2017年8月15日火曜日

日本の特許制度の大欠陥?

「日本の特許制度の大欠陥、アイデアが世界中に流出する理由」、というネット記事を見かけました(リンクは割愛いたします)。

記事の内容については、新井先生の書かれた『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』という書籍の解説記事のようです。

こういう題名ですと、日本の特許制度に大きな欠陥があるような感じになりますが、諸外国の特許制度は統一が図られておりますので、日本の特許制度特有の欠陥というものはないと思います。

あとは、特許制度自体に欠陥があるのかどうなのか、アンチパテント、プロパテント等の考えもありますが、上記ネット記事はそこまで言及するものではありません。

上記記事の内容(新井先生の書籍ではありません)につきましては、簡単言えば、特許公開により技術が公開され、競合に模倣されるから、秘匿可能な技術については出願しないようにしましょう、という感じでしょうか(厳密に読んでいませんが・・・。)

こういう記事を読みますと、頭の中が20年くらい前で止まっているのかな、と感じます。20年くらい前でしたら、日本の技術力は世界一のレベルにあり、特許出願件数も世界一でした。したがって、日本の技術は盗まれる側でした。

しかし、現在では、日本の技術の多くがキャッチアップされ、出願件数も諸外国に抜かれております。そうすると、現在では、外国公開特許情報を分析して、技術を盗んでやろう(もちろん権利侵害にならない範囲ですが・・・)、という考え、すなわち盗む側にそろそろなると思います。

ノウハウ秘匿戦略に良い悪いはないのですが、ノウハウ秘匿戦略を選択する場合には、先使用権を確保することが必須となります。これは、競合が権利化した場合には、自社実施が不可能となるからです。

もちろん、製造方法は、ばれないからいいという考えもありますが、権利侵害を放置するのは、コンプライアンス上問題がありますので、まともな会社でしたら、自社実施をやめると思います。

国内だけのビジネスを実施している会社でしたら、先使用権は日本国内のみで確保すればよいのですが、グローバルなビジネスを展開している企業でしたら、各国ごとに先使用権確保の作業をしなければなりませんので、大変です。

個人的には、競合他社が権利化しそうなノウハウにつきましては、先んじて権利化することもよいのではと思います。そうすることにより、先使用権確保の作業の負担が低減できます。

もちろんコカ・コーラの製法のような、競合他社が永遠に開発不可能な技術については、秘匿戦略でよいと思います。

さて、こういうネット記事というものは著作権法上どうなのかという気もします。書籍の要約でも翻案権の侵害になりますので、著作権者の許諾を得ていると思いますが、著作者の意図と違うような解釈がなされる要約の場合には、同一性保持権とか問題になりそうな気もします(もちろん同意があればよいのですが)。

要約の内容が、著者の意図と多少異なっているようですので、気になるところです。


2017年8月6日日曜日

ローコンテクストとハイコンテクストについて

文化は、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化に分類されることがあるそうです。

ハイコンテクスト文化では、言語以外に状況や文脈も情報を伝達し、重要な情報でも言語に表現されないことがあるそうで、具体的には日本のような文化を示すそうです。

ローコンテクスト文化では、伝達される情報は言語の中で全て提示されるそうで、具体的には、ドイツやアメリカのような文化を示すそうです。

ハイコンテクスト文化だからといって、文化のレベルが高いという訳ではなく、言語以外のコミュニケーションが使われる度合いが高いというだけの意味です。

ハイコンテクスト、ローコンテクストというのは、文化の分類だけではなく、例えば仕事の分類にも使えるのではないかと思います。

例えば、ローコンテクストな仕事には、弁理士があります。発明の内容については100%言語を使用して明細書を作成する必要があります。ハイコンテクストな明細書を作成した場合には、発明が不明確であるとして拒絶されるでしょう。

ハイコンテクストな仕事には芸術家があると思います。音楽やら絵画やら自己の作品を言語を使用することなしに、伝えなければなりません。言語を使ったら負けという世界です。

また、仕事ではなく、商品の分類にも使えそうです。 

ブランドはもういらないで紹介したような製品は、言語で品質のすべてが説明できるローコンテクスト商品といえます。

また、日本製品は、価格が安く、品質も高いということで、特性をすべて言語で説明できるローコンテクスト商品といえます。(ローコンテクスト商品だからといって、レベルが低い訳ではないのは上記のとおりです。)

一方、ハイコンテクストな商品としては、いわゆるブランド品があると思います。シャネルのバッグやハーレーのバイク等、言語で表すことが困難な特性を有する製品です。

こう書くとハイコンテクストな商品の方がいいような気もしますがそうでもありません。ローコンテクストな商品は、特性を言語で伝えることができるため、良さが理解しやすいメリットがあります。

例えば、日本のバイクは馬力、車重等に優れ、その良さを、国・文化を問わず伝えやすいので、世界中で売れております。

一方、ハイコンテクストな商品はユーザーが良さを理解しにくいので、プロモーションにコストかけないと、なかなか売れない商品といえます。

とはいえ、ローコンテクストな商品は、特性が競合にも理解しやすくキャッチアップされやすく、競争が厳しくなりやすいため、差別化しにくいといえます。

逆に、ハイコンテクストな商品は、 特性が競合に理解しにくいため、差別化には有利化かもしれません。

ということで、ハイコンテクスト、ローコンテクストという観点でいろいろ考えると面白いかもしれません。


2017年8月3日木曜日

ブランド属性とブランドアイデンティティーについて

(前記事)
ブランドQFDについて(論文へのリンクあり)
ブランドの定義について
ブランド知識について
ブランド知識の構造化について

ブランドQFDは、「顧客ニーズ」と「品質」と「ブランド属性」との関係を明らかにします。

ここで「ブランド属性」とは何かといえば、製品・サービスが備える顧客価値向上に関わる要素のことを言います。

上記ブランドQFD論文では、ブランド属性を製品の構成要素に限定しておりますが、これは、特許情報から抽出できるのが製品の構成要素のみだからです。

したがって、実際には、その他の要素(デザイン、サービス、会社のビジョン)なども、ブランド属性に含まれるかと思います。

例えば、自動車の場合には、エンジン、タイヤ、シャシー、サスペンションなどがブランド属性となると思います(もちろん、もっと細かく分けることも可能です)。

自動車メーカーごとのブランド属性は共通している要素もあり、異なる要素もあります。

スバルのエンジンは、水平対向エンジンであり、その他のメーカのエンジンは、直列エンジンであったり、V型エンジンであったりします。

つまり、ブランド属性「エンジン」において、スバルは他に無い特有のエンジンを有しているわけで、これがスバルのブランドアイデンティティー (の1つ)となります。

このように、自社のブランド属性を抽出して、他社のブランド属性と比較することにより、自社のブランドアイデンティティーを明確にすることができます。

2017年7月28日金曜日

ブランド知識の構造化について

(前記事)
ブランドQFDについて
ブランドの定義について
ブランド知識について

ブランド知識にはいろいろあることを説明いたしましたが、ブランド知識を得るだけではブランドとはなりません。

次に、ブランド知識間の関係(コンテクストともいいます)を明らかにする必要があります。

なぜ関係を明らかにするかといえば、人間は物事のつながりから、物事を理解するためです。これはブランドだけではなく、例えば、バランススコアカードやロジックモデル等に共通する考えです。

そして、様々なコンテクストの全体像が構造化されたブランド知識となります。

とはいえ、ブランド知識間の関連の強さを確認するというのもどうやっていいのかわからないところがあります。

ブランドQFDを使用しますと、「ユーザーニーズ」と「品質」と「ブランド属性」の間の関係を確認することができます。

さらに、ブランドQFDの優れた点は、コンテクストの強さが数値化(定性的ではありますが)されるところです。したがって、どのコンテクストが支配的で、どのコンテクストが弱いか判断できます。

そして、コンテクストの弱い部分については、広告宣伝をしたり、ブランド属性の開発をしたりして、関係を強化するような、ブランド戦略を立てることもできます。

このように、ブランドQFDは、ブランド知識の構造を把握するために有用です。

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