2019年1月20日日曜日

特許情報の適用法について

特許情報を活用法については、いろいろありますが、自分なりにまとめますと以下のような感じになると思います。



情報源
目的
使用ツール
特許情報の適用法
単一
技術分析
QC7つ道具、特性要因図
マクロ・セミマクロ
マーケティング分析
マーケティングツール
マクロ・セミマクロ
複数
ニーズ分析
QFD
セミマクロ
ブランド分析
ブランドQFD
セミマクロ


技術分析につきましては、特許情報は技術情報の集合ですので、古くから利用されております。

使用ツールに関しましては、品質管理に使用されるQC7つ道具等が、豊富な事例とともにありますので、これらに特許情報を組み合わせることが行なわれています。

特許情報の適用につきましては、書誌的事項に基づくもの(マクロ分析)、コーディングされた用語に基づくもの(セミマクロ分析)等があります。

マーケティング分析につきましては、最近、IPランドスケープとして注目されています。

ちなみに、私はIPランドスケープをよく知りません。弁理士会の研修でIPランドスケープの研修に申し込んでおりますが、人気があるようで抽選にほとんど外れており、知識を得る機会がありません・・・。


使用ツールにつきましては、マーケティングツール(SWOT、STP、4P等)が、こちらも豊富な事例とともにありますので、これらに特許情報を組み合わせることを行えばよいと考えます。

特許情報の適用につきましては、書誌的事項に基づくもの(マクロ分析)が主ですが、私はコーディングされた用語に基づくもの(セミマクロ分析)に、チャレンジしたのが以下となります。

 https://www.j-mac.or.jp/wp/dtl.php?wp_id=75

ただし、特許情報は、技術情報が主であり、顧客ニーズの情報はとれませんので、特許情報に基づくマーケティング分析は、厳密には、技術(テクノロジー)マーケティングのような感じとなります。

したがって、BtoC企業の場合には、他のマーケティング情報を組み合わせないと、十分な分析ができないと感じます。

ニーズ分析につきましては、最近はやりのデザイン思考につながるものとなります。

使用ツールにつきましては、QFDがあります。QFDにつきましては、豊富な事例がありますので、これらに特許情報を組み合わせることを行うことが考えられますが、私がさぼっているため、特許情報を組み合わせた事例はほぼないです。

特許情報の適用につきましては、コーディングされた用語に基づくもの(セミマクロ分析)となります。これはQFDの特性によるものです。

QFDの本を読むとわかりますが、無数の直交表を組み合わせた分析法が記載されております。つまり、QFDは直交表をつくることにより、様々な情報の結合を可能としており、直交表をつくるには、コーディング作業が必要となります。

QFDでは、「顧客要求と品質」の二元表(品質表)が中心となりますので、これと特許情報から抽出した 「品質と構成要件」の二元表を組み合わせて、ニーズと構成要件の関係を分析します。これを勝手にパテントQFDと名付けております。

「顧客要求と品質」の二元表(品質表)は特許情報からは抽出できませんので、別途アンケート調査等を行い作成します。つまり、パテントQFDでは、別々に取得したニーズ情報と特許情報を組み合わせることとなります。

従来の特許情報解析では、特許情報のみから何らかの結果を得ようとしますが、パテントQFDでは、特許情報と他の情報を組み合せますので、より無理のない分析を行うことができます。

最後に、ブランド分析ですが、 これはまだ流行っておりません。

使用ツールにつきましては、ブランドQFDがあります。ブランドQFDにつきましては名工大の加藤先生がいくつかの事例を作られているのみで、事例は豊富ではありません。したがって、特許情報を組み合わせた事例もほぼないです。

私が以前事例づくりに、 チャレンジしたのが以下となります。

https://system.jpaa.or.jp/patent/?freekeyword=%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89&year%5Byear%5D=2017&month%5Bmonth%5D=03


特許情報の適用につきましては、コーディングされた用語に基づくもの(セミマクロ分析)となります。

ブランドQFDでは、「自己表現・情緒便益と機能便益」の二元表と、特許情報から抽出された「機能便益(品質)とブランド属性(構成要件)」の二元表を組み合わせて、自己表現・情緒便益とブランド属性の関係を分析します。

ということで、用途に応じて、特許情報を活用いただければと思います。


2019年1月18日金曜日

規格開発エキスパート講座について(1)

本日、日本規格協会の規格開発エキスパート講座の最終日を受けてきました。

修了試験に合格すれば、「規格開発エキスパート補」の資格が得られるのですが、試験内容はボロボロでしたので、どうなるかよくわかりません。

無事合格しましたら、右のプロフィール欄に追加しようと思います。不合格の場合には、この話題はスルーとなります。

講座の内容は、実際の規格文書の作成実務となっております。標準化戦略自体は農工大MOTで勉強しましたので、今回の規格作成実務の知識を得たことにより、知識がより充実しました。

今後ですが、規格をバンバン作ろうかというかといえば、そうではなく、若干ネガティブな印象です。

規格化をした場合には、自社の技術情報を大なり小なり出さなければなりませんので、これが大きなデメリットとなります。

特に製品規格(製品の構造の規格)を規定した場合には、規格の構造の製品がごまんと市場に出てくるため、絶対に避けなければなりません。このような規格案を見かけましたらすぐに却下しましょう。

このようなことから、特に、業界リーダー企業につきましては、標準化の意味はあまりないでしょう。

上記デメリットを避けるために最近、性能試験標準というのが提唱されております。これは、製品の性能試験法を標準化するものです。これによれば製品の構造を開示する必要がありませんので、類似製品の蔓延を防げます。

とはいえ、性能試験標準を規定した場合には、その後、性能開発競争が起きる可能性があります。つまり、性能試験標準を規定した直後は、自社製品の性能を明確にでき、製品の差別化を実現できますが、開発競争が始まりますと、性能差が縮まり、差別化ができなくなり、さらに、競合の性能が自社を上回りますと、もはや逆効果となります。

したがって、性能試験標準を規定する場合には、競合が性能をキャッチアップできないような、他の策も同時に講じる必要があります。

そう考えますと、標準化を検討することはよいことなのですが、実際にはメリット・デメリットを考慮して、むやみな標準化は避ける、というようなことも必要と思います。

あと、講座を通じて実感したのが、これからは、サービス規格の時代だ、ということです。製品規格の場合には、自然法則が支配しますので、私のような理系の人間には理解しやすいのですが、サービス規格の場合には、人間の心理が支配しますので、ちょっと勝手が違うと感じました。その分、規格も面白く、将来性を感じます。


2019年1月12日土曜日

課題と解決手段について(4)

課題と解決手段には、連続、準連続、非連続の種類があり、それらの組み合わせにより、特許性が定まることがわかりました。

そして、連続、準連続、非連続の設定は、メリット、デメリットを考えて選択する必要があります。

課題を非連続とした場合には、イノベーティブな製品となる可能性がありますが、市場性がない可能性があります。そうしますと、製品開発でとれるリスクを勘案して、選択することになります。

解決手段を非連続とした場合には、他社がキャッチアップしにくい特許性のある製品となる可能性がありますが、技術開発に工数が必要となります。場合によっては開発に失敗する可能性があります。そうしますと、こちらも製品開発でとれるリスクを勘案して、選択することになります。

そう考えますと、課題と解決手段の組み合わせが、非連続同士というのは、リスクが高すぎてありえないことになります。

例えば、課題を「連続」、解決手段を「非連続」とする、または、課題を「非連続」、解決手段を「連続」とすることにより、リスクをコントロールできそうです。

例えば、「交通渋滞」という連続的な課題に対し、「空を飛ぶ」ような非連続な解決手段を組み合わせたり、任天堂のwiiやアップルのiphoneのように非連続的な課題を設定し、解決手段として、現状手に入るものの寄せ集めのような連続的な解決手段を組み合わせることが考えられます(枯れた技術の水平思考) 。

そう考えますと、世の中には、ブランド力を有する企業のような非連続な課題を狙っている企業や、ベンチャーのような非連続の解決手段を狙っている企業があり、これがイノベーションを起こしていることがわかります。

2019年1月6日日曜日

課題と解決手段について(3)

課題と解決手段がそろえば、特許出願という話となると思いますが、特許性についてまとめると以下のような感じとなります。



解決手段
連続的
準連続的
非連続的
課題
連続的
×
×
準連続的
×
非連続的
(〇:特許性あり、△:格別な効果があれば「特許性あり」、×:特許性なし)


特許出願の仕事をしておりますと、出願依頼の時点では、課題も解決手段も「連続的」なものが多いです。

このままでは、拒絶される可能性があるため、発明者にいろいろヒアリングして、課題や解決手段をせめて準連続な方向へもってゆくことが多いです。

ただし、このような明細書作成段階で、特許性を向上する努力は果たして意味があるか、考えた方が良いです。

発明発想により、解決手段を準連続、非連続な方へもってゆくことは可能ですが、そうすると実際の実施態様とかけ離れる場合があります。

そのような態様について特許化しても、実際に実施しないのですから、特許料を払う分無駄となってしまう可能性があります。

むしろ、むやみに準連続、非連続化せずに、実施態様レベルで審査を受けて、それが拒絶されれば、少なくとも他社にも権利化されないことの確認が得られ、それで十分という場合もあります。

もちろん、特許事務所としては特許査定となれば成功報酬が得られ、「当所の特許査定率○○%以上!」というような広告宣伝もできますので、なんでもかんでも特許にしようとするのですが、そのあたりを出願人は冷静に判断する必要があります。

そう考えますと、発明発想というのは、明細書作成段階ではなく、研究開発の最初の段階でやっておくのがよいということになるかと思います。

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