2022年3月31日木曜日

課題・解決手段マップの活用法検討

私のkindle本をご覧になった方でしたら、下記のような課題・解決手段マップをExcelで簡単に?作れるようになったと思います。

 

しかし、マップを作っても活用法がなければ、つくる意味がありません。

一般的に、課題・解決手段マップは、「二元表中の特許出願件数を比較することにより,課題と解決手段の関連性の強弱を判断できる。さらに,二元表中の課題と解決手段に対応する特許出願を分析することにより,自社技術の特許性や抵触性の判断や,自社他社の出願状況を把握できる。それらに基づいて,自社の技術開発計画や特許出願計画を策定できる」、という点で作る意味があるようです。 

その他、マトリクスを利用してQFDによる分析もできたりもします。

しかし、弁理士という仕事の関係上、分析ばかりではつまらなく、何とか発明発想につかえないかと前々から考えています。

しかし、この発想法というのがくせもので、いろいろな本はあるのですが、ピンとくるものはありませんでした。 

そんな中、最近見かけた本に、「創造力を民主化する―たった1つのフレームワークと3つの思考法 (【BOW BOOKS 007】) 永井 翔吾 (著), 発行元:BOW&PARTNERS , 発売元:中央経済グループパブリッシング」、があります(リンクはしません)。

この本の、最初には下記図1枚が貼ってあります。この図が、この本の内容をすべてまとめたものらしく、優秀なコンサルタントらしい見せ方です。

(出典:創造力を民主化する―たった1つのフレームワークと3つの思考法 (【BOW BOOKS 007】) 永井 翔吾 (著), 発行元:BOW&PARTNERS , 発売元:中央経済グループパブリッシング)

図からわかるように、物事を「課題」と「解決手段」に分け、それぞれ、統合思考、アナロジー思考、転換思考により、新規なアイデアを創出する、という内容となっております。

ものごとを「課題」と「解決方法(解決手段)」に分けて考えるというところで、この本は優れていると思いますし、発明発想に応用しやすそうです。

それで、一通り読んでみましたが、なかなか発想法を理解はできませんでした。これは、この著者の方が悪いのではなく、発想法を形式知化するのは難しいからと思います。何回か読み込む必要があります。

この本を読むと、著者の方はものすごい思考力で、課題と解決手段を統合したり転換したりして新しいアイデアを生み出しております。これはまねできないかもしれません・・・。

しかし、課題・解決手段マップをあらかじめ作成しておきますと、

・課題のある程度の体系

・解決手段のある程度の体系

・課題と解決手段のある程度の関係

がわかりますので、ある程度下駄を履いた状態で発明発想ができると思います。

そうしますと、この著者の発想力を100とした場合、60くらいの発想力で済むかもしれません・・・。

課題・解決手段マップの作成は、思考というより機械的作業ですので、機械的作業により発想力を40節約できるイメージです。

とはいえ、せっかく課題解決手段マップを作成したのですから、もう少し課題解決手段マップとリンクさせた発想法を考えたいものです。

この著者の方に、課題解決手段マップを投げてみるというのも一つの手ですが、 私の方でも他の発想法の本を読みつつ、独自の手法を開発したいと思います(当分先になるかもしれませんが・・・)。

2022年3月26日土曜日

学会用の作業について

そろそろ学会発表の用のコンテンツを作り始めようと思います。

テーマは暫定ですが、「テキストマイニングを使用したブランドデザインについて」、にしようかと思います。 

内容としては、多空間デザインモデルを使って、ブランドデザインモデルを作るような内容となります。

前回は、「その他」のカテゴリーでの発表となった訳ですが、題名に「ブランドデザイン」と入れておけば、「ブランド、デザイン」のカテゴリーに復帰できるのではないかと思います。

学会発表をなぜするかといえば、意見を集めるためとなります。その意見が次の研究のネタとなります。

知財学会のよいところは、何か揚げ足をとるような批判だけのダメ出しのようなネガティブな意見を言う方がおらず、前向きの意見が得られるところです。

「その他」での発表は、分析手法に関する意見はいただけるのですが、「ブランド・デザイン」分析としてはどうなんだろうという思いもありますので、その方面の方の意見を収集したいという思いがあります。

ただし、知財学会の「ブランド・デザイン」は「商標法・意匠法」というイメージですので、法律の専門家が集まる感じもあり、ブランドに関する他の学会に鞍替えしようかとも考えましたが、コンテンツがまとまったら考えようと思います。

進め方としては

①商品ジャンルの決定

今までは、おむつや掃除機でやっておりましたが、変えるか変えないかを考えようと思います。

条件としては

・アマゾンレビューが豊富にある

・特許出願も豊富にある

・参入企業にバラエティー(知名度も)がある

ような商品となります。

②データ集め

アマゾンレビューと特許情報を収集します。

今回は、去年覚えたLDAを使用しようと思いますので、それぞれ500件くらい集めて処理しようと思います。 人力作業ですと100件程度が限界でしたが、ビッグなデータの分析にチャレンジします。

③KHcoderで処理

形態素解析⇒LDA⇒共起ネットワーク出力します。

④ブランドデザインモデル作成

共起ネットワークを人力で変形してブランドデザインモデルを作成します。

③でうまく処理できない場合や、④でできたブランドデザインモデルがつまらない場合には、発表見送りとなります。

A社、B社で、レビュー・特許データ1000件ずつで処理しますので、面倒そうです・・・。

また、決まったやり方もありませんので、その都度考えながらやるということで、ベストのものができる訳でもありませんし、正直どうなるかわかりません・・・。

ということで、4月から地道に作業しようと思います。

2022年3月21日月曜日

特許マップの歴史

Amazonでパテントマップで検索したところ

パテントマップと情報戦略―開発に活かす特許の地図

https://www.amazon.co.jp/dp/4827102597

という本がヒットしましたので、買ってみました。送料別で1円ということで、特に財布も痛みません。

初版が昭和63年ということで、いまから34年前の本です。何か参考にしたいというよりは、昔はどのような特許マップを作っていたのかの興味から買ってみました。

興味のある方は、安いので買ってみてください(あと4冊の中古があるようです)。

結構綺麗な本が来ましたので、品質的には当たりでした。

この本に例示されている特許マップですが、とても分かりやすいです。

この当時は、マップ作成に特許分類は使用していないようで、もっぱら技術者により設定された用語が使用されております。これがわかりやすさを増大しております。

なお、このころの企業は特許の独自分類というものを持っていたようで、入手した特許公報には、特許部員が、独自分類を付加してファイルするという作業をしていたようです。これは人手の作業ですので大変です(工数もかかります)。

要は、IPCよりは独自分類の時代といえます。今も独自分類は使われているのでしょうか?

具体的な特許マップの作成法ですが、第6章に記載がありまして、

①パトリス等で特許検索をして特許出願を500件ほど選ぶ

②500件の特許出願をカード化する

③大きな模造紙の上に、500件のカードを並べ、KJ法などで分類して、紙の上にまとめる。

④紙の上に分類して並べた特許出願に基づいて表を作る。

というような、人手の作業(手作りの特許マップ)となります。

工数のイメージとしては、 

(新人)技術者4~5人のグループで2か月掛けて報告書にまとめるという感じとなります。

まあ、公報の読み込みも人間がやりますので、このくらいの工数は必要と思います。

このやり方の良いところは、技術者自身が公報を読み込んで分析しますので、アウトプットの特許マップも技術者の用語で書かれており、わかりやすいことにあるかと思います。

悪いところは工数がかかりすぎのところとなります。分析手法がよくても工数がかかりすぎの場合には、それだけで却下となる企業も多いと思います。

特に最近の企業はコスト管理が厳しいので、特許マップを手作業で作りましょう!などと提案しましたら、あほかと思われてしまうかもしれません。 

こういう人海戦術でつくる特許マップをここでは、第1世代特許マップとします。

上記工数のデメリットを解消したのが、特許マップソフトとなります。これを使用しますと、大量のデータを短時間で処理できますので、工数削減に寄与します。

こういう特許マップソフトでつくる特許マップをここでは、第2世代特許マップとします。

しかし、第2世代マップは、IPC等の特許分類で技術を分析しますので、特許マップはわかりにくくなります。

第1世代のように、用語で分析する場合には、課題、解決手段、用途、材料、効果等の、用語の関連性も分析できますが、 特許分類による分析では、特定技術分野の出願件数大小しか分析できません。

要は、技術の分析に向かない特許マップとなると思います。

ということで、第2世代特許マップは、第1世代特許マップより、役に立たない場面が多いかと思います。ということで、この第2世代特許マップは終わりの時期が近付いているような気がします。

最近は、人工知能を使用した特許マップが増えてまいりました。これが第3世代の特許マップとなるかと思います。

人工知能を使用しますと、第1世代特許マップのように、用語による分析に戻れますので、アウトプットは理解しやすくなりますし、技術分析にも使用できる可能性が高まります。 

また、コンピュータが処理しますので、工数が課題となることもありません。

もっとも、 人工知能を使用した特許マップソフトは高すぎて、私のような貧乏弁理士では使用できません。どなたか、無料で使わせてください。

Excel問題

弁理士会のプロジェクトチームでは、特許マップの標準化を進めているそうです。

これは、標準化を進めることにより、弁理士によるサービスの向上を図ることが目的と思います。

それで、最近標準化案というものが、弁理士会内で公開されましたが、そのマップはほとんどExcelで書かれておりました。

Excelで特許マップを書くのは大変だったと思いますので、プロジェクトチームの方のご苦労が感じられました。

何故Excelで特許マップを書くのかといえば、特定特許マップソフトを使用しますと、弁理士会として、その特定特許マップソフトの使用を推奨しているようなイメージとなるからと思います。

また、特定特許マップソフトを所有していない弁理士は、サービスを提供できないので、標準化の意味もなくなると思います。

安いソフトを弁理士会で開発して、それを推奨するような進め方もあるかもしれませんが、開発費がかかりますし、特許マップソフトメーカーの業務を阻害する可能性もありますので、Excelの使用に落ち着いたのかと思います。 

私も上記の点が気になるため、論文に特許マップを使用する場合にはExcelを使用しております。

特定特許マップソフトの特殊機能を使用した分析論文などは、特定特許マップソフトを購入しなければ、自分では分析できませんので、参考にはなりますが、そのレベルとなります。

Excelのよいところは、解説本が多数出ているところと思います。最近ですと、データビジュアライゼーションに関する本がでていると思いますが、これを使用しますと、洗練されたプレゼン資料を作れると思います。 

また、Excelは年々機能改善が進みますので、昔より使いやすくはなりました。今後はさらに使いやすくなると思います。

あとは、私が今やっている知財デザインマトリクスも現状Excelでしか作れませんので、これは仕方なく使うという感じとなります。

個人的には、特許マップソフトを使用するのと、Excelを使用するのとどちらがよいのかといえば、最近は、Excelかな・・・と思います。それは、Excelの方が表現の自由度が高いので、自分のイメージ通りのマップを作れるからです。

特許マップソフトは、定型のマップを素早く作ることはできますが、定型外のマップは作りにくいと思います(もしかしたら最近のソフトは作れるのかもしれませんが・・・。間違っておりましたらすいません。)

まあ、これも、特許マップをつくる目的によって、感じ方も変わると思いますので、定型業務なら特許マップソフト、面白い特許マップを作るならExcelとなる感じでしょうか。

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