特許を出願する場合には特許明細書を作成する必要があることはご存知と思います。特許明細書の作成には技術的な側面と法律的な側面があります。
技術的な側面としましては、明細書を読んだ当業者が発明を実施できる程度に記載しなければなりません。また、法律的な側面としましては、新規性、進歩性等を満たすよう明細書を記載しなければなりません。
大企業の明細書の場合には、上記の2つの側面以外に、不必要な記載はできるだけ削除し、より抽象的な表現を使うなどの点に気が使われます。
これは、不必要な記載はノウハウが漏れるおそれがあるためで、抽象的な表現が使われるのは発明が限定的に解釈されることを防止するためです。
したがって、大企業の明細書を読んでも記載が最小限であり抽象的であることから、第三者が読んでも技術がよくわからない場合があります。
それでは中小企業や大学の場合、明細書の書き方は大企業と同じで良いのでしょうか?
大企業は特許発明を自社で実施することが多いのに対し、中小企業や大学は、アライアンスやライセンスなどにより他社に使ってもらいたい技術が多いと思います。
その場合には、何よりターゲットとする企業に注目してもらえる明細書に仕上げることが重要と思います。簡単にいえば特許明細書を宣伝に使用するという考えです。
それでは、宣伝効果のある特許明細書の記載について考えてみましょう。
まず、【発明の名称】ですが、具体的な製品を想起できる名称がいいでしょう。例えば、「画像形成装置」とするより、「省エネ型プリンタ」としたほうがわかりやすいと思います。
【先行技術文献】については、ターゲットとする会社の出願を特許文献として上げることがいいと思います。これは、ターゲット企業による特許検索に引っかかりやすくなる効果と、ターゲット企業の課題を解決できる技術として売り込める効果があるからです。
【発明の効果】については、技術的効果のみならず経済的効果を含めることができれば売りやすいと思います。
【発明を実施するための形態】については、ターゲット企業がよく使用する技術用語(キーワード)を散りばめて、ターゲット企業による特許検索に引っかかりやすくすることが好ましいです。
技術用語というのは会社ごとの方言(歯車とギア、光ファイバと光学ファイバなど)がありますので、ターゲット企業の明細書によく使用されている用語を使用することによりターゲット企業の技術者が見てくれる可能性が高まります。
【実施例】については、ターゲット企業の装置に適用する手法や、適用した場合の効果を、あたかもカタログや取説の用に記載すれば、技術者にとっては実際のイメージがわきやすいと思います。
このように、余分な記載が増えますので少々邪道ともいえますが、ポイントとしてはターゲット企業の特許検索に引っかかりやすい記載とすることと、技術者の方が読んですぐ理解できる記載とすることと思います。
ライセンスやアライアンスを考えている方は明細書を使う宣伝を試みてみてはいかがでしょうか。