2014年8月30日土曜日

幸福感について

以前、幸福を感じるにはどうすればよいか?というテーマの本を読みました(書名は失念しました・・・)。

その中に、物を買うことにより幸福感を得られるか?、ということについて調査した結果が載っていました。

結論としては、幸福感は得られるが、その感情は数ヶ月しか持続しないということでした。

人間の心理には感覚が減衰する機能があるそうで、これは例えば、身内の死等の、とてつもなく不幸な状況が生じた場合でも、その感覚は時間とともに薄れてゆき、不幸な感情が持続しないという心理的作用のようです。

不幸な感情が持続した場合には、生きる気力が失われ自己の生命に危険が及びますが、感情が薄れることにより、生命の保護を図っているといえるでしょう。

この心理的作用が、不幸な感情にのみ作用すればよいのですが、幸福な感情にも作用してしまうとのことです。

例えば、メルセデス・ベンツを買ったとしても、嬉しいのは3ヶ月くらいで、その後は、ベンツがある生活が当たりまえとなってしまいます。

したがって、物による幸福感を持続させるためには、定期的に物を買ってゆくことが必要となります。ベンツであれば、モデルチェンジのたびに買い換えるなどです。

但し、幸福感が多少麻痺していますので、単に買い換えるのではなく、グレードの高いベンツにしなければなりません。まあ、お金持ちにしかできないことです。

それでは、そこまでお金のない人はどうすればよいかというと、経験に投資することがよいと書いてありました。

経験は頭の中に記憶されますので、思い出すたびに幸福感が(多少なりとも)蘇り、幸福感が持続しやすいとのことです。

そう考えると、これはものづくりのヒントとなるかもしれません。

私はアップル製品をもっていないのですが、アップル製品はユーザー・エクスペリエンスを大事にすると聞いております。

つまり、単に物としてのスマホを売るのではなく、スマホを使用して得られる経験も売っているといえます。これにより、アップル製品を使用する幸福感が持続し、熱狂的なファンを得ているのではないでしょうか。

また、ハーレーという大型バイクが、日本の大型バイク市場の大きなシェアを占めていますが、ハーレーのバイク自体はメカニズム的に優れた部分もなく、性能、品質の面で日本のバイクに劣っています。

それでも、ハーレーに乗ることによるアウトロー的経験は格別のものですし、ショップもイベントを開催し、購入者がそういう経験を得られる仕組みも整えております。

そこでやはり、物としての幸福感に加えて経験が加わる幸福感の相乗効果があり、熱狂的なファンがいるのだと思います。

日本製品はハイスペックですが、使用者の心理的な面の考慮が少々弱いと思います。

製品設計のみにエンジニアを配置するのではなく、ユーザーが製品を使用することに得られる経験を設計する人や、ハーレーのように能動的に経験させる仕組みを設計する人も開発に加えると、厚みのあるものづくりができるのではと思います。

2014年8月10日日曜日

意匠と商標の狭間で

先日、ジャポニカ学習帳の商品形態について立体商標の登録がされたとのニュースが有りました。そういえば、ホンダのスーパーカブも立体商標となりました。

立体商標とは、立体的な形状からなる商標をいう、とされますが、商標権は半永久権ですので、商品形態に独占権を付与することは、ちょっと強すぎる権利となりすぎますので、従来はなかなか商標登録を受けることはできませんでした。

しかし、こういうニュースが連続して飛び込んでくるということは、審査の方針が商標登録を受けやすい方向へ変化したのかもしれません。

商品形態は、基本的には意匠法で保護を図るのが基本と思いますが、その意匠を継続的に使用することにより業務上の信用が化体した場合には、商標登録を受けうることになります。

そう考えると意匠と商標というものは明確に区別できるものではなく、その境界はぼんやりとしているのかもしれません。

こういう考え方をトレードドレスともいうようですが、日本もこのような方向に実務が動いてゆくのかもしれません。
 
それでは、今後は商品形態の保護をどのように図るべきなのでしょうか。商品形態を保護する方としては、意匠法、商標法(立体商標)、及び、不正競争防止法(周知表示、形態模倣)があります。



商品販売当初は、不競法2条3号で保護を図り、意匠登録後は意匠法で保護をはかり、意匠権の存続期間満了後は、不競法2条1号で保護を図り、自他商品識別機能を有した段階で商標登録を受ける、というような感じでしょうか。

もちろん、このような考えができる商品はものすごくライフサイクルの長い商品(少なくとも50年?)に限られると思います。

スマートフォンや乗用車のような数年でモデルチェンジする商品の形態は、数年守られればよく、立体商標の登録を受ける場合は、ほぼ無いと思います。

それでは、どのような商品があるのかといえば、私の身の回りでいえば、腕時計、万年筆、椅子などの家具、ハンドバックなどがあるでしょうか。

ということで、今後は、長く愛されるデザインというものを創作してゆく、というのも1つの考えかもしれません。

2014年7月26日土曜日

敗訴の捉え方について

特許権侵害訴訟の原告勝訴率は2~3割といわれています。和解した件も含めると実質的な勝訴率はもう少し高いと考えられています。

とはいえ、時間とコストをかけて取った特許権でも、権利行使した場合には敗訴する可能性が多いにあるといえます。

これでは特許を取る意味が無い、とか、勝てそうにないから訴訟は提起しない、などとネガティブな考えにもなります。

ただ、敗訴というものをそこまで重大に捉える必要があるのか、とも思います。

原告が敗訴した場合のデメリットとしては、多額の訴訟費用が無駄になることや、特許が無効と判断されてしまうことなどがあると思います。

ただし、被告が敗訴した場合には、差止や損害賠償請求で多大な事業のダメージが生じますが、原告敗訴の場合には、訴訟費用が無駄になる程度で、事業上のダメージはほとんどないと思われます。

逆に、侵害訴訟をきっちりと提起してゆくことにより、知財活用をきちんと考えている企業と市場で認知され、業務上の信用が向上する大きなメリットがあると思います。

また、競合企業もわざわざ訴えられるような面倒を避けようとするので、競合企業は類似する製品を販売しないよう圧力が加わると思われ、知財権の参入障壁としての機能が有効に発揮されると思います。


一方、敗訴のリスクを大きく捉えすぎ、訴えの提起を躊躇した場合には、知財権の威嚇効果が失われ、競合企業による模倣が横行することにもなりかねません。

したがって、特許権の活用の一形態として、侵害訴訟をきっちり行ってゆくことが知財を有効活用するためには必要と思われます。

また、侵害訴訟を行ってゆくことにより、社内に訴訟のノウハウが蓄積され勝訴率も向上することが期待でき、営業の方による他社の侵害発見などの社内の知財意識も向上すると思います。

ということで、侵害品を見つけたら勇気をもって訴えを提起することも今後は必要と思います。

2014年7月11日金曜日

知財診断について

以前、当ブログで切り餅事件をとりあげましたが、それに関連したニュースが報じられました。

株式会社きむら食品 民事再生法の適用を申請 負債49億3357万円
(帝国データバングホームページ:http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/3948.html) 

2013年6月には、同業の越後製菓(株)(長岡市)から、切り餅をきれいに焼くための特許が侵害されたとして、製品の製造販売の差し止めおよび約45億 3000万円の損害賠償請求の訴訟を起こされたことや、過去の不適切な会計処理が判明したことで対外信用が悪化。資金繰りがひっ迫するなか、民事再生手続きによる再建を図ることとなった。(引用終わり)

特許権侵害訴訟が民事再生の直接の原因とは思いませんが、1つの要因となったことは間違いないと思われます。

訴えられるリスクといえば、差止による製造販売の禁止や損害賠償による金銭負担、多額の訴訟費用負担を考えてしまいますが、一番大きなリスクは、業務上の信用が失われて資金繰りが悪化することなのかもしれません。

特に、中小企業の場合には、資金繰りの悪化がそのまま企業の存亡に直結すると思われますので、何としてでも侵害訴訟に巻き込まれないよう、普段から準備しておく必要があると思います。

その手段として、弊社が中小企業で行っている支援の1つが「知財診断」です(宣伝となり申し訳ありませんが・・・)。

「知財診断」とは、製品の上市前に他社の知的財産権(特許、実案、意匠、商標、著作権) を侵害していないかすべてチェックすることをいいます(他にも診断する事項はありますが、ここでは割愛します)。

上市前に、他社の知財権のチェックを行いますので、製品を市場に出しても訴えられることはなく、安心して製品を市場に出せます。

侵害チェック作業については、特許事務所に依頼すればよいと思いますので、企業としては、上市の数ヶ月前に「知財診断」を行うことを義務付けるスケジュールを組めばよいと思います。

そして、「知財診断」の結果、大丈夫と判断できる製品のみ市場へ出す決定を、経営者がすることになります。

「知財診断」自体は、特許事務所に依頼するとそれなりの額となると思いますが、業務上の信用が失われる不利益に比べれば、大きな負担とはいえないでしょう。

「知財診断」を行なっていないのであれば、是非導入してみてはいかがでしょうか。

(以下、広告です。)

私が著者として加わっている書籍が出版されました。

『知的財産イノベーション研究の諸相』(日本知財学会知財学ゼミナール編集委員会編), コンテンツ・シティ出版

知財学会の論文集ということで、10論文中の「5. 戦略的商品開発手法の開発―QFDと特許情報の融合―」を担当させていただいております。

ご注文はこちらへお願いいたします。 (MARUZEN & JUNKUDOネットストアHP

よろしくお願いいたします。

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