固定資産に該当しますので、形式的には、資産といえます・・・とここで話が終わってしまいますが・・・。
資産であるなら、世の企業は積極的に特許権を取得するはずですが、そうではないのは、上記のごとく特許権は費用という考えの人の方が多いからと思います。
どうして費用ととらえてしまうのか、その理由を考えてみました。
(1)価格が不明
都内の住宅地を歩いておりますと、高級車が停まった豪邸を見かけることがあります。こういう家はいわゆる資産家といわれます。
資産家の保有資産といえば、不動産、株、高級車、金塊?となるでしょうか。これらの共通点といえば、価格がわかる、ということになります。
なぜ価格が分かるかといえば市場が整備されているからです。市場があれば売り買いもできますので、現金化もできます。
一方、特許権は市場はありませんし、売ろうと思っても誰も買ってくれません。したがって、特許権を幾ら持っていても、悲しいことに資産家といわれることはありません・・・。
売り買いできない、ということは、価値は「0円」と同等ということもできてしまいますので、世間的には資産と見なされないのではないでしょうか。
(2)権利を実現できない
自分の土地に誰か見知らぬ人が勝手に建物を建てた場合には、民事、刑事で排除することができますし、株や金塊を奪われた場合でも同様に取り戻すことができます。
特許権についても、他社が勝手に使用した場合には民事訴訟を提起することになります。
ところが、侵害訴訟の勝訴率は2割ともいわれ(最近はもっと増えたかもしれませんが・・・)、基本的には勝つことは難しいのが現状です。
また、大企業を訴えたりしますと、カウンターで無効審判を請求されたり、相手方代理人に元知財高裁判事の方が出てきたり、訴訟も高裁、最高裁と、何年も続くことになり、金銭的、精神的に非常に厳しい状態となります。
また、勝訴したとしても、得られる賠償金は低く、訴訟費用を賄えればラッキーの程度となります。
そうしますと、特許権をもってても、あまり役に立たない見なされているのが現状で、このことから、世間的には資産と見なされないのではないでしょうか。
このように、株や不動産と比べて、特許権は資産として見劣りがするような気がします。
ガイドラインで、知財を費用としてではなく、資産として認識すべき、というのは私もそう思いますし、非常に結構なのですが、これらの課題を解決しませんと、知財は費用との認識を変えることは難しいのではないでしょうか。
この話は、日本での話で、例えば、米国では違うのかもしれません。米国では賠償額も高額ですし、特許市場を設けるトライも昔からされております。
そういう意味では、米国では特許権は資産と見なされており、したがって、多くの企業は(日本には出願せずに・・・)米国へ多数出願をしているのかもしれませんね。