2020年6月20日土曜日

AIツールの使い勝手について

最近は、無料のAIツールがいろいろ利用できるようになっています。もちろん無料のものは機能が制限されており、有料ツールのお試し版という位置づけです。

無料であることから貧乏な私でも使用することができましたので、感想を書きたいと思います。

まずは、DeepLですが、最近は無料翻訳ツールがたくさんあるので助かります。DeepLは最近話題の翻訳ツールの一つです。

試しに、某公開請求項(英語)を日本語に翻訳してみましたところ、少し驚いたのは技術的な専門用語がほぼ完ぺきに翻訳されていたところです。

これはすごいということで、さらに細かく見たところ、英文にはないフレーズが日本語訳に付加されておりました。つまり英文と日本文に内容の不一致の部分がありました。

英文を微修正しても、この謎の日本文が一文追加されてしまうという謎の現象でした(原因は薄々推測できるのですが、ここで自説を披露するのはやめておきます)。

したがいまして、全体としてはよく翻訳されておりますが、実務には使用できないというのが今の感想です。

雑誌とかネット記事とかを大量に読む必要がある場合には、十分に使えるのではないでしょうか。

次に、IP Samurai(一部機能)ですが、これは、発明内容を入力すると、人工知能による類似文献評価を実施します。発明内容から国際特許分類(IPC)を自動認定し、A~Dの4段階でスピーディーに類似性を評価するツールです。

これも特許される確率が表示されますので、楽といえば楽です。

これが実務に使えるかというと、使う人次第となります。例えば、このツールを信用できる人は、ランクAだから出願しようと考えることができますので、役に立ちます。

一方、進歩性があることの論拠まで求める人は、機械学習では因果推論までできませんので、人間が因果推論する必要があります。この場合には、このツールは従来同様の先行文献調査ツールの一つとなります。

古くから、概念検索できるツールがたくさんありますので、これとあまり変わらないということになるかと思います。

結局のところ、AIツールを使いこなすためには、AIツールのアウトプットを正しく評価できる能力が人間にないといけないということになります。

少し前に、AIが裁判に必要な証拠の選択を、人間の弁護士の何百倍もの効率で短時間でこなした、というようなニュースを見ました。

このニュースの論調としては、これをもって弁護士がいらなくなるというものでした。

私の感想としては、AIツールが収集した証拠の妥当性の評価は結局弁護士がやらねばならないのだから、弁護士が必要なことは変わりなく、いらなくなることはないのではないかと思いました。仕事が効率化する程度のこととなると思います。

とはいえ、AIツールの登場は微妙に実務に影響を与えることになるのではないかとも思います。

DeepLを使用した際には、英文クレームをいろいろ微修正して、日本語がどのように変化するか、無意識に試しました。要は、AIが翻訳しやすいクレームの表現を人間の側で考えたということになります。

IP Samurai(一部機能)についても、日本語クレームをいろいろ微修正して、ランクがどのように変化するか、無意識に試しました。要は、AIが類似性を判断しやすいクレームの表現を人間の側で考えたということになります。

従来弁理士は、人間が理解しやすいクレームを書くように、自らを学習させていましたが、これからは機械学習が学習しやすいようなクレームを書けるように、自らを学習させる時代が来つつあると思います。

2020年6月17日水曜日

「知財」の寿命について

最近思いますのが、「知財」という用語が陳腐化しているのではないかということです。

私が「知財」という言葉を初めて知ったのは、就職した1990年代後半のことで、そのころ、会社の「特許部」という呼び名が「知財部」へ変わっていったと思います。

その後、21世紀に入り、国の知財立国宣言などがなされ、知財が大いに盛り上がったと思います。特許出願数は世界一となり、知財高裁もでき、弁理士志望者も1万人を越え、そのころ私も弁理士になりました。

私がよくゆく書店では、そのころ、知財関連書籍に6つの棚を使い、弁理士試験書籍に2つの棚を使っておりました。

今は知財関連書籍の棚は3~4に減り、弁理士試験書籍の棚はほぼ消滅に近い状況となっております。

特許出願件数は減り、知財高裁をつくったのに訴訟は増えず、弁理士志望者も数千人とひどいありさまです。

ということで、2020年、知財の世界は明らかに衰退期に入ったと思われます。

それで気になりますのが「知財」という用語の寿命が尽きますと、私のブログタイトルにも「知財」が入ってますので、なんとなく時代遅れに感じてしまうことにならないかということになります。

ということで、最近は「知財」に代わる言葉があるかどうかと探しています。良い言葉があれば、改名も考えようと思います。

よく考えますと、最近、特許庁も経営デザイン宣言(デザイン経営宣言でしたか?)などと知財に関連が薄い活動をしており、特許庁としても「知財」という用語を使用するのは時代遅れに感じている可能性があります。

なお、経営学では、ライフサイクルの衰退期に入った場合には、「撤退の時期(タイミング)を見極める」、「新製品(サービス)へ移行する、新市場に参入する」との判断が必要とのことです・・・・・・・・・・・。

まあ、どうなんでしょうか?余力のある方は、考えておいた方がよさそうです。

2020年6月10日水曜日

今年度の知財学会はZOOM開催

今年度の知財学会はZOOM開催になるとのアナウンスがありました。

そうすると、自宅でいろいろな人からのダメだしに対応しなければならないため、つらいかなぁとも思いますが、きついコメントは、ネットの接続が悪く、聞こえません・・というような振りで誤魔化せるかもしれません・・・。

ネットで会議は最近しばしばやるのですが、ZOOMでプレゼンしたことがないので、どうしようかなーと思いますが、事前にテスト接続もしてくれるようですので、何とかなるとも思います。

それで一般発表の申し込みですが、一応申し込む方向で考えたいと思います。今回のデザインモデルで知財学会ネタは尽きますので、以後知財学会はお休み(最後?)になると思います。

と、思いましたが、知財学会の一般発表には、オーディナリー・プレゼンテーションとインテンシブ・プレゼンテーションの2種類があって、今回申し込むのはオーディナリー・プレゼンテーションとなります。

インテンシブ・プレゼンテーションの方は、「すでに発表者が公表したいくつかの論文に、さらに新たな要素を加えて、発表するものです。」とされます。

そこで来年は去年と今年のテーマを上位概念化(リサイクル?)したテーマとすれば、インテンシブ・プレゼンテーションのネタにできることになります。

もちろんインテンシブ・プレゼンテーションは、ある程度の選考がありますので、誰でも発表できるわけではありません。そういう意味ではダメな可能性が多々あります。

そういう意味でも今年のデザインモデルの方は、資料をしっかりつくらねばと思います。

2020年6月7日日曜日

発明は仮説推論

最近はIPランドスケープ等の特許情報分析の重要性が叫ばれております。

私が面白いと感じるのは、いくら特許情報分析をしても、その分析結果のみでは発明には至らないことです。

特許を綿密に分析しているのに、発明とはならないのは、何故なんでしょうか?

特許を分析して発明になるのでしたら、特許分析業者が大量に発明をして特許出願できるわけですが、そうでもありません。

一般に、分析とは帰納推論といわれます。つまり、様々な多くの事実から何らかの規則を見出す行為となります。

つまり、帰納推論からは発明は生まれないことになります。

では、発明は何から生まれるといえば、これは仮説推論となります。仮説推論とは、何らかの規則から事実を導出する行為です。

そうしますと、IPランドスケープ等の特許情報分析とは、発明を生み出すための仮説推論の材料(すなわち規則)を提供することに意義がある、ということになります。

一般に、仮説推論の信頼度は、帰納推論や演繹推論と比較して、低いとされますので、精度の高い特許情報分析をしても、優れた発明が生まれるわけではないところが難しいところとなります。

デザイン思考では、仮説推論の信頼度の低さを克服するために、プロトタイプを早く作り演繹推論へ持ち込むことが推奨されます。

演繹推論は事実と規則から結論を導く行為です。演繹推論は論証力が強いといわれておりますので、仮説推論の信頼度の低さを補うことができます。

そうしますと、IPランドスケープを一生懸命考えるのも重要ですが、帰納推論→仮説推論→演繹推論という流れを押えることの方が、より重要となるかと思います。

また、発明者は仮説推論という難易度の高い仕事(失敗する可能性の方が高い仕事!)に取り組んでおりますので、このことからも温かい目で見てあげる必要があると思います。

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