2017年7月15日土曜日

類似商品・サービスへの対処について

本屋の雑誌コーナーで「類似商品・サービスへの対処について」の特集が組まれた法律雑誌(ビジネスロージャーナルの8月号)を見かけたので、買ってみました。

1000円くらいかと思ったのですが、レジで2500円を請求されて、値段を確認しておけばよかったと後悔しました。

内容としては、弁理士、弁護士の解説が2/3で、残りが企業担当者の座談会でした。

弁理士、弁護士の解説については、特に目新しい部分はありませんでしたが、コメダ珈琲の事件について、弁護士の方が少し興味深い意見を述べられていました。

(その内容をここで書くのもなんですので、ご興味のある方は、ビジネスロージャーナルの8月号をご入手ください。)

しかしながら、1次ソースの決定をまず見ておくことが有用と思いますので、以下のリンクを参照願います(恥ずかしながら、私もこれから読みます。)

平成27年(ヨ)第22042号仮処分命令申立事件

 一方、面白かったのが、企業担当者の方の座談会です。結局のところ、類似商品・サービスへの対処として、訴訟を起こしても、勝ち目が薄い(ほとんど勝てない)ので、どうするか悩みどころとなります。

迂闊に経営陣に積極策を進言しますと、訴訟で負けた時に社内でつるし上げをくらうことがあるそうです。

しかしながら、模倣を見過ごすわけにもいかず、どうしようということになります。

結局のところ、知財担当者としては、上記のコメダ珈琲の事件などを分析して、勝てる道筋をつけるとともに、できるだけ交渉で決着をつけるような作戦しかとれません。

それでも最後は訴訟を提起する場合もありますが、この場合には、勝訴を期待するというよりも、訴えの提起により交渉が前進することを期待したり、訴訟の事実が世に広まることにより、世論の支持を集めることを期待することになります。

企業の知財担当者は大変ですね・・・。

類似商品・サービスへの対処として、訴訟を起こしても、勝ち目が薄い原因としては、ひとつは、不競法に基づく訴訟となっているからです。

そうしますと、 類似商品・サービスへの対処としては、独占排他権たる商標権、意匠権を取ってゆくのが、一番の対処となります。

とはいえ、店舗デザインのようなトレードドレスについては商標登録されにくい事情がありますので、この場合には、不競法2条1項1号で差止請求できるよう、常日頃から証拠づくりをしなければなりません。

例えば、店舗のデザインについては、他の店舗にない特徴的な部分を付加しておくことや、同一の店舗デザインを継続的に使用して周知性を獲得しておくことなどです。

あとは、もう少し不競法で勝てるように法改正でもしてほしいのですが、これは無理ですかね・・・。 

2017年7月13日木曜日

ブランドQFDについて

パテント誌2017年3月号に掲載されました、当論文「ブランドQFDを活用した調査手法の開発」が、弁理士会のホームページで公開されました。

該当ページへのリンクはこちらです。
https://system.jpaa.or.jp/patent/?freekeyword=%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89&year%5Byear%5D=2017&month%5Bmonth%5D=03

論文の内容につきましては、おいおいここで説明させていただきたいと思いますが、どうしてこのような研究をしようかと思い立ったかといえば、某所で行ったセミナーが契機となりました。

テーマとしては「中小企業のブランド戦略」だったのですが、仕事がら、商標の登録要件や、商標権の権利行使などの説明を主に説明しました。

ただこれは商標(トレードマーク)の話であり、ブランドはもう少し違うものを示すのではないかという疑問も生じてきました。

ブランドというものはトレードマークの背後にある、形のないものでありますので、やはりそちらの方を明らかにする必要があると考えました(続く)。

2017年7月12日水曜日

ものつくりの考え方について

日本はものつくり立国だ、という話がよくされます。私も前職はものつくり技術者だったので、そうなのかと思いますが、私が技術者をやってた頃から比べると、ものつくりの概念が変わってきていると最近思い始めました。

旧来のものづくりといえば、主に品質向上を図る技術開発を行うことを意味していたと思います。品質向上のためには、地道な実験等を行うような自然法則と向き合うような姿勢が必要であり、技術者には、そのような資質が求められます。

今でもこのような概念でものつくりを語る向きもありますが、それでは足りないことが、2000年以降明らかになったと思います。例えば、技術で勝って事業に負けるような事態の発生です。単なる技術開発ではなくマーケティングも求められるようになりました。

そこで、最近はデザイン思考、ブランド思考に代表されるような顧客心理への影響を考えたものづくりがされるようになりました 。人間心理は自然法則の及ばない領域ですので、今までとは違う観点でものづくりをしなければなりません。

と、ここまでが2017年までの考えですが、今後さらに課題となるのが仮想世界の存在です、AIやらIOTやら仮想世界の存在が現実界に影響を与える時代が迫っています。

仮想世界は人為的取り決めが100%の世界ですので、自然法則は当然及ばず、考え方も世界を知るというよりは、世界を作るようなスタンスが求められます。仮想世界では、世界を作る人が当然有利になりますので、受け身でいると不利になります。

例えば、自動運転車というのは、仮想世界のポジションの取り方が雌雄を決するかもしれません。

特許法や技術標準も一種の仮想世界かもしれません。特許法も技術標準も人為的取り決めにすぎません。しかし、自然法則に適合し顧客ニーズのある製品でも、特許法に抵触し、技術標準に不適合だと、製品の製造はできません。

ということで、今後のものづくりは、自然界、人間界、仮想界の3つの世界の狭間で、どのようにポジションをとってゆくかが、悩みどころでもあり、面白いところとなると思います。

2017年7月5日水曜日

ブランドとデザインについて

ブランドデザイン保護 経産省、意匠法改正を検討」という記事をネット上に見かけました(新聞社の記事のリンクはすぐに消えてしまいますので、リンクは割愛いたします。)

その新聞社の会員ではありませんので、記事を最後まで読めないのですが、記事の題名に違和感を感じました。

「ブランドデザイン」というのが意味不明ですし、そもそも「ブランド」と「デザイン」とは異なる概念ですので、無造作にくっつけてよいのかと思います。

その後、経産省のホームページで以下のニュースリリースを見つけました(リンクあり)

「産業競争力とデザインを考える研究会」を設置します


先のニュースはこの研究会のことをいっているのかと思います。

この1次ソースを読みますと、「ブランドデザイン」なる用語は一言も使われておらず、 「ブランド」と「デザイン」をきちんと区別して使用しております。

官庁は新聞社とは異なり慎重に用語を選んで使っているようです。やはり、1次ソースに当たることが重要とあらためて思いました。

研究会でどのようなことが議論されるのかはよくわかりませんが、ブランドアイデンティティたる物品の形態について、効果的に意匠権で保護できるよう、意匠法の改正を念頭においた議論を行うようです。

このような考えは方向性としてはありと思いますが、そうはうまくゆかない事情もあります。一番の問題は意匠権には存続期間20年という縛りがあることです。

例えば、自社ブランドアイデンティティたる商品の形態について無事に意匠権が取れたとします。そうすると、商品形態が保護された状態で自社ビジネスを行うことができます。

しかしながら20年後には意匠権が消滅しますので、法律の建前上、誰でもその商品形態を実施することが可能となります。

20年間商品形態を実施することにより、ブランド価値が高まりますが、意匠権消滅後は誰でも実施できますので、20年間のブランド価値を高める活動が無意味となる、おかしな結果となります。

ブランドというのは半永続的に使用することにより価値が高まりますので、存続期間に限りのある権利とはマッチングが悪いことになります。やはり、半永久的に保護可能な商標権による保護が望ましいことになります。

研究会では、このあたりも議論されると思いますので(されないかもしれませんが・・・)、本年度末に出される結論に注目したいと思います。

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