課題と解決手段には、連続、準連続、非連続の種類があり、それらの組み合わせにより、特許性が定まることがわかりました。
そして、連続、準連続、非連続の設定は、メリット、デメリットを考えて選択する必要があります。
課題を非連続とした場合には、イノベーティブな製品となる可能性がありますが、市場性がない可能性があります。そうしますと、製品開発でとれるリスクを勘案して、選択することになります。
解決手段を非連続とした場合には、他社がキャッチアップしにくい特許性のある製品となる可能性がありますが、技術開発に工数が必要となります。場合によっては開発に失敗する可能性があります。そうしますと、こちらも製品開発でとれるリスクを勘案して、選択することになります。
そう考えますと、課題と解決手段の組み合わせが、非連続同士というのは、リスクが高すぎてありえないことになります。
例えば、課題を「連続」、解決手段を「非連続」とする、または、課題を「非連続」、解決手段を「連続」とすることにより、リスクをコントロールできそうです。
例えば、「交通渋滞」という連続的な課題に対し、「空を飛ぶ」ような非連続な解決手段を組み合わせたり、任天堂のwiiやアップルのiphoneのように非連続的な課題を設定し、解決手段として、現状手に入るものの寄せ集めのような連続的な解決手段を組み合わせることが考えられます(枯れた技術の水平思考) 。
そう考えますと、世の中には、ブランド力を有する企業のような非連続な課題を狙っている企業や、ベンチャーのような非連続の解決手段を狙っている企業があり、これがイノベーションを起こしていることがわかります。
2019年1月12日土曜日
2019年1月6日日曜日
課題と解決手段について(3)
課題と解決手段がそろえば、特許出願という話となると思いますが、特許性についてまとめると以下のような感じとなります。
特許出願の仕事をしておりますと、出願依頼の時点では、課題も解決手段も「連続的」なものが多いです。
このままでは、拒絶される可能性があるため、発明者にいろいろヒアリングして、課題や解決手段をせめて準連続な方向へもってゆくことが多いです。
ただし、このような明細書作成段階で、特許性を向上する努力は果たして意味があるか、考えた方が良いです。
発明発想により、解決手段を準連続、非連続な方へもってゆくことは可能ですが、そうすると実際の実施態様とかけ離れる場合があります。
そのような態様について特許化しても、実際に実施しないのですから、特許料を払う分無駄となってしまう可能性があります。
むしろ、むやみに準連続、非連続化せずに、実施態様レベルで審査を受けて、それが拒絶されれば、少なくとも他社にも権利化されないことの確認が得られ、それで十分という場合もあります。
もちろん、特許事務所としては特許査定となれば成功報酬が得られ、「当所の特許査定率○○%以上!」というような広告宣伝もできますので、なんでもかんでも特許にしようとするのですが、そのあたりを出願人は冷静に判断する必要があります。
そう考えますと、発明発想というのは、明細書作成段階ではなく、研究開発の最初の段階でやっておくのがよいということになるかと思います。
|
解決手段
|
|||
連続的
|
準連続的
|
非連続的
|
||
課題
|
連続的
|
×
|
×
|
〇
|
準連続的
|
×
|
△
|
〇
|
|
非連続的
|
△
|
〇
|
〇
|
(〇:特許性あり、△:格別な効果があれば「特許性あり」、×:特許性なし)
特許出願の仕事をしておりますと、出願依頼の時点では、課題も解決手段も「連続的」なものが多いです。
このままでは、拒絶される可能性があるため、発明者にいろいろヒアリングして、課題や解決手段をせめて準連続な方向へもってゆくことが多いです。
ただし、このような明細書作成段階で、特許性を向上する努力は果たして意味があるか、考えた方が良いです。
発明発想により、解決手段を準連続、非連続な方へもってゆくことは可能ですが、そうすると実際の実施態様とかけ離れる場合があります。
そのような態様について特許化しても、実際に実施しないのですから、特許料を払う分無駄となってしまう可能性があります。
むしろ、むやみに準連続、非連続化せずに、実施態様レベルで審査を受けて、それが拒絶されれば、少なくとも他社にも権利化されないことの確認が得られ、それで十分という場合もあります。
もちろん、特許事務所としては特許査定となれば成功報酬が得られ、「当所の特許査定率○○%以上!」というような広告宣伝もできますので、なんでもかんでも特許にしようとするのですが、そのあたりを出願人は冷静に判断する必要があります。
そう考えますと、発明発想というのは、明細書作成段階ではなく、研究開発の最初の段階でやっておくのがよいということになるかと思います。
2019年1月5日土曜日
課題と解決手段について(2)
次に、解決手段の創出ですが、これも「課題」と同様の分類を用いますと、以下のようになります。
連続的解決手段とは、既存設計を多少変更した程度のものです。
準連続的解決手段とは、異なる製品から設計を持ってくるものです。これは、特許調査や文献調査で他の適用可能な設計を発見できそうです。
非連続的解決手段とは、従来にない設計となりますが、従来にありませんので、解決手段を発想するという過程が必要となります。
解決手段の発想ということでは、いろいろな手段がありますが、例えば、ブレインストーミングやTRIZがあります。
私見ですが、ブレインストーミングで解決手段を発想することは難しいのではないかと考えています。それは、ブレインストーミングで解決手段の上位概念は議論できますが、下位概念までは議論できないからです。
すなわち、下位概念から上位概念はわかるが、上位概念から下位概念はわからない、という宿命があります。結局、下位概念の創出は、個人が、地道に時間をかけて探求するしかないと思います。
TRIZに関しては、本をたくさん持っており、高額なTRIZソフトを使ったこともありますが、正直なところ使いこなせていません。
したがいまして、解決手段に関しましては、発想法をどう簡便にするか、が課題となります。
解決手段
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内容
|
設計方法
|
連続的
|
類似設計
寸法、配置の変更程度
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既存設計の改造
|
準連続的
|
適応設計
既存の設計を異なる製品に流用
|
流用可能な設計の文献調査
|
非連続的
|
独自設計
独自の設計を作り上げる
|
機能を実現する構造の創造
(各種発想法の利用)
|
連続的解決手段とは、既存設計を多少変更した程度のものです。
準連続的解決手段とは、異なる製品から設計を持ってくるものです。これは、特許調査や文献調査で他の適用可能な設計を発見できそうです。
非連続的解決手段とは、従来にない設計となりますが、従来にありませんので、解決手段を発想するという過程が必要となります。
解決手段の発想ということでは、いろいろな手段がありますが、例えば、ブレインストーミングやTRIZがあります。
私見ですが、ブレインストーミングで解決手段を発想することは難しいのではないかと考えています。それは、ブレインストーミングで解決手段の上位概念は議論できますが、下位概念までは議論できないからです。
すなわち、下位概念から上位概念はわかるが、上位概念から下位概念はわからない、という宿命があります。結局、下位概念の創出は、個人が、地道に時間をかけて探求するしかないと思います。
TRIZに関しては、本をたくさん持っており、高額なTRIZソフトを使ったこともありますが、正直なところ使いこなせていません。
したがいまして、解決手段に関しましては、発想法をどう簡便にするか、が課題となります。
2019年1月1日火曜日
課題と解決手段について(1)
年の初めには1年の目標を立てるものですが、今年は、課題と解決手段について、何かまとめておこうかと考えています。
特許的にいえば、課題と解決手段というものは、非常に重要でして、明細書に記載するのが、まさに課題と解決手段であり、また、課題が新規、解決手段が新規であれば、特許される可能性が高いです。
研究開発においても、適切な課題分析と、差別化された解決手段の創出が、よいアウトプットの条件となります。
とはいえ、「適切な課題分析」、「差別化された解決手段の創出」、と簡単に言ってしまいますが、実際に体系だてた方法論というものはありません。
とはいえ、全くないという訳ではなく、様々な人がいろいろ独自の方法論を語ってはおります。
例えば、課題分析については、特許分析、アンケートなど古くから用いられているものや、デザイン思考、デザインドリブンイノベーションなど最近話題の方法などがあります。
それらを、まとめて簡単な方法論とできないかというのが問題意識です。
下図は、試しに分類してみた図です。
「連続的」、「準連続的」、「非連続的」という分類は、「創造デザイン工学(東京大学出版会)」からもってきました。
課題というのは、よくよく考えると様々な種類があり、顕在課題(連続的)、潜在課題(準連続的)、将来の課題(非連続的)があることがわかります。また、課題は、純粋に技術的なものと、人間心理から発生するものの2つがあります。
連続的課題の分析には、特許分析やアンケート分析で足ります。
準連続的課題は非明示的ですので、特許分析やアンケートから見出すことはできません。したがって、技術や人間の行動を深堀して推測・推定する分析が必要となります。これらの推定手法としては、FMEAやデザイン思考があります。
さらに、非連続的課題は、現在の常識の延長で考えることは難しいと思われます。そうしますと、未来の技術のあるべき姿から課題を見出すバックキャスティングや、人間の感性、価値観から有り様を見出す、ブランドQFDのような手法を用いることが考えられます。
「連続的」、「準連続的」、「非連続的」となるにつれて、課題としては新規なものとなりますが、そのような課題を設定することが適切であるかどうかは別の話となります。
なぜなら「連続的」な課題は市場性がありますが、「準連続的」、「非連続的」な課題は市場性があるかどうか不明確だからです。つまり、「準連続的」、「非連続的」な課題を解決したからと言って、売れる製品になるかどうかは別の問題となります。
ただし、製品としてはインパクトがありますので、うまくゆけばイノベーティブな製品となるでしょう。
特許的にいえば、課題と解決手段というものは、非常に重要でして、明細書に記載するのが、まさに課題と解決手段であり、また、課題が新規、解決手段が新規であれば、特許される可能性が高いです。
研究開発においても、適切な課題分析と、差別化された解決手段の創出が、よいアウトプットの条件となります。
とはいえ、「適切な課題分析」、「差別化された解決手段の創出」、と簡単に言ってしまいますが、実際に体系だてた方法論というものはありません。
とはいえ、全くないという訳ではなく、様々な人がいろいろ独自の方法論を語ってはおります。
例えば、課題分析については、特許分析、アンケートなど古くから用いられているものや、デザイン思考、デザインドリブンイノベーションなど最近話題の方法などがあります。
それらを、まとめて簡単な方法論とできないかというのが問題意識です。
下図は、試しに分類してみた図です。
課題
|
内容
|
視点
|
調査方法
|
分析手法
|
連続的
|
課題が明示されている
|
技術
|
現状調査
|
不具合分析
特許分析
|
人間
|
現状調査
|
アンケート分析
|
||
準連続的
|
課題が非明示的に形成されている
|
技術
|
故障予測
|
FMEA
|
人間
|
ユーザー観察
|
デザイン思考
QFD
|
||
非連続的
|
課題が明示されず非明示的にも形成されていない
|
技術
|
技術トレンドの想定
|
バックキャスティング
|
人間
|
感性、価値観、問題意識、有り様の想定
|
ブランドQFD
DDI
|
「連続的」、「準連続的」、「非連続的」という分類は、「創造デザイン工学(東京大学出版会)」からもってきました。
課題というのは、よくよく考えると様々な種類があり、顕在課題(連続的)、潜在課題(準連続的)、将来の課題(非連続的)があることがわかります。また、課題は、純粋に技術的なものと、人間心理から発生するものの2つがあります。
連続的課題の分析には、特許分析やアンケート分析で足ります。
準連続的課題は非明示的ですので、特許分析やアンケートから見出すことはできません。したがって、技術や人間の行動を深堀して推測・推定する分析が必要となります。これらの推定手法としては、FMEAやデザイン思考があります。
さらに、非連続的課題は、現在の常識の延長で考えることは難しいと思われます。そうしますと、未来の技術のあるべき姿から課題を見出すバックキャスティングや、人間の感性、価値観から有り様を見出す、ブランドQFDのような手法を用いることが考えられます。
「連続的」、「準連続的」、「非連続的」となるにつれて、課題としては新規なものとなりますが、そのような課題を設定することが適切であるかどうかは別の話となります。
なぜなら「連続的」な課題は市場性がありますが、「準連続的」、「非連続的」な課題は市場性があるかどうか不明確だからです。つまり、「準連続的」、「非連続的」な課題を解決したからと言って、売れる製品になるかどうかは別の問題となります。
ただし、製品としてはインパクトがありますので、うまくゆけばイノベーティブな製品となるでしょう。
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