2023年7月8日土曜日

知財デザインの現在地

私はこの10年、知財デザイン手法を考案しようと、いろいろ研究しておりますが、まだアウトプットとしては出せておりません。

方法論としては、人間に頼るのではなく、特許データをベースに様々なツールを駆使して、分析を進めるようにしたいと考えております。

これは、従来の方法論は人間に頼る部分が多すぎ、実現が難しいのではないかという課題意識によります。

また、方法論については、できるだけシンプルにしたいと考えてます。これは複雑なものは実現不能と考えるからです。

今のところのまとめは以下の表となります。

 

量的分析については、いろいろな方がやっているのでそれをマネします。

質的分析については、特許分析の世界では認知度が低く、これの理解をしてもらうことが一番の課題となります。

ただし、生成AIという強力な武器が登場しましたので、こちらも実現が近付いていると考えます。生成AIはトランスフォーマーというアーキテクチャーにより、文脈を維持しますので、従来AIにはできない処理が可能です。

話は変わりますが、前回のパネルで、生成AIの活用について議論しました。感想としては、生成AIの活用場面は意外と狭いのではないか、ということになります。

生成AIの出力は、客観性が低く、量的分析(IPランドスケープなど)には使いにくいということのようです。したがって、量的分析には、客観性の高い従来AIの方が、使い出がある、との感想を持ちました。

したがって、量的分析をメインに行う方からは、生成AIに対する失望みたいなものが、近いうちに、聞こえてくることになる気がします。このあたりは、用途に合わせた使い分けが重要となる気がします。

ということで、研究を進めようと思います。

書籍の改定予定について

昨年kindle本を2冊出しましたが、改訂作業を行いたいと思います。

テキストマイニングでできる特許データ分析入門(kindle版)につきましては、

・トピックモデルの使い方の追加

・2022年の知財学会の内容の追加

・ChatGPTの活用の追加(できれば)

となります。改定予定は、年内を目標にしたいと思います。

Excelでできる特許データ分析入門(kindle版)につきましては

・2023年知財学会発表予定の内容の追加

・ChatGPTの活用の追加

となります。改定予定は、来年夏を目標にしたいと思います。

また、新作として

「Pythonでできる特許データ分析入門」を来年春頃に上市したいと思います。

内容は、Pythonで簡単な特許マップを書くという基本的な内容になります。

ChatGPT関連についても書きたいのですが、日々新しいことが起きており、言及した瞬間古くなるという状況となっています。 

したがって、状況が落ち着いたらまとめたいと思います(数年後くらい?)

2023年6月22日木曜日

MPUF(Microsoft Project Users Forum) R&Dイノベーション研究会について

MPUF(Microsoft Project Users Forum) R&Dイノベーション研究会 2023年 年次大会というものにパネリストとして参加することになりました。

以下のURLから誰でも無料で参加できますので、お時間のあるかたは是非参加をご検討ください。

MPUF (Microsoft Project Users Forum)

私が参加するパネルのテーマは、「ベストアイデアを速く生み、 アイデアを早くなるべく短い所要時間で保護し、なるべく短い所要時間で他者特許クリアランスをするには」だそうです。

パネラーをするのは初めてですので、何を話したらよいのか、よくわかりませんが、このテーマについて事前に考えをまとめたいと思います。

まず、このテーマを見た第一印象は、「長くて欲張り」ということです。何か、「早く処理する」というニーズがあるのでしょうか?もちろん、早いことには越したことはありませんが。


テーマを分解しますと

1.ベストアイデアを早く生む

2.アイデアを早く権利化する

3.アイデアを?早くクリアランスする

の3つとなると思います。それでは、1番目から検討します。


1.ベストアイデアを早く生む

これですが、いきなり難題です。

アイデアというのは、仮説形成(アブダクション)により、生成されるものですが、アブダクションは誤りを含むことが運命づけられておりますので、直接的にベストアイデアを生むことはできません。

通常は、

①アイデアを大量に生成する

②大量に生成されたアイデアを検証する

③残ったアイデアがベストアイデアとなる

という、いわゆるデザイン思考のような過程を通じて、ベストアイデアというものが確認されることになります。

そうしますと、ベストアイデアを早く生むには、①~③の過程を高速で実行することになると思います。

おそらく人手で実行すると高速化は困難となると思いますので、ここは流行のいわゆるAIの活用が考えられると思います。

AIを活用したアイデア生成の事例として、以前以下の事例をつくりましたので、これらを使おうかと思います。

AIに頼り切って発明してみた

https://qiita.com/ip_design/items/c23f40a97367c58c7acf

再度AIに頼って発明してみる(あわよくばクレームも書いてもらう)

https://qiita.com/ip_design/items/c2291ffbaca4d01a3c26

ただし、アイデアの検証まではできておりません。これは、実際にプロトタイプを作っての検証が必要ですので、AIを使っての高速化は難しいと思います。

一部、マテリアルインフォマティクスの分野で、機械学習を使った検証が実用化されているようですので、技術分野によっては、これもAI化できるとは思います。


2.アイデアを早く権利化する

これは、

①明細書を早く作る

②早期審査を利用して早期権利化を図る

というような話となると思います。②の早期審査の利用については、現在もやられていることですので、①の明細書を早く作るという話が中心になると思います。

先日参加した研修では、ドイツの弁理士が、ChatGPTを使用してアイデア発想から特許出願まで30分で行ったことを報告しておりました。

ということで、ChatGPTで明細書を書けば、早く出願をできることになります。これに関しては、ChatGPTの利用ということで話は終わると思います。


3.アイデアを?早くクリアランスする

特許クリアランスとは、自社の製品が他者の保有する特許権を侵害していないかどうかを確認することだそうです。

進め方としては2つの方針があると思います。

①完成したアイデア製品を事後的にクリアランスチェックをする。

これは、一般的な考えで、アイデア製品を言語化し、特許権検索を行い、近似する特許権の請求項と言語化されたアイデア製品を対比して、侵害確認を行うことになります。

特許検索には、従来AIを使用できるかもしれません(ただし、検索漏れが怖いですが・・・)

②アイデア発想の段階で、クリアランスも実施してしまう。

これは、アイデア発想の段階で、先んじて、侵害しそうなアイデアを除去してしまう、という考えです。ではどうやって実現するか言えば、アイデア発想の段階で、特許データを活用することが考えられます。

ChatGPTにアイデア発想をさせますと、このような処理はできませんので、アイデア発想手順を考える必要がありますが、具体的には、今のところ思いついておりません。

例えば、ChatGPTのような「生成AI」にアイデアを発想させ、別に「検証AI」というものを作り、「生成AI」と「検証AI」との間で勝手にやり取りさせて、問題のないアイデアのみ出力させることが考えられますが、まあ、誰か実現できるでしょうか?


ということで、もう少し考えをまとめたいと思います。

2023年6月19日月曜日

日本の特許出願は少なすぎる!

弁理士は、弁理士会の研修を受講して、所定の単位数を取得しないと、懲戒となってしまうのですが、先日、掲題の研修を見つけました。

その研修を受けておりませんので、内容はわからないのですが、日本の特許出願件数が少なすぎるのは同意です。

特許出願をなぜするかといえば、いろいろな説がありますが、個人的には、未来における事業領域の確保があると思います。

特許権をとれば、その権利範囲内で(まあ安全に)事業実施することができます。

逆に特許がありませんと、誰のものかわからない土地に、ビルを建てて商売するようなもので、最悪事業を停止することになるかもしれません。

したがって、特許出願が足りませんと、5年、10年後に安心して事業を行える領域がなくなり、商売に支障が出ることになります。

といっても、数十年前は日本も特許出願を盛んに行っていましたので、どうしてこうなってしまったかといえば、2つの理由が考えられます。

一つは、コストカット重視の企業が増えたことがあると思います。バブル崩壊以降、日本企業はリストラを進めましたが、その中で、コストカットすることはよいことだという意識が強くなったと思います。

コストカットのよいところは効果がわかりやすいことです。例えば、特許出願を1件やめれば100万円コストカットできたと成果を主張できます。

一方、特許出願1件やめたことによる、将来事業の喪失については、誰にも定量的にはわかりませんので、特許を増やすことによる成果は主張しにくいものがあります。

といっても、このあたりは、10年後、特許を増やした企業は生き残り、特許を減らした企業はじり貧となると思いますので、コストカットの弊害みたいなものは、将来明らかになると思います。

二つ目は、特許庁による出願件数抑制策があると思います。これは、出願件数が多いと特許庁の処理能力を超えてしまいますので、出願件数抑制のお願いを以前は行っておりました。

例えば、ノウハウは出願しないように、とか、価値ある特許のみ出願するように、という話となります。

ノウハウは出願しないようにといいますが、他社がそのノウハウを特許化した場合には、面倒なことになります。また、価値ある特許というのも結果論でして、出願時に正確に価値を算定することは不可能となります。

そうしますと、この企業のコストカットと特許庁の抑制策は、なかなかマッチングが良い、すなわち、企業は経費削減できるし、特許庁は出願件数を減らすことができるという相乗効果で、日本の特許出願件数は減る方向となり、今もその考えが強いのではないかと思います。

このように、企業のコスト削減と特許庁の対応能力という二つの要因が、日本の特許出願件数の減少につながっていると考えられます。しかし、これが将来のビジネスの安定と発展に対するリスクを高めていることを認識することが重要です。特許出願がビジネスの将来に与える影響を理解し、その価値を正しく評価する必要があります。

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