2022年11月30日水曜日

撤退戦を考える

ドラマなどを見ておりますと、ねじ工場の経営が立ちいかなくなり、社長が追い込まれるシーンなどがよく見受けられます。

これは、社長が金銭的に追い込まれる姿を見せて、視聴者を引き付けるという、趣味の悪い目的となります。(ちなみに、こういうシーンが出た瞬間、私は視聴をやめます・・・。)

ドラマでは、①社長が(なぜか)新しいアイデアを思いついて、業績が急回復するパターンと、②夜逃げや命を絶つパターンが、あると思います。どちらも視聴者の心理にインパクトを与えます。

しかし、現実はどうなのかと考えると①も②もないのかなと思います。

①の新アイデアですが、アイデアとは心理的にリラックスしている瞬間に生まれるものですので、債権者が金返せと毎日押しかける状況で、よいアイデアが浮かぶかというと疑問です(メンタルが強い人ならあるかもしれませんが) 。

そういう意味では、アイデアというのは経営的・心理的に余裕がある状況で考えておくべきともいえます。ただし、ねじ工場は、日々の経営で手いっぱいで、常日頃から金銭的余裕はないと思いますので、あくまでも理想論となります。

②ですが、これは、経験上は、基本的には破産処理で進むことになります(したがって、逃げもせず、みなさん無事に?生きていることになります。)

やはり、ドラマチックな展開として、地獄への転落を描きたいとは思いますが、このドラマの描き方はやはりよくないと思います。

というのも、これからの日本は企業家を増やしてゆく必要がありますが、こういうドラマに洗脳されてしますと、起業を躊躇するマインドとなりかねないからです。

それで、私がねじ工場を経営し、経営が立ち行かなくなったとしたら、どうするか考えてみました。

まず、ねじはコモディティですので、安く無ければ売れません。しかし、安く作るには人件費の安い国へ工場を移転するしかありませんが、そこまでの投資余力もないと思います。

新しいねじを開発しようにも、アイデアはありませんし、このような経営状態では銀行からの融資もままなりません。

そうしますと、会社を(余力のあるうちに)清算する、という判断をするかと思います。

このようなことを書くと、根性がないとかいわれそうです。物事は苦労して継続するのが日本人の美徳ですので、簡単にやめるのはよくないと思われてしまうのではないでしょうか。

ただし、会社を清算するのにも、費用や労力が必要ですので、余力があるときに決断しませんと上記②へ進むしかなくなります。

また、余力があれば、再起も図れます(新しいねじを開発するために大学院へゆくなど)。

戦争に例えれば、撤退戦を考えることになります(戦争に例えるのは嫌ですが・・)。要は勝ち目がなくなったら、撤退して、戦力を温存し、次の戦いに備えるという考えです。

勝ち目がないのに戦力を投入しますと、玉砕し、戦力が失われます。これにより反攻ができなくなります。

とはいえ、撤退戦というのは負け確となりますので、ドラマのネタとしては弱いと思います。ねじ工場を畳んで、再起したというのであれば、ドラマとしてはつまらないですし。ということで、ねじ工場が苦しむ姿は今後のドラマでも描かれることになるかと思います。

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