2016年7月23日土曜日

知財高裁判決(2016年6月5日~2016年6月25日)



201665日から2016625日までになされた裁判は、侵害訴訟5件(特許1件、著作権3件、不競法1件)、審決取消訴訟6件(特許4件、商標2件)です。

1.侵害訴訟

(1)平成28(ネ)10026 売掛金(水戸地方裁判所 龍ケ崎支部 平成27()24
平成28623日判決 原判決一部変更(3部)
著作権 
複製・翻案,著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権),送信可能化行為

*コメント
著作権侵害は認められましたが、本件著作権侵害に基づく使用料相当額はせいぜい5万円と認められ、訴訟費用や訴訟に費やした時間を考えますと、どうなんだろうという結果となりました。

(2)平成28(ネ)10025 売掛金(千葉地方裁判所 松戸支部 平成27()209
平成28623日判決 控訴棄却(3部)
著作権
著作物性

*コメント
写真データについては、控訴人以外の者の撮影によるものと見られる眼鏡の写真と本件写真データとで格別相違がないため創作性がなく、著作物性が認められませんでした。
また、本件写真データは著作権登録されておりますが、著作権登録がされたとしても,それによって,その対象となったものに著作物性があることが確定されるわけではないともされております(無審査なので当然ともいえます)。

(3)平成27(ネ)10028 特許権侵害差止等(東京地方裁判所 平成24()15693
平成28623日判決 控訴棄却(3部)
特許権 (図書保管管理装置)
構成要件充足性,特許の有効性(進歩性)

*コメント
下記審決取消訴訟の関連訴訟です。こちらでも特許は無効とされ、権利行使はできないとされました。

(4)平成27(ネ)10137 損害賠償等(東京地方裁判所 平成26()16526
平成28613日判決 控訴棄却(2部)
不正競争
営業秘密

*コメント
控訴人名簿は、住所,電話番号等の連絡先に係る情報を含まないため,有用性は極めて乏しく、控訴人名簿等は使用されていないと推認され、したがって、営業秘密を使用したとは認められないとされました。

(5)平成28(ネ)10021 損害賠償等(東京地方裁判所 平成27()9469
平成2869日判決 控訴棄却(3部)
著作権
損害額,著作者人格権(その他)

*コメントはありません・・・

2審決取消訴訟

(1)平成28(行ケ)10003 商標取消決定取消
平成28623日判決 請求棄却(3部)
商標権
周知性(4条1項10号)

*コメント
引用商標の周知性が争点となりましたが、各種証拠から、引用商標1は,少なくとも関西地域及び徳島県における取引者,需要者の間において広く認識されていたものと認めることができる、とされました。

(2)平成26(行ケ)10166 審決(無効・成立)取消
平成28623日判決 請求棄却(3部)
特許権 (図書保管管理装置)
進歩性(相違点の認定,相違点の判断),判決の拘束力

*コメントはありません・・・

(3)平成27(行ケ)10236 審決(拒絶)取消
平成28622日判決 請求棄却(2部)
特許権 (トイレットロールの芯,及び,トイレットロール)
進歩性(引用発明の認定,相違点の認定,相違点の判断)

*コメント
トイレットペーパーの上下をわかりやすくする発明ですが、私もよく上下を間違えますので、この判決にでてくるようなトイレットペーパーがあると便利と思うのですが、見かけませんね。

(4)平成27(行ケ)10208 審決(無効・不成立)取消
平成28622日判決 請求棄却(2部)
特許権 (魚釣用リール)
進歩性(相違点の判断)

*コメント
①甲4に本件発明の課題を認識するに足りる記載はない(動機づけなし)
②甲1に甲4を適用することは構造的にできない(阻害要因)
③甲1に甲4を適用しても本件発明の構成にはならない。
という、①から③の3点セットで、創作非容易性が肯定されております。
①だけですと弱いですが(従来にない新規の課題であれば強いですが)、③まで主張できれば、ほぼ創作非容易性の主張が認められることになるかと思います。

(5)平成27(行ケ)10202 審決(取消・成立)取消
平成28621日判決 審決取消(3部)
商標権
不使用(50条)

*コメント
特許庁長官も,申請者が訴外会社とは異なることを看過して更新登録をしてしまった可能性はあり得る(つまり、更新手続きが誤って行われた可能性がある)、とされております。
商標の場合には、何十年も前の大昔に登録されたものも多いですから、当事者適格の確認というのも重要なのかもしれません。

(6)平成27(行ケ)10126 審決(無効・不成立)取消
平成2869日判決 審決取消(3部)
特許権 (ガスセンサ素子及びその製造方法)
進歩性(相違点の判断)

*コメントはありません・・・






2016年7月14日木曜日

知財高裁判決(2016年5月22日~2016年6月4日)



2016522日から201664日までになされた裁判は、侵害訴訟2件(特許1件、著作権1件)、審決取消訴訟1件(特許1件)です。

1.侵害訴訟

(1)平成27()10091  特許権侵害行為差止等(大阪地方裁判所 平成24()6435
平成2861日判決 原判決変更(4部)
特許権 (破袋機とその駆動方法)
損害額,構成要件充足性

*コメント
特許法102条1項ただし書に規定する「販売することができないとする事情」は,例えば,市場における競合品の存在,侵害者の営業努力(ブランド力,宣伝広告),侵害品の性能(機能,デザイン等特許発明以外の特徴),市場の非同一性(価格,販売形態)などの事情がこれに該当するというべきである、との規範が提示されています。
営業努力等は1021項但し書きの事由に該当するか争いがありますが、今の知財高裁の考えは上記となるようです。

(2)平成28()10002  証書真否確認等(東京地方裁判所 平成27()10310
平成28526日判決 控訴棄却(3部)
著作権
その他

2審決取消訴訟

(1)平成27(行ケ)10220  審決(拒絶)取消
平成28530日判決 請求棄却(4部)
特許権 (殺傷犯罪防止刃物)
進歩性(相違点の判断)

*コメント
ナイフ先端に備わるストッパの機能の相違(殺傷防止と半球抜け止め)を主張しましたが、構成としては近似しておりますので、容易想到とされてしまいました。






2016年7月11日月曜日

ブランド戦略について(その2)

以前、ブランド戦略がよくわからないというお話をしました。

その理由としては、「ブランド」という言葉が多義的に用いられており、あまり厳密な定義をしていないとからです。

しかし、いくつか専門書を読んだ結果、「ブランド(戦略)」とは、以下のような、複数の内容の組み合わせとなると考えてよいのではないでしょうか。



一つ目は、ブランドイメージ戦略です。これは、トレードマークやロゴが、需要者の心にどのように感じられるかを中心にする考えです。

ブランドイメージは需要者の心の中に構築されますので、効果的に作用を与える方法(ネーミング、プロモーション)を考えることが、ブランド戦略の柱となります。

二つ目は、ブランドアイデンティティー戦略です。これは、自社が他社と比較して、どのような特徴を有するか、または、有すべきかを中心とする考えです。

ブランドアイデンティティーは企業の中に構築されますので、そのような構造を構築する方法(経営ビジョン、組織、ブランド属性)を考えることが、ブランド戦略の柱となります。

三つ目は、ブランドコミュニケーションです。これは、自社にブランドアイデンティティーがあるといっても、需要者がそのようなブランドイメージを持たなければ、独りよがりとなりますので、このギャップを埋めてゆく考えです。

例えば、自社のブランドアイデンティティーに「品質の高さ」がある場合には、需要者のブランドイメージも「品質の高さ」となるよう広告宣伝をしたり、そういうイメージとなっているか顧客にヒアリングをしたりすることが考えられます。

ということで、ブランド戦略といった場合、上記の3つの分類で話を聞くとわかりやすいと思います。



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